◎地域便り

 この「地域便り」では、北海道、岩手県、群馬県、宮崎県及び鹿児島県の協力を得て、地域における畜産の新しい動き、先進的な畜産経営の事例等を紹介してます。
 

ET活用による 「乳肉一体経営」 の研究

(岩手県 菊地 直美)

  岩手県遠野市は北上山地中央部の盆地にあり、 市の総面積の77%が傾斜地
・山林地帯で占められている。 この地方は稲作と畜産が農業の二本柱である
が、 平坦地が少ない地形条件から規模拡大に限界があり、 中山間地の新たな
畜産経営の方向について様々な角度から検討されている。 
 
  その中で、 岩手県立遠野緑峰高校の農業クラブ畜産専門分会 (11名)では、 
中山間地の新たな畜産経営の方向を探ろうと、 ETを活用して酪農と和牛繁
殖経営を一つにした 「乳肉一体経営」 の研究に平成5年から取り組んでいる。 
 
  これまで延べ13頭の乳牛に和牛の胚を移植し、 7頭が受胎し、 和子牛6頭
が既に生まれている。 そこで、 「乳肉一体経営」 の効果について試算してみ
た。 現在飼養している搾乳牛14頭と繁殖雌和牛6頭の前提条件で、 乳牛7頭
にはETで和牛を生産させ、 残り7頭には優良後継牛生産を行わせ、 和牛に
はドナーの役割を交互に行わせる。 すると規模拡大をしなくても和子牛を有
利に販売できるため、 粗生産額が約20%アップすることがわかった。
 
 ETは、 多くの農業団体・試験場で様々な研究が行われているが、 高校教
育現場では理論及び基礎的な実験段階までのところが多く、 ETを経営に取
り入れた実践例は少ないのが現状である。 そのような中で、 次代の地域農業
を担う高校生に、 ETの活用方法を示した実践教育は極めて有益である。 
 
  今後は、 さらに分割卵移植や性判別卵移植を取り入れた高位生産性の乳肉
一体経営の研究を行うこととしており、 畜産教育の充実を図る上で大きな期
待が寄せられている。 
   
    

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