◎地域便り

 この「地域便り」では、北海道、岩手県、群馬県、宮崎県及び鹿児島県の協力を得て、地域における畜産の新しい動き、先進的な畜産経営の事例等を紹介してます。
 

パソコン簿記で経営改善

(鳥取県 徳久 勢祥)

  鳥取県中山町は県内有数の農業地帯で、 野菜・梨や、 酪農・肉用牛の生産
が盛んである。 とりわけ肉用牛肥育経営は県内屈指で、 中山町の農業の中で
も重要な位置を占めている。 その中で、 JA肥育婦人部の皆さんは農業経営
に積極的に参画し、 御主人と共に経営を支えている。 婦人部の簿記記帳の取
り組みについて紹介したい。 

 肥育経営は非常に大きな資金が動き、 稲作等のように収穫が終わり、 出荷
すればそこで損益が確定されるわけではない。 棚卸資産の変動も常にあり、 
複式簿記の記帳なくしては経営の実態を把握することはできない。 また、 枝
肉価格の低迷や素牛価格の高騰などで経営が必ずしも順調とは言えない時期
もある。 
 
 そこで、 昭和58年に農業改良普及所の指導のもと、 婦人部員3名が複式簿
記に取り組んだ。 その後、 この3名は婦人部の先駆者として活躍し、 体験発
表や、 農業雑誌の掲載を通して複式簿記の必要性を訴え、 記帳者の輪が広が
った。 現在10名が簿記記帳に取り組んでいる。 記帳者の営農類型は次の通り
で、 皆、 地域の中核的な担い手農家である。
 
和牛肥育経営 (繁殖肥育一貫含む。 ) ………… 4名
乳牛肥育経営 (ほ育から一貫含む。 ) ………… 3名
乳肉複合経営  …………………………………… 2名
野菜の採種、 梨との複合経営 (和牛肥育) …… 1名

 肥育婦人部の皆さんは、 毎年、 部門別損益計算書や生産費計算表を作成し、 
年度末に経営検討会を実施し、 お互いの経営について遠慮のない意見を出し
合い、 経営の改善につなげている。 簿記記帳をきっかけにして経営改善に取
り組み、 優秀な成績をあげた尾古博明・満子夫妻が、 平成元年に全国農林水
産祭において天皇杯を受賞するなど、 すばらしい成果を上げている。 
 
 今年に入って、 部員から 「コンピューターを活用して経営に役立ててみた
い」 との声があり、 パソコンで簿記記帳に取り組むこととなった。 そこで、 
西伯普及センターの笠見改良普及員が開発した農業複式簿記ソフト 「ABOT 
Ver2.1」を活用し、 普及センターや職員等のパソコンを利用して、 月に2〜
3回農協に集まり記帳に取り組んでいる。 経過は順調で、 中にはパソコン簿
記にすっかり慣れ、 まだ今一つ慣れていない者の相談相手になっている部員
もいる。 「今後は簿記記帳以外にもパソコンを活用していきたい」 との声も
あがっており、 今後も肥育婦人部の活動の幅が広がっていくものと思われる。 
 
 
    

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