◎地域便り

 この「地域便り」では、北海道、岩手県、群馬県、宮崎県及び鹿児島県の協力を得て、地域における畜産の新しい動き、先進的な畜産経営の事例等を紹介してます。
 

牛の繁殖障害をお灸で治療

(愛知県 手嶋 康博)

  従来、 牛の繁殖障害の治療には、 主としてホルモン療法が行われ、 効果を
あげているが、 獣医師でなければできず、 また、 治療代も安いとはいえない。
 
  そこで最近、 薬物残留、 副作用もなく安全で、 安価で、 一度教われば誰で
もできる 「灸」 が全国各地で注目されている。 
 
  愛知県の加茂家畜保健衛生所管内では、 薬物による治療に反応しない繁殖
障害牛 (無発情) に対し、 平成6年11月から平成7年4月末までの間に、 7
戸12頭に灸を実施した。 その結果、 9頭に発情回帰 (平均発情回帰日数10.4
日、 最も早い牛で2日) がみられ人工授精が実施できた。 授精後、 日が浅い
ため、 受胎確認できた牛は1頭と少ないが、 今後の成果を期待している。「灸
」 の方法は、 牛を鼻保定後、 市販の温灸もぐさ又は自家製もぐさ (6〜8月
の成長したヨモギを1週間ぐらい天火乾燥し茎を除き、 葉を手でもんでつく
る。) を1.5〜2.0kgとり、 親指大に丸め、 牛の腰背部の9〜10か所の穴位 (
ツボ) を毛刈りし、 脱落防止のため味噌をぬり固定し着火する。 

  振り落とされたり、 火災の予防のため、 尻尾は必ず飛節等に縛る。 また、 
灸の穴位は、 必ずしも正確な部位でなくても、 おおよそのところでよい。 
 
  灸の治療効果に加え、 農家自らが行うことにより、 普段以上に興味をもっ
て発情発見に努力するという相乗効果もある。 まだ、 始めて間もないが、 治
療費の低減、 受胎率の向上という点から普及に努めているところである。 
 

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