◎地域便り

 この「地域便り」では、北海道、岩手県、群馬県、宮崎県及び鹿児島県の協力を得て、地域における畜産の新しい動き、先進的な畜産経営の事例等を紹介してます。
 

沖永良部島でもETが本格的にスタート

(鹿児島県 露重 美義)

  今や肉用牛のETは、 各地で実用化され、 珍しいことではないが、 遠隔な
離島での出来事となると話は別である。 
 
 鹿児島市から南下すること545km、 鹿児島県大島郡和わ泊どまり町と知ち
名な町からなる沖永良部島は、 周囲56km、 総面積9,360q2とそれほど大き
な島ではないが、 耕地率は47%と高く、 平坦な農業の島である。 別名《花の
島》とも言われ、 ユリ、 フリージアの球根生産や切り花生産が盛んである。 
また、 年平均気温22℃という温暖な気候を生かし、 豊富な草資源と、 冬期は
サトウキビの梢頭部を粗飼料として活用し、 880戸の農家で4,100頭の繁殖雌
牛が飼養されている。 
 
 ETは、 沖永良部島農業共済組合を中心に、 家畜保健衛生所、 農業改良普
及所、 地元授精師会など関係機関が協力し、 平成5年5月から開始された。 
平成6年2月に2頭の受胎が確認され、 9月、 10月には相次いで子牛が誕生
した。 来る7月の子牛せり市に出荷される予定であるが、 発育も順調で各方
面から注目を集めている。 
 
 この成功を機に、 町や農協が資金的支援を行い、 生産者組織も加えた 「沖
永良部受精卵移植技術推進協議会」 がこの4月に発足した。 今後、 凍結卵移
植のための機器整備や移植師の養成にも努め、 島ぐるみで、 ET技術を活用
した優秀な繁殖雌牛の確保を図ることとしている。 子牛価格の低迷が続くな
ど、 肉用牛をめぐる情勢は一層厳しさが増すことが予想され、 今後のETの
普及に期待が寄せられている。 
 
  
    

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