◎地域便り

 この「地域便り」では、北海道、岩手県、群馬県、宮崎県及び鹿児島県の協力を得て、地域における畜産の新しい動き、先進的な畜産経営の事例等を紹介してます。
 

四国カルスト大野ヶ原牧場での放牧活用

(愛媛県 上甲 格)

 


   愛媛県の八幡浜家畜保健衛生所管内には、 乳用牛の育成牧場として県下最大
の四国カルスト大野ヶ原牧場があり、 標高1, 000〜1, 500mの秩父古生層カル
スト台地に位置している。 放牧対象は、 生後6ヵ月以上の乳用育成牛で春から
秋の間 (平均放牧日数210日) 放牧し、 その後は舎飼いで越冬させ、 妊娠を確
認後退牧させている。 (平成6年度夏期放牧271頭、 越冬173頭) 
 
  今回、 同保健所では、 牧場の利用拡大を図り、 放牧衛生指導の一助とするた
め、 過去に放牧を経験した牛と、 未経験牛 (対照牛) の繁殖状況、 耐用年数等
の経済性について追跡調査した。 
 
  その結果、 繁殖成績については、 2産目の経験牛が、 授精回数平均2. 25回、 
再受胎日数平均117. 7日と、 いずれも対照牛に比べ0. 07回、 18. 3日良好な成
績をおさめている (表−1)。また、 耐用年数でも、 DG0. 5以上の経験牛が退
牧5年後で生存率40. 5%と、 対照牛を約24%上回っている (表−2)。 


表−1 放牧経験牛の繁殖成績(2産目)
項目 放牧経験牛 対照牛
平均受精回数 2.25回 2.32回
平均再受胎日数 117.7日 136.6日
 
表−2 放牧経験牛の耐用年数(生存率%)
項目 1年後 2年後 3年後 4年後 5年後
経験牛(平均) 60.8 63.3 45.8 21.6 18.3
うち、DG0.5以上のもの 100.0 94.5 81.1 45.9 40.5
対照牛 91.6 65.0 46.6 20.8 16.6
※DC0.5以上を放牧時の一定目標とする。
  これらの成績を左右するものとして、 放牧衛生問題 (ピロプラズマ病、 肺虫
症) 等も考えられるが、 入牧前に農家で夜間も舎外飼育するなどの馴致の有無
が大きな影響を与えている (表−3)。 ちなみに、 平成5年度の同牧場の成績は、 
DG0. 65kg、 受胎率97. 3%、 事故率1. 19%であり、 放牧衛生については、 ピ
ロプラズマ病、 肺虫症等の発症もなく好成績であった。 
 
  今後、 保健所では、 放牧利用農家に対し放牧馴致の徹底や寄生虫の駆除等の
飼養衛生管理指導を行うとともに、 さらに良好な効果が期待できるよう放牧衛
生管理の再チェックを行うこととしている。 また、 この成績等をもとに農家の
巡回指導の機会を得て、 同牧場の利用拡大に努めていきたい。 
表−3 放牧馴致の効果
調査頭数 馴致有 馴致無
120 33(27.5%) 87(72.5%)
DG0.5以上

DG0.5未満

24(27.7%)

9(27.3%)

13(14.9%)

74(85.1%)

 

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