★ 投稿


飲用牛乳消費拡大緊急特別対策の実施について       

 (国産飲用牛乳消費拡大推進協議会  
  社団法人 中央酪農会議  
  消費拡大特別対策室課長代理        内 橋 政 敏) 


  
1 は じ め に

 平成6年度飲用乳価交渉において、 減産計画の効果と猛暑による近年にない消
費の高い伸びを背景とした夏場の生乳需給の強い逼迫のなかで、 「乳価上乗せや
奨励金」 問題が、 重要なテーマとなったが、 具体的な合意に至らなかった。  

 しかし、 UR後の国内市場の変化に対応した長期的な観点に立った対策の実施
が、 生産者・乳業者共通の課題であるという認識が双方に醸成されつつあったこ
とから、 関係者の強い後押しもあり、 国産飲用牛乳の消費拡大対策を共同の財源
供出により実施することとなった。 
 
  こうした状況のなかで、 農水省の指導等も受けながら、 6年12月5日に飲用牛
乳消費拡大緊急特別対策事業の準備委員会が乳業者と生産者団体によって開催さ
れ、 平成6年度の飲用乳価交渉の諸経緯を踏まえつつ、 中長期的な観点に立った
酪農乳業界の共通する活動として当面2年間にわたる生産者・乳業者の財源拠出
を基本に 「飲用牛乳消費拡大緊急特別対策事業」 を実施することとなった。 
 
  なお、 準備委員会では、 趣旨、 期間、 基本的な展開方向、 推進体制及び事務局
並びに財源措置等について確認された。
 
2 協議会設立に至る経緯

 こうした経緯を踏まえて、 生産者側における組織決定の手続きが執られ、 乳業
者においても大手乳業者の他、 農協プラント並びに中小乳業者において関係団体
が一体となって取り組むことについて理事会等を通して検討の後、 傘下会員宛周
知徹底された。 
 
  その後、 具体的な実行並びに運営の方法について、 (社)中央酪農会議 (以下
 「中酪」 ) 及び関係乳業者との間で取引実態を踏まえつつ、 協議・検討を進める
とともに、 農林水産省の指導を受けながら、 7年3月13日に推進委員会を開催し
たのである。 
 
  推進委員会では、 まず本事業の推進体制について中酪とは独立した協議会を設
置して進めることが事業運営上適切であることから、 「国産飲用牛乳消費拡大推
進協議会」 の形で事業を推進することを決定し、 その設置要領を定めるとともに
、 役員を選任した。 
 
  その後、 「国産飲用牛乳消費拡大推進協議会」 (以下 「協議会」 )の第1回理事
会が開催され、 飲用消費拡大緊急特別対策事業実施計画・収支予算並びに飲用牛
乳消費拡大緊急特別対策事業拠出金要領等について協議決定した。 

 

3 本特別対策事業の概要

 第1回理事会において承認された本特別対策の概要は次のとおりとなっている。 

@ 趣 旨
 
 乳製品輸入自由化の影響下において、 今後国産生乳市場を維持拡大していくた
  めには、 国内での自給が期待される飲用牛乳の消費を、 引き続き拡大すること
  が極めて重要な課題といえる。 

 さらに、 飲用牛乳の消費が近年にない高い伸びを示している時期に、 一層の需
  要拡大を図る事業を、 迅速、 かつ、 緊急に講じることが効果的であるといえる。 
 
  以上のことから、 中長期的な観点にたった酪農乳業界の共通する活動として、 
  生産者・乳業者の拠出金を財源に、 当面2年間実施するものである。 

A 事業内容
 
 本事業の成立の経過等も踏まえ、 次のような基本的位置づけとする。 

  ○商品の 「売り」 に直結する短期即効型施策と国産飲用牛乳の一層の消費定着
  を図る長期深耕型施策を有機的に組み合わせて実施する。 

  ○開放市場下における国産飲用牛乳の新たな総合的市場戦略を生乳生産者と乳
  業者が同じ土俵で共に開発・構築し展開する。 

 ○短期間に大規模な資金を集中して投下できる特徴を活かして実施する。 
  
 ○団体や乳業者による個別活動と異なり、 社会的な支援や注目を受けやすいと
  いう特徴を十分に活かして実施する。 

B 主要な事業項目

 ○多くの消費者に幅広く情報を伝える広告事業
  TV広告 (CM・番組提供)、 雑誌広告、 新聞広告

 ○社会的な話題づくりによって世論を創出するための広報事業
  パブリシティ及びイベント・プロモーションなどの話題づくりとその推進

 ○広告事業と広報事業を確実かつ効果的に促進するための情報開発等の基礎
  事業

 情報づくり、 都市型情報発信拠点の整備等への支援、 調査研究・提案、 シン
 ボルづくりなど

C 本事業の実施期間
 
 当面、 平成7年1月より平成9年3月までとする。 

D 本事業の財源

   本事業は、 原則として、 生乳生産者と乳業者により平等に拠出された資金
 50億円を財源とする。 (なお、 農水省は、7年3月末に平成7年度指定助成事
 業「国産牛乳消費拡大緊急特別対策事業」 として7億円 (1/3補助) を措置し
 ている。) 

E 役員体制

   協議会会長には、 太田康二(財)日本食肉消費総合センター理事長、 副会
 長には、 片山純男酪農乳業懇談会乳業者側座長 (雪印乳業(株)代表取締役
 社長)及び市橋潔酪農乳業懇談会生産者側座長 (徳島県酪連会長理事)が就任
 した。 

F 推進体制
  
  本事業の実施主体である協議会の理事会において基本方向並びに事業実施
 計画・収支予算等重要な事項を決定する。 また、 実施に当たってその事務を
 中酪に委託する。 

  また、 医療関係者、 教育関係者、 消費関係者等の学識経験者及び生産者代
 表・乳業者代表並びに農業や食糧に関心のある著名な知性派タレント等から
 なる 「日本の牛乳委員会」 を設置し、 より客観的な立場から一般消費者に訴
 求する窓口として位置づける。 


4 飲用牛乳需要期対応緊急プレミアムキャンペーンの実施について 

  昨年夏季の猛暑等を契機として近年にない高い消費の伸びを示してきた飲
 用牛乳の消費は、 阪神大震災や急激な円高等による景気の停滞並びに社会的
 な不安の広がりを背景とした個人消費の冷え込みにより、 停滞の兆しを見せ
 ており、 協議会として、 こうした市場の変化に対応した緊急的な対応の実施
 が重要な課題となっている。 
  
  一方、 季節的な需要変動を特徴とする飲用牛乳の消費拡大を図っていくた
 めには、 需要期にはさらに消費の後押しをする事業の展開、 不需要期には消
 費の掘り起こしを図る事業展開といったような、 きめの細かい対応が必要で
 あり、 こうしたことから、 本特別対策の第1段として今年度は次のような需
 要期対応型の緊急プレミアムキャンペーンを実施することとなった。 

@ 主要なターゲットと訴求コンセプト

  飲用牛乳の需要期に対応して、 この時期の旺盛な消費を後押しし、 需要期
 の消費水準を今一歩高い水準に押し上げるとともに、 その後の消費の伸びを
 促すことを主眼として展開する。 
   
  こうしたことから、 飲用牛乳購入の主役であり、 家族の健康管理という点
 で、 飲用牛乳市場のオピニオンリーダーである主婦をターゲットとすること
 が適当である。 
 
  この場合の主婦に対する訴求コンセプトは、 日本人の栄養問題の中心的で
 共通の課題である、 カルシウム不足を中心に、 次の点を強調することとする。 

 ○ 家族の健康と牛乳

  健康管理者としての主婦に対して、 家族の健康を確保するためには、 最も
 効率的で経済的なカルシウム補給源かつ完全栄養食品としての牛乳を家族に
 より多く摂取させることが重要である。
 
 ○ 骨粗しょう症の予防と牛乳
  
  世界的に深刻化している閉経後の女性の骨粗しょう症の予防として、 牛乳
 の摂取が、 主婦にとって極めて有効であること。
 
 ○ 牛乳と美容

  特に若い世代の主婦が密かに関心を寄せる 「ダイエット」 が、 骨密度の低
 下につながる危険性があることから、「牛乳は太る」 という牛乳のネガティブ
  イメージは誤りであり、 「ヘルシーなダイエット」 のためには、 牛乳の摂取
 が有効であること。 

A キャンペーンの期間及び地区

  7月から8月までとし、 大都市を重点として全国で実施する。
 
B キャンペーンの内容 (クローズド・オープンのダブル懸賞企画) 
  主婦の消費特性 (経済的なメリットがあれば多く買う) と量販店等小売り
 業態への配慮 (売りにつなげれば協力する) を踏まえ、 牛乳紙パックの一括
 表示部分及びビン牛乳のふたを応募券とし、 抽選で商品をプレゼントするク
 ローズド懸賞と、 クイズに応募してもらい、 抽選で豪華な賞品をプレゼント
 するオープン懸賞を設定する。 

C 媒体等告知の方針
  新聞紙上で応募要領を告知し、 連動した形でテレビCMを流し、 主婦を対
 象としたクラスマガジン (読者層別雑誌) においても詳しく訴求する。 


5 お わ り に

  飲用牛乳市場の拡大を目指した酪農乳業界の活動は、 乳業者自らによるそ
 れぞれの商品販売を通した各種活動、 (社)全国牛乳普及協会による牛乳の
 知識普及啓蒙活動、 生乳生産者による全国段階での消費者啓蒙活動や地域段
 階での地域産品訴求や消費者交流活動など、 多様なマーケティング活動が展
 開されている。 
  
  このため、 本特別対策事業が効果的に機能するためには、 その特質を十分
 に発揮しつつ、 それぞれの活動を支援し、 相互に調整・連携・作用して、 一
 層の相乗効果をもたらすよう展開することが必要であると考える。 
  
  今後、 今までの延長線上にない、 新しい 「国産牛乳」 の共通感覚・イメー
 ジを創造する契機として、 本事業を展開するものである。 

  

元のページに戻る