◎地域便り

 この「地域便り」では、北海道、岩手県、群馬県、宮崎県及び鹿児島県の協力を得て、地域における畜産の新しい動き、先進的な畜産経営の事例等を紹介してます。
 

乳牛と和牛の "日本一" を目指して

(鳥取県 福田 孝彦)

  鳥取市の奥座敷・吉岡温泉にほど近い田中牧場は、 乳脂量世界記録を樹立
するなど、 酪農界では既にその名を知られている。 同牧場では平成3年3月
10頭の但馬牛の導入から和牛生産を開始し、 現在は乳牛と和牛の複合経営が
行われている。
 
 酪農では高能力牛3頭を飼養し、 平成4年以来3年連続で検定成績優秀群
となった。 日光浴と運動に気を配り、 年3回の削蹄、 夏場の牛体洗浄など入
念な飼養管理によりその優秀な牛群を維持している。 昭和63年4月に乳脂量
世界記録を達成し、 ギネスブックにも掲載された 「ロイブルック・ハイアー
・エレン号」 は現在も健在で、 生涯乳脂量を更新中。 さらに生涯乳量の日本
記録にも迫っている。 

 牛肉の輸入が自由化された平成3年に、 但馬牛であれば国際競争に勝てる
見込みがあると考えていた牧場主の田中泰彦氏 (55才) は、 但馬牛の繁殖雌
牛14頭を導入した。 当時、 和牛に関する知識は全くなく、 どの牛も同じに見
えたという。 しかし、 そこは乳牛で培ってきたセンスと熱心な研修で、 和牛
を見る目を養うなどの努力をした。
 
 但馬の純系に全国でも実績のある種雄牛の種を付ければ有利に売れるであ
ろうと考えていた田中氏だったが、 当時は売り方も分からず苦労したと語る。 
 
  平成7年8月現在、 乳牛飼養頭数は成牛27頭、 和牛は成牛30頭と和牛の飼
養頭数が乳牛を上回り、 和牛への力の入れ方が伺える。 
 
  田中牧場で生産された和牛の雌子牛には全国から注文が殺到しており、 注
文に応じきれない状況だという。 また、 牧場への視察者もあとを絶たない。 
 
  田中氏は 「将来、 私の牧場から出た牛たちが全国各地で活躍することが夢
です。」 と語っている。 

 チャレンジ精神旺盛で経営努力抜群の田中氏の今後の活躍と発展を見守り
たい。 

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