◎地域便り

 この「地域便り」では、北海道、岩手県、群馬県、宮崎県及び鹿児島県の協力を得て、地域における畜産の新しい動き、先進的な畜産経営の事例等を紹介してます。
 

法人組織で、 ゆとりと充実の大規模肉用牛一貫経営   

(鹿児島県 山下 公之)

  鹿児島県串木野市に大規模肉用牛一貫経営に取り組む法人組織がある。 名称
は 「寺師農事組合法人」 (代表理事 寺師和男氏52歳) で、 親族6家族 (構成
員6名、 世帯従事者5名、 雇用者6名) で構成、 繁殖雌牛460頭、 肥育牛900頭
を飼養し、 ほかに1.5haの水田と飼料畑15ha、 果樹園2.9haを所有している。
 
 法人設立当初 (昭和50年) は、 ブロイラーと養豚を中心とした複合経営であ
ったが、 設立と同時に肉用牛繁殖経営を開始し、 各種補助事業や制度資金を活
用し段階的に繁殖雌牛頭数を拡大、 昭和58年から経営内一貫経営に移行し、 現
在に至っている。 肉用牛部門の拡大に伴いブロイラーと養豚部門は経営中止し
ている。 

 繁殖雌牛は1,500m2の開放牛舎で群管理され、 連動スタンチョンを活用した
個体管理を行い、 県内でもいち早く繁殖雌牛の除角に取り組み、 全ての繁殖雌
牛が除角されている。 肥育牛の管理は、 肥育前期から中期まではパドックでの
群飼育を行い、 仕上期は去勢牛は2頭ずつの管理、 雌牛はつなぎ方式により管
理している。 また、 血液検査を子牛段階から3〜4か月おきに実施し、 ビタミ
ンAの血中含有量を定期的に測定している。 
 
  平成6年度にパソコンを導入し、 これまでに蓄積された肥育データを入力す
るとともに、 そのデータの分析により母牛の改良や飼養管理の改善に役立てて
いる。
 
 運営面では、 月1回の理事会において活動計画の検討を行い、 組合員の意志
を統一している。 また、 それぞれの担当部門が異なり作業が分業化されている
ため、 昼食時間や夜の懇親の場を設け、 定期的な意見交換の実施により円滑な
人間関係を保っている。 

 報酬については、 組合員は月給制 (ボーナスあり) で、 雇用者に対してはパ
ート制がとられている。 また休日制の導入や、 女性については、 毎年国内旅行
と海外旅行の交互の実施など就業条件も整備されている。 
 
  大規模肉用牛経営として県内肉用牛農家の先導的な役割を果たし、 県内はも
とより県外からの視察者の受入れや、 毎年2〜3名の研修生の受入れなど地域
社会へも貢献しており、 まさにモデルとなる経営といえよう。 
 

    

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