★調査報告


平成6年度季節別食肉消費動向調査 (消費者調査) の概要

社団法人 食品需給研究センター

佐 藤 喜美子 


 
 「季節別食肉消費動向調査」 は財団法人 日本食肉消費総合センターの委託によ
り社団法人食品需給研究センターが実施したものである。 
 
 この調査は、 消費者の食肉に対する意識及び家庭における購入状況、 購入価格
並びに嗜好性等について、 全国8地域の消費者世帯のうち2,000世帯(大都市1,100
帯、 中都市900世帯)を対象として昭和57年度から行われている。 
 
  以下は、 主として平成6年12月期の消費者調査の結果報告のなかから、 主要部
分を抜粋し、 まとめたものである。 

1 食肉の購入状況
(1) 食肉の購入世帯比率

 調査対象1週間のそれぞれの食肉の購入世帯は割合の高い順に、 「豚肉」(87.0
%)、 「牛肉」 (85.2%)、 「鶏肉」 (71.6%)、 「牛豚ひき肉」 (37.4%) となって
いる。 夏期よりは購入世帯が増える傾向にある冬期調査であるため、 「牛肉」 と
 「鶏肉」 は前回調査 (平成6年6月調査) より購入世帯が増えているものの「豚
肉」 と 「牛豚ひき肉」 は減っている。 「牛肉」、 「鶏肉」 も前年同月調査と比べる
と減っており、全般に購入世帯は減少している。 また、 食肉とは代替関係にある
「魚」をみると、購入世帯は97.9%あり、 それぞれの食肉の購入世帯より大幅に多
くなっている (表1)。 
 
 過去5年間の主な食肉と魚の購入世帯比率の推移を示した図1をみると、 ほぼ
横ばい傾向にあった 「豚肉 」は今回はやや減少しており、 概ね増加傾向で推移し
ていたのに前回減少に転じた 「牛肉」は今回盛り返している。 また、 「豚肉」と「牛
肉」の購入世帯比率はその差が年々縮小してきており、 平成5年12月に続き今回
も接近したが、 まだ逆転には至っていない。 しかしながら、 牛肉の増加傾向から
みると近い将来逆転するであろうことが予測される。 「鶏肉」は、 季節による増減
を示しながら減少傾向を続けるなかで前回は急減しており、 今回も以前の水準に
は戻っていない。 また、「魚」についてみると、 90%台で推移しており、 さらに平
成5年からは97%台と高水準で推移しているのがわかる。 

(2) 食肉の購入先

 調査対象1週間に購入した食肉の購入先は、 牛肉、 豚肉、 牛豚ひき肉、 鶏肉の
いずれも 「スーパー」に集中しており、 その集中割合は高い順に豚肉(62.9%)、 
牛豚ひき肉 (62.1%)、 鶏肉 (61.4%)、 牛肉 (59.1%)となっている (表2)。 
牛肉が最も低い割合になっているが、 その代わり牛肉は「食肉専門店」 からの購
入割合が他の食肉に比べると高くなっている。 また、 「スーパー」 に次いで 「食
肉専門店」からの購入割合が高い牛肉を除く他の食肉は、 「生協」からの購入割合
が「食肉専門店」を上回っており、 「食肉専門店」から購入する人は年々減少する傾
向がみられる。 

(3) 食肉の購入価格

 100g当たりの購入価格を価格帯別購入世帯割合でみると、 それぞれの食肉の中
心価格帯は、 牛肉は「251〜300円」 をピークとした251円から400円、 豚肉は「151
〜200円」 をピークとした101円から250円、 牛豚ひき肉は101円から200円となり、 
鶏肉は150円以下の低価格帯に購入が集中している (図2)。

 
  牛肉については、 和牛肉から輸入牛肉まであわせた購入価格のため中心価格帯
の幅が広くなっているのがわかる。 
 
  なお、 牛肉を国産と輸入に分けてみた場合、 当然ながら、 国産牛肉の中心価格
帯は輸入牛肉に比べ高くなっており、 また、 中心価格帯の幅は広く、 部位や銘柄
によりばらつきの大きい国産牛肉の価格を反映した形になっている(図3)。 


2 食肉の価格と今後の購入量についての消費者意識
(1) 食肉の価格について

 最近の食肉の価格についてどう感じているかの調査結果をみると(表3−1)、 
国産牛肉、 豚肉、 鶏肉については、 「変わらない」 と感じている人が最も多く、 
半数を超えているの対し、 輸入牛肉については 「安くなった」 と感じている人が
最も多く、 4割強となっている。 

 また、 国産牛肉を和牛肉とその他の国産牛肉に分けた場合は (表3−2)、 「変
わらない」 と感じている人の割合は和牛肉の方が高く、 「安くなった」と感じてい
る人の割合はその他の国産牛肉の方が和牛肉より高くなっている。
 
 以上のことから、 「豚肉」 と 「鶏肉」 の価格については、 消費者の大半は変化
していないと感じており、 牛肉の価格については、 消費者が和牛肉はほとんど変
わらないが、 その他の国産牛肉はいくらか安くなり、 輸入牛肉はずいぶん安くな
ったと感じている様子が読みとれる。


表3−1 最近の食肉の価格について(1)−食肉の種類別−(単位:世帯、%)
  回答者数 安くなった 変わらない 高くなった わからない N.A.

牛肉(国産)
平成6年6月
    12月

2,000
1,984
25.3
28.2
59.0
56.1
4.9
5.1
10.8
10.0
0.1
0.5
牛肉(輸入)
平成6年6月
     12月
2,000
1,984
45.4
44.0
25.2
25.5
0.4
0.6
27.2
27.8
1.9
2.2
豚肉
平成6年6月
     12月
2,000
1,984
15.2
16.3
74.5
70.9
3.2
3.9
6.7
8.4
0.5
0.6
鶏肉
平成6年6月
     12月
2,000
1.984
20.3
19.8
66.8
65.9
1.9
3.1
10.0
10.2
1.1
0.9
表3−2 最近の食肉の価格について(2) 
    −国産牛肉を和牛肉とその他の国産牛肉に分けた場合−(単位:世帯、%)
  回答者数 安くなった 変わらない 高くなった わからない N.A.
和牛肉
平成6年6月
    12月
2,000
1,984
14.8
17.6
57.9
57.6
9.3
8.6
18.0
16.1
0.1
0.2

その他の国産牛肉
平成6年6月
     12月

2,000
1,984
27.1
30.3
48.7
47.6
2.7
2.1
21.3
19.8
0.3
0.2
(2) 購入量を増やしたい食肉

 牛肉の価格が下がった場合のそれぞれの食肉の購入量についての意向は、 国
産牛肉、 輸入牛肉、 豚肉、 鶏肉のいずれも「変わらない」が最も多かったが、 国
産牛肉は 「かなり増やしたい」 と「やや増やしたい」をあわせると「変わらない」
よりも多くなり、 国産牛肉に対する潜在的需要の高さを示している(表4)。 ま
た、 豚肉と鶏肉は 「変わらない」の回答割合が8割を超えており、 大部分の消
費家庭では、 牛肉の価格とは関係なくこれらの食肉が購入されていることがう
かがえる。

表4 牛肉の価格が下がった場合の食肉の購入量(単位:世帯、%)
  回答者数 かなり増やしたい やや増やしたい 変わらない 減らしたい N.A.
牛肉(国産)
平成6年6月
     12月
2,000
1,984
10.1
11.5
43.7
42.3
45.3
45.2
1.0
0.8
0.1
0.2
牛肉(輸入)
平成6年6月
     12月
2,000
1,984
1.4
1.5
11.8
10.0
65.5
64.5
14.1
17.2
7.4
6.8
豚肉
平成6年6月
     12月
2,000
1,984
1.9
2.0
12.5
13.7
82.9
80.9
2.8
3.3
0.1
0.2
鶏肉
平成6年6月
     12月
2,000
1,984
2.0
2.5
11.4
11.4
84.3
83.3
2.1
2.5
0.3
0.2
 
3 牛肉に対する消費者意識
(1) 国産牛肉と輸入牛肉に対する嗜好

 国産牛肉と輸入牛肉に対する嗜好調査の結果をみると(図4)、「国産牛肉」を好
む人81. 4%に対し、 「輸入牛肉」を好む人はわずか4.0%となっており、 嗜好の
うえではまだまだ国産牛肉一辺倒となっている。 国産牛肉を好む理由をみると、
「おいしいから」、 「品質が良いから」、 「家族が好きだから」 の順になっており、 
また、 後述の『和牛肉、 その他の国産牛肉及び輸入牛肉に対するイメージ』のと
ころでもみられるように、 輸入牛肉と比較した国産牛肉の味と品質に対する高い
評価が好みに反映している。 これに対し、 輸入牛肉については、 好む理由が「価
格が安いから」が飛び抜けて多くなっており、 味や品質よりも経済性を優先させ
たものになっている。 

(2) 赤身肉とシモフリ肉

  赤身肉とシモフリ肉に対する嗜好については、 「赤身肉」 と回答した人が41.0
%、 「シモフリ肉」 と回答した人が31.3%となり、 それほど差はないが、 今後の
購入意向については、 「赤身肉」を多く購入したいと回答したが37.1%であるのに
対し、 「シモフリ肉」 を多く購入したいと回答した人は21.7%となり、 「赤身肉」
を多く購入したい意向の人が大幅に多くなっている。 また、 赤身肉とシモフリ肉
、 それぞれを好む理由をみると、 赤身肉は 「健康を考えて」が最も多く、 次いで
 「家族が好きだから」 となり、 シモフリ肉は 「おいしいから」が最も多く、 次い
で 「家族が好きだから」 となっている (図5)。 これらのことから、 赤身肉を好
むのは、 何より健康志向ゆえであり、 今後はさらにこの傾向が強まるものと推測
される。 

(3) 牛肉の表示についての意向

 『部位別の表示』、 『用途の表示』、 『輸入牛肉であることの表示』、『国産牛
肉を和牛と乳用牛に区別した表示』、『国産牛肉の産地銘柄表示』、『輸入牛肉の
国別表示』の6項目のそれぞれについて、 表示すべきかどうかたずねたところ、 
「表示すべき」の回答割合が最も高かったのは『輸入牛肉であることの表示』であ
り、 次いで  『部位別の表示』、『輸入牛肉の国別表示』、 国産牛肉を和牛と乳
用牛に区別した表示』、『国産牛肉の産地銘柄表示』、『用途の表示』の順になっ
ている。 これをみると、 輸入牛肉に対する表示要望が強くなっているが、 これは
主として輸入牛肉の安全性に対する不安感に起因すると思われる。 また、 『部位
別の表示』に対する表示要望は高いのに、 用途の表示』に対する要望がそれほど
高くないのは、 部位がわかれば、 用途については消費者自身が決めることができ
る、 あるいは考えるからということであろうと思われる。 

(4) 和牛肉、 その他の国産牛肉及び輸入牛肉に対するイメージ

 表5に示してある和牛肉、 その他の国産牛肉及び輸入牛肉に対するそれぞれの
イメージをまとめると、 和牛肉は、 「味も品質もよく、 安全性についても心配な
いが価格が高い」 となり、 その他の国産牛肉は、 「味も価格もまあまあだが、 国
産だから安全性について心配ない」 という感じになる。 また、 輸入牛肉は、 「何
といっても安いし味もまあまあだが、 安全性に不安がある」 になり、 輸入牛肉が
消費家庭の食卓に深く浸透してきていると思われる今日でも、 輸入牛肉の安全性
に対する消費者の不安感は依然として払拭されていないといえる。 

  4 輸入牛肉の購入状況
(1) 輸入牛肉購入の有無
 
  調査対象1カ月間の輸入牛肉購入の有無については、 「買った」 世帯が39.8%、 
「買わなかった」 世帯が60.0%となり、 まだ非購入世帯が購入世帯を上回ってい
るが、 輸入自由化が具体化する前の10%台に比べると飛躍的に増えており、 消費
者の間に輸入牛肉が定着してきたことを示している。 しかしながら、 これまで徐
々に増加していた購入世帯は、 輸入自由化実施4年目の今回、 わずかながら減少
しており、 要因としては、 輸入自由化時のような輸入牛肉消費に対する消費者の
強い関心が薄れたことが考えられる (図6)。

 購入世帯比率の推移をみると、 昭和63年に購入世帯が飛躍的に増大しているが、 
この年は輸入自由化が決定した年であり、 平成3年と5年にも購入世帯が増大し
ているが、 平成3年は自由化が実施された年、 平成5年は関税率が50%になった
年である。

(2) 輸入牛肉の購入先
 
  輸入牛肉の購入先をみると、 「スーパー」が77.0%と圧倒的に多く、 次いで「生
協等」 の22.3%となり、 「食肉専門店」 も 「デパート」 も10%未満にとどまって
いる。 前述したように食肉の購入先は 「スーパー」 に集中する傾向にあるが、 輸
入牛肉はさらにその傾向が強くなっている。
 

(3) 輸入牛肉の原産国
 
  購入した輸入牛肉の原産国は「オーストラリア」が60.0%、 「アメリカ」が37.5%
となり、 だいたい3対2の割合でオーストラリア産が多くなっているが、 「わから
ない」 も20.9%あり、 約2割の人はどこの国のものか気にしないで購入している
と思われる。 

 
  5 銘柄等表示豚肉及び輸入豚肉の購入状況
(1) 銘柄等表示豚肉の購入状況

 これまで銘柄等が表示された豚肉をみたことがあるかどうかについては、 58.4
%と半数以上の人が「ある」 と回答しており、 これまで購入したことがあるかどう
かについては、 38.7%の人(表示をみたことが 「ある」 と回答した人の66.3%)が
 「購入したことがある」 と答えている。
 
 銘柄等の表示名については、 「鹿児島黒豚」が32.3%で最も多くなっており、 次
いで 「その他の黒豚」 (19.1%)、 「その他 (産地名等を冠したもの等)」 (7.2%) 
の順になっている。 「不明」 も27.7%あり、 明確な意識なしに購入したと思われる
人が3割ほどいた。 なお、 「SPF豚」 の表示については13.7%の回答があった。 
 
  銘柄等表示豚肉の購入先をみると、 「スーパー」が57. 2%で最も多く、 次いで 
「デパート」 (23.3%)、 「食肉専門店」 (18.6%)、 「生協」(17.2%)、 「その他」 
(3.1%) の順になっており、 「デパート」 からの購入が「スーパー」に次いで多く
なっているのが特徴的である。
 
 また、 銘柄等表示豚肉を購入した理由をみると、 「おいしいから」が40.0%で最
も多く、 次いで 「普通の豚肉より安全だと思うから」 (37.9%)となっており、 味
と安全性に重点をおいた購入動機となっている。 これらに続く理由は 「品質が良
いから」 (34.9%)、 「以前から購入したいと思っていたから」(15.6%)「見た目が
よいから」 (3.8%) 等となっている。 
 
 銘柄等表示豚肉の味と品質についての感想は、 67.4%と半数以上が 「普通の豚
肉よりよい」 と答えており、 「普通の豚肉より劣る」 と回答した人はわずか0.3%
となっている。 また、 価格については、 「味、 品質の割に安い」と感じた人が71.0
%を占め、 「味、 品質の割に高い」は22.4%となっている。 このように、 銘柄等表
示豚肉に対する消費者の関心は低くなく、 味と品質に対する評価や、 安全性に対
する評価、 価格に対する評価は高いといえるのに、 今後の購入意向については、 
「変わらない」と答えた人が60.9%で最も多く、 次いで 「増やしたい」(22.4%)と
なっており、 銘柄等表示豚肉の今後の消費拡大に向けては、 消費者に対する積極
的な働きかけが必要かと思われる。 

(2) 輸入豚肉の購入状況

  平成6年6月に調査した、 調査対象1ヵ月間の輸入豚肉購入の有無については、 
「買った」 と答えた世帯が10.8%、 「買わなかった」 と答えた世帯が89.0%となっ
ており、 輸入豚肉の購入世帯はまだ1割にとどまっている。  
 
 輸入豚肉の購入先をみると、 「スーパー」が80. 0%で最も多く、 次いで 「生協
等」 (17. 7%)、 「食肉専門店」 (13.0%)、 「デパート」(8.4%) となり、 やはり
、 購入先は 「スーパー」 に集中している。
 
 また、 輸入豚肉の原産国については、 「アメリカ」 が48. 4%で最も多く、 次い
で 「デンマーク」 (3.7%)、 「カナダ」 (2.8%)、 「台湾」 (1.9%) の順になって
おり、 何によって輸入豚肉であることを識別したかというと、 「パックラベルの表
示」 が44.7%で最も多く、 次いで 「販売コーナーの表示」 (31.6%)、 「プライス
カードの表示」 (20.5%) 等となっている。
 
 以上みてきたように、 輸入豚肉は銘柄等表示豚肉ほどには、 消費家庭に浸透し
ていないことがわかる。 
 
 

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