農林水産省から 

平成9年度畜産物行政価格等の決定について



1 指定食肉の安定価格、 肉用子牛の保証基準価格等



農林水産省畜産局食肉鶏卵課
価格第3係長 畑中 明

 農林水産省は、「畜産物の価格安定等に関する法律」 及び 「肉用子牛生産安定等
特別措置法」 に基づき平成9年度指定食肉の安定価格並びに肉用子牛の保証基準
価格及び合理化目標価格について、 別表のとおり決定し3月31日付けで告示した。 
以下その内容等について紹介する。 

● 指定食肉の安定価格

 (1) 食肉の価格安定制度の仕組み及び最近の情勢

(1) 食肉の価格安定制度の仕組み

 食肉 (牛肉及び豚肉) の価格安定制度は、 指定食肉の価格の安定を通じて、 生
産者の経営安定を確保しつつ、 消費者への食肉の安定供給を図ることを目的とし
て設けられている。 

 本制度では、 枝肉卸売価格について、 農林水産省令により豚肉は 「上」 以上の
規格、 牛肉については去勢牛肉の 「B−2・B−3」 規格のものを定め、 それぞれ
の規格に関して安定上位価格と安定基準価格を設け、 その価格安定帯の間に価格
を安定させることによって食肉全体の価格安定を図ることとしている。 

(2) 牛肉の最近の情勢

 需要については、 近年安定的に推移していたが、 8年度においては、 英国での
BSE (狂牛病) 発生や病原性大腸菌O−157問題等の影響もあり、 全消費量の概ね
5割を占める家計消費が前年をかなり下回って推移していること等から、 全体で
は前年をかなり下回る水準となっている。 

 生産については、 自由化後も微増傾向で推移していたが7年度に減少に転じ、 
8年度は前年同期をかなり下回る水準で推移した。 品種別には、 肉専用種は元年
以降増加傾向となっていたが、 7年度以降は前年同期を下回って推移した。 乳用
種は、 5年度以降減少傾向となっている。 国内生産に占める比率は、 肉専用種が
次第にシェアを高め4割強となっている。 

 枝肉価格については、 省令規格である去勢牛肉 「B−2・B−3」 は、 自由化後
低下したが、 5年度以降概ね安定的に推移し、 8年度は堅調に推移した。 品種別
に見ると、 去勢和牛、 乳用肥育去勢牛とも自由化前後から低下傾向となったが、 
最近は去勢和牛については、 高級規格は低下率が鈍化ないし下げ止まり、 中級規
格は強含みで推移しており、 乳用肥育去勢牛については、 国産牛肉への需要の回
帰等もあって7年秋以降堅調に推移している。 

(3) 豚肉の最近の情勢

 需要については、 近年横ばいとなっており、 8年度は、 全消費量の約4割を占
める家計消費、 約3割を占める加工用需要が安定的に推移しているため、 全体で
は前年同期をわずかに上回って推移した。 

 生産については、 2年度以降、 担い手不足、 環境問題等から減少傾向で推移し
ている。 

 枝肉卸売価格については、 7年度は秋口から低下したが、 その後関税の緊急措
置の影響もあって堅調に推移した。 8年度に入り、 前年同期をかなり上回って推
移したが、 秋口以降は概ね安定価格帯内で比較的堅調に推移してきた。 3月下旬
には、 台湾での口蹄疫発生に伴う輸入禁止措置の影響で、 前年度を大幅に上回っ
た。 

 (2) 安定価格の算定

 食肉の安定価格については、 その生産条件及び需給事情その他の経済事情を考
慮し、 食肉の再生産を確保することを旨とし、 例年、 過去一定期間の基準期間 
(豚肉:過去5年間、 牛肉:過去7年間) における豚肉及び牛肉の農家販売価格
を基本に、 価格決定年度に見込まれる生産コストの変化率を織り込む需給実勢方
式により算定を行っている。 

 豚肉については、(1)基準期間中の肉豚の農家販売価格が低下していること、(2)
コストの変化率では、 経営規模の拡大により生産性が向上し、 労働費の減少がみ
られることなどが引き下げ要素となった。 引き上げ要素として本年4月からの消
費税率の引き上げがあるものの、 総合すると引き下げ要素が大きいことから、 安
定基準価格、 安定上位価格とも5円の引き下げで諮問した。 

 牛肉については、(1)基準期間の農家販売価格が和牛去勢で20円/kg、 乳用種で
40円/kg下げ、 (2)生産性向上によるコストの低下が見込まれることなどが引き
下げ要素となった。 豚肉と同様に消費税率の引き上げが上げ要素としてあるもの
の、 総合すると引き下げ要素が大きいことから安定基準価格で10円、 安定上位価
格で20円の引き下げで諮問した。 

● 肉用子牛の保証基準価格及び合理化目標価格

 (1) 保証基準価格

 肉用子牛の保証基準価格は、 肉用子牛の再生産を図ることを旨とし、 その生産
条件及び需給事情その他の経済事情を考慮して毎年定めている。 

 9年度の価格についても昨年同様、 子牛価格に自由化の影響が出ていない過去
の一定期間を基準期間 (具体的には、 2年度算定に用いた7年間) として、 この
間の農家販売価格を基本に、 価格決定年度に見込まれる肉用子牛生産コストの変
化率を織り込む需給実勢方式により算定したところである。 
 
(2) 合理化目標価格

 合理化目標価格は、 肥育経営にとっては牛肉の輸入数量制限が撤廃された段階
で、 輸入牛肉と対抗し得る価格で生産を行うための子牛価格であり、 子牛生産者
にとっては、 長期的視点に立って生産の合理化を進めていく方向を示す目標とな
る価格である。 従って、 合理化目標価格は生産の合理化の進展に伴って保証基準
価格が近づいていくことが期待される目標であり、 5年ごとの設定を原則とする
が、 牛肉の関税率の引下げ等なお肉用子牛生産をめぐる情勢は流動的であること
から、 この特例措置が平成2年4月1日以後10年間適用されることとなった。 

 9年度の価格は、 まず、 10年度における輸入牛肉の国内価格を推計し、 その価
格から 「品質格差」 を勘案した輸入牛肉と対抗しうる国産牛肉価格を求めた後、 
それを肥育牛の農家販売価格に換算し、 更にその肥育牛を生産するために必要な
合理的な肥育経費 (素畜費を除く。) 等を差し引いて子牛価格 (合理化目標価格) 
とする従来どおりの方法により算定した。 なお、 適用期間は昨年同様1年間 (平
成9年4月から平成10年3月) とした。 

 算定の結果、 肉用子牛の保証基準価格は、(1)着実な規模拡大が進み、 労働費な
どが低下していること、(2)繁殖雌牛償却費は、 素牛が安かった時期に導入された
ものであったことから低下していること、 等の引き下げ要素がある一方で、 消費
税率の引き上げが上げ要素であり、 全体で上げ・下げの要素がほぼ均衡し、「黒毛
和種」 304千円、 「褐毛和種」 280千円、 「その他肉専用種」 203千円、 「肉専用種以
外の品種」 156千円と前年と同水準での諮問となった。 

 合理化目標価格は、(1)円安により輸入牛肉価格が上昇することが上げ要素とな
る一方、 (2)関税率の低下、 (3)肥育に要する経費に係る消費税率の引き上げが下
げ要素となり、 全体で上げ・下げ要素がほぼ均衡し、 「黒毛和種」 267千円、 「褐
毛和種」 246千円、 「その他肉専用種」 150千円、 「肉専用種以外の品種」 111千円
と前年と同水準での諮問となった。 

● 答申及び建議

 こうした政府試算について畜産振興審議会食肉部会で審議され、 次のとおり答
申と建議が行われた。 

[答申]

1 豚肉の安定価格については、 その生産条件及び需給事情その他の経済事情を
 総合的に考慮すると、 試算に示された考え方で安定価格を決めることは、 やむ
 を得ない。 

  牛肉の安定価格については、 その生産条件及び需給事情その他の経済事情を
 総合的に考慮すると、 試算に示された考え方で安定価格を決めることは、 やむ
 を得ない。 

2 肉用子牛の保証基準価格については、 その生産条件及びその他の経済事情を
 総合的に考慮すると、 試算に示された考え方で決めることは、 やむを得ない。 
 合理化目標価格については、 平成9年度につき試算に示された考え方で決める
 ことは、 やむを得ない。 

[建議]

1 酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針、 家畜改良増殖目標等に
 示された中長期的展望の実現に向け、 施策の総合的な展開を図ること。 

2 肉用牛生産の維持・拡大を図るため、 肉用子牛生産者補給金制度の安定的な
 運営に努めるとともに、 繁殖雌牛の増頭対策、 肉用子牛生産の維持拡大対策、 
 肥育経営の安定緊急対策、 地方特定品種対策等を推進すること。 また、 乳用種
 牛肉の競争力強化と乳用種子牛育成経営の安定を図るための対策を充実するこ
 と。 

3 肉豚生産の維持・拡大と養豚経営の体質強化を図るため、 優良種豚の導入、 
 先進技術の活用等を推進するとともに、 地域における養豚振興活動に対する支
 援を充実すること。 また、 地域肉豚生産安定基金の適切な運用が図られるよう、 
 都道府県を指導すること。 

4 畜産経営の大規模化や畜産物輸入の拡大により新たな疾病の発生・まん延が
 懸念されることから、 効果的かつ効率的な家畜防疫制度の整備に努めること。 

5 台湾における口蹄疫の発生を踏まえ、 その国内への侵入防止及び国内におけ
 る防疫体制の整備に万全を期すること。 

6 生産コストの低減に資するため、 新たな設計基準に基づく畜舎建築の推進等
 生産資材に係る諸規制の緩和に引き続き努めること。 また、 家畜ふん尿処理等
 に係る環境保全対策を積極的に推進するため、 個別経営体を含めた畜産経営に
 対する指導の強化と併せて処理施設の整備の促進を図ること。 さらに、 肉用牛
 及び養豚経営の体質強化を図るため、 経営、 財務管理等に係る指導体制の整備
 を推進すること。 

7 病原性大腸菌O−157による食中毒問題等の発生等に鑑み、 食肉の安全性を確
 保するため、 食肉の生産・流通の各段階における衛生管理の強化と所要の施設
 等の整備を図ること。 また、 食肉流通の合理化を推進するため、 産地食肉処理
 施設の再編整備を推進すること。 

8 消費者のニーズに対応し、 食肉に関する適正表示の推進、 食肉に関する知識
 や情報の提供、 国産食肉の消費拡大等の施策を推進すること。 

● 最終決定

 この答申及び建議を受けて、 農林水産省は、 政府諮問案どおりの指定食肉の安
定価格並びに肉用子牛の保証基準価格及び合理化目標価格を決定し、 併せて次の
畜産物価格関連対策の実施を決定した。 

(1)生産対策

 肉用牛生産拡大対策  (約259億円) 
 低コスト生産推進対策 (約 42億円) 
 養豚振興対策     (約 29億円) 
 家畜防疫緊急対策   (約 2億円) 

(2)経営対策

 畜産経営安定対策   (約100億円) 

(3)加工・流通・消費対策 (約 85億円) 

(別表)

 平成9年度畜産物価格(指定食肉及び指定肉用子牛)

1.指定食肉安定価格



2.指定肉用子牛保証基準価格及び合理化目標価格


合理化目標価格の適用期間

 今回の合理化目標価格の適用期間は、平成9年4月1日から平成10年3月31日
までとする。

2 加工原料乳の保証価格等



農林水産省畜産局牛乳乳製品課
松田正勝

 農林水産省は、 加工原料乳生産者補給金等暫定措置法第11条の規定に基づき、 
平成9年度の加工原料乳の保証価格及び基準取引価格、 生産者補給交付金に係る
加工原料乳の最高限度として農林水産大臣が定める数量 (限度数量) 並びに指定
乳製品の安定指標価格を別表のように定め、 3月31日付けで告示 (農林水産省告
示第474号) した。 以下、 その背景、 内容等について紹介する。 

● 牛乳乳製品の需給動向

 7年度については、 6年度の猛暑の影響による乳製品向け生乳処理量の減少か
ら、 脱脂粉乳の需給がひっ迫基調となったこと等に対応し、 生産者団体による3
年ぶりの増産型の計画生産が行われ、 生乳生産は、 年度前半は低迷していたが、 
9月以降回復し、 年度計では、 前年度をわずかに上回った。 (対前年度比0.9%増) 
一方、 飲用需要が天候要因等から前年を下回った (対前年度比2.1%減)ことから、 
乳製品向け処理量は急減していた前年を上回った。 (対前年度比6.8%増) 

 なお、 脱脂粉乳の需給は、 年度前半においてひっ迫基調で推移すると見込まれ
たため、 農畜産業振興事業団はカレントアクセス分の輸入を含む3万5千トンの
輸入を実施した。 

 8年度については、 生乳生産が引き続き好調に推移するとともに、 飲用需要、 
脱脂粉乳を中心とした乳製品需要が好調に推移したことから、 生産者団体は当初
前年並みとしていた計画生産数量を9月に上方修正した。 (対前年計画比100.5%
→102.5%) 生乳生産は、 年度後半に入り伸び率が低下しつつあるものの、前年を
上回って推移している。 (8年4月〜9年2月対前年同期比2.4%増) 飲用需要は、 
牛乳の消費が低迷する一方で、 加工乳、 乳飲料の消費が好調に推移し、 飲用牛乳
等向け処理量は、 わずかに前年を上回る水準 (8年4月〜9年2月対前年同期比
0.6%増) となっているが、 乳製品向け処理量は増加傾向で推移している。 (8年
4月〜9年2月対前年同期比5.8%増) 

 また、 8年度においても、 脱脂粉乳が年度前半においてひっ迫基調で推移する
と見込まれたため、 農畜産業振興事業団は、カレントアクセス分1万7千700トン
の輸入に加え、 1万5千トンの追加輸入を実施した。 

 一方、 バターについては、 一時問題となった過剰在庫は解消されつつある。(9
年2月末現在3.4カ月分 (2万6千トン)) 

● 酪農経営の動向

 酪農経営の動向についてみると、 飼養戸数が零細飼養層を中心に引き続き減少
する (8年4万2千戸、 対前年比6.1%減) 一方で、 飼養規模は、 着実に拡大し
ている。 (全国7年44.0頭/戸→8年46.3頭/戸、 北海道7年74.2頭/戸→8年7
7.9頭/戸)。 

 酪農経営の収益性を牛乳生産費調査でみると、 3年には、 牛肉輸入自由化の影
響による子牛価格、 乳廃牛価格の急落等により、 収益性は大幅に低下した。 その
後は、 1頭当たり乳量、 配合飼料価格、 乳価水準等の影響を受け、 年により変動
はあるものの、 おおむね安定的に推移した。 7年は、 乳価が飲用、 加工用とも安
定的に推移する中で、 円高を背景として配合飼料価格も低下したため、 大きく向
上した。 8年は、 配合飼料価格が上昇に転じたこと等により低下したが、 (搾乳
牛1頭当たり所得、 全国7年261,626円→8年225,158円、 北海道7年243,096円
→8年232,035円) 配合飼料価格の上昇に対して、 配合飼料価格安定制度による
補てんが実施されており、 農家への影響は緩和されている。 

● 加工原料乳保証価格等の算定について

 (1) 加工原料乳保証価格

 加工原料乳の保証価格については、 生乳の生産条件及び需給事情その他の経済
条件を考慮し、 主要加工原料乳地域における生乳の再生産を確保することを旨と
し、 酪農経営の合理化の促進に配慮して、 決定されることとされている。 

 具体的には、 農林水産省の平成8年牛乳生産費 (調査期間7年9月〜8年8月) 
の北海道における生産費について、 生産者の生産性向上の努力に配慮し、 所要の
乳量調整を行った上で、 頭数規模別生乳生産量ウエイトにより加重平均して平均
生産費を求め、 飼料費、 建物費等の物財費の直近時点 (8年11月〜9年1月) へ
の物価修正、 家族労働費の北海道製造業5人以上規模労賃への評価換え等を行っ
て、 9年度推定生産費を算定した。 さらに、 この推定生産費に集送乳経費、 販売
手数料及び企画管理労働費を加算して保証価格を算定している。 

 また、 本年度の算定では8年度価格の算定と同様の考え方で、 (1)流通飼料費
についても、 4月の値上げ後の配合飼料価格水準を可能な限り織り込む、 (2)飼
育家族労働費については、 前年度同様、 労働時間を前年度との2年平均とする、 
(3)6年度算定から行っている酪農ヘルパー費用の加算については、 都府県との
利用日数の格差7日分 (8年6月) とする、 (4)建物費については、 屋根付きた
い肥舎の整備を図るため環境整備施設費を加算する、 (5)自己資本利子について
は、 前年度と直近の利率の2カ年平均とするといった算定上の配慮を行うととも
に、 9年度からの消費税率の引上げによる影響を織り込んだ。 

 この結果、 試算値は、 前年度と比べ1円45銭増加の74.27円/kgとなったが、 
昨年は、 調整額2円93銭が加算されていたことから、 保証価格としては、 前年度
価格75.75円/kgと比べ、 1円48銭減となった。 

 (2) 安定指標価格

 指定乳製品 (バター、 脱脂粉乳、 全脂加糖れん乳及び脱脂加糖れん乳) の安定
指標価格については、 これら乳製品の生産条件及び需給事情その他の経済事情を
考慮し、 消費の安定に資することを旨として定めることとなっている。 農林水産
省畜産局の価格動向調査等に基づく実勢価格の推移、 需給事情等を勘案した結果、 
バターについて、 実勢価格が8年度の安定指標価格を下回って推移していたこと、 
国内の生乳生産の安定的拡大のためには、 脱脂粉乳との消費のアンバランスが問
題となっているバターの消費拡大を図る必要があること等から引下げを行い、 そ
の他の乳製品については据え置くこととし、 これに9年度からの消費税率の引上
げに伴う上昇額を加算し、 バター965円/kg、 脱脂粉乳13,090円/25kg、 全脂加
糖れん乳8,211円/24.5kg、 脱脂加糖れん乳7,333/25.5kgとなっている。 

 (3) 基準取引価格 

 基準取引価格は、 主要な乳製品の製造業者販売価格 (指定乳製品にあっては安
定指標価格) から製造販売費用等を控除した額を基準として定めることとなって
いる。 バターの安定指標価格が引下げとなる中、 農林水産省畜産局の乳製品生産
費調査等から求めた製造販売費用はほぼ前年と同水準となり、 これに9年度から
の消費税率の引上げの影響を織り込んだ結果、 基準取引価格は前年度価格に比べ
86銭減、 税抜きでは2円1銭減の63.40円/kgとなった。 

 (4) 限度数量 

 限度数量は、 生産者補給金の交付の対象となる加工原料乳の数量の最高限度と
して定められる数量であり、 生乳の生産事情、 飲用牛乳及び乳製品の需給事情、 
その他の経済事情を考慮して定めることとされている。 

 具体的には9年度の推定生乳生産量の中央値 (8,775千トン) から推定自家消
費量 (116千トン)、 飲用等向け生乳消費量として見込まれる数量の中央値 (5,22
3千トン)、 チーズ・クリーム等のその他乳製品向けとして見込まれる生乳消費量 
(1,004千トン) 及び要調整数量 (バター在庫削減のために、 生産の調整が必要に
なると見込まれる数量32千トン) を控除して算定した。 

 この結果、 限度数量は前年度に比べ100千トン増の2,400千トンとなった。 

● 答申及び建議

 畜産振興審議会酪農部会においては、 次のような答申及び建議がなされた。 

 [答 申] 

 政府諮問に係る保証価格等及び限度数量については、 生産条件、 消費の動向及
び需給事情その他の経済事情を総合的に考慮すると、 政府試算に示された考え方
で定めることは、 やむを得ない。 

 [建 議] 

1 我が国酪農の安定及び健全な発展が図られるよう、 新たな 「酪農及び肉用牛
 生産の近代化を図るための基本方針」 等に即し、 長期的展望に立って施策の総
 合的な展開を図ること。 

2 最近の消費動向及び国民の栄養摂取の実態にかんがみ、 関係各方面との連携
 を図りつつ、 牛乳・乳製品に関する知識及び情報の普及、 新商品の開発等を通
 じ消費の一層の拡大に努めること。 

  特に、 今後さらなる需要の拡大が見込まれる国産ナチュラルチーズ及び国際
 市場の影響を受けにくい生クリーム等の液状乳製品について、 生産の拡大・振
 興及び消費の拡大を図ること。 

  また、 無脂乳固形分を加味した乳成分取引のさらなる定着促進を図ること。 

3 生乳の広域流通の進展を踏まえ、 集送乳の合理化等により生乳流通コストの
 低減を図るとともに、 予期し難い需給の変動により発生する余剰生乳について、 
 その効率的な処理及び販路の拡大に向けた生産者の自主的な取り組みを支援す
 ること。 

4 国際化の進展に対応し、 我が国乳業の経営体質と国際競争力を強化するため、 
 乳業工場の再編合理化を総合的に推進すること。 

  その際、 乳業施設の設置規制のあり方については、 生産性向上等を図る観点
 から、 その見直しを行うとともに、 学乳事業のあり方については、 いっそう効
 率的なものとする方向で検討すること。 

5 ゆとりある酪農を実現するため、 酪農ヘルパー、 コントラクターの普及・定
 着を図るとともに、 自動搾乳システムの実用化といった新たな技術の開発・普
 及を図ること。 

  また、 経営の安定と地域農業の健全な発展を図るため、 自給飼料基盤の拡充
 に努めるとともに、 家畜ふん尿処理等に関する環境保全対策を推進すること。 

● 関連対策

 農林水産省は、 平成9年度の保証価格、 安定指標価格、 基準取引価格及び限度
数量について別表のとおり3月31日に告示するとともに、 併せて次のような畜産
物関連対策の実施を決定した。 

1 生産・経営対策

 (1) 生乳需給安定対策 (約110億円) 
 (2) 酪農経営安定対策 (約129億円) 
 (3) 畜産環境保全対策 (約 21億円) 

2 加工・流通・消費対策

 (1) 牛乳乳製品消費拡大対策
            (約 43億円) 
 (2) 乳業再編整備対策 (約 56億円) 

平成9年度加工原料乳保証価格等総括表


3 平成9年度の畜産物価格決定に伴う関連対策の概要



農林水産省畜産局畜産振興推進室
課長補佐西山信雄

 農林水産省は、 畜産振興審議会の答申及び建議をうけて、 平成9年度の指定食
肉の安定価格、 肉用子牛の保証基準価格及び合理化目標価格、 加工原料乳の保証
価格及び基準取引価格、 指定乳製品の安定指標価格及び生産者補給交付金に係る
加工原料乳の限度数量を決定し、 3月31日付けで告示した。 

 併せて、 畜産物行政価格の決定を踏まえ、 畜産物価格関連対策を決定したので、 
その概要を紹介する。 

● 食肉関係

1 生産対策

1 肉用牛生産拡大対策

 (1) 子牛生産拡大奨励事業 (継続) 17,530百万円

 肉専用種について、 子牛価格低落時における繁殖雌牛の増頭・拡大に対する助
成を実施することとし、 黒毛和種については前年と同様、 子牛価格が35万円を下
回った場合において、 価格低落の程度に応じた助成を実施

 (2) 中核肉用牛経営育成対策事業 (新規) 2,119百万円

 肉用牛の生産拡大を図るため、 肉専用種について、 繁殖雌牛の規模拡大を意欲
的に進める経営体に対する助成を実施

 (3) 肉用牛生産安定緊急対策事業 (継続) 1,626百万円

 肉用牛の生産基盤を強化するため、 優良な黒毛和種繁殖雌牛群の整備のための
改良集団の育成、 繁殖成績等の不良な繁殖雌牛の淘汰奨励、 離島等条件不利地域
における肉用子牛の購買促進、 子牛市場の活性化等を実施

 (4) 乳肉複合経営体質強化事業 (継続) 4,195百万円

 酪農家の有するほ育育成技術等を活用し、 酪農家等によるほ育・育成、 経産牛
肥育、 受精卵移植技術の活用による肥育素牛生産等の乳肉複合経営を推進

 (5) 肉用牛産地拡大推進事業 (継続) 108百万円

 生産集団が、 肉用牛の生産拡大のための一貫生産を行う場合、 助成金を交付

 (6) 地方特定品種生産流通等強化対策事業 (継続) 355百万円

 日本短角種等地方特定品種について、 生産集団の育成、 子牛生産から肥育まで
の産直一貫生産体制の推進、 牛肉の安定的な流通販売体制の整備等生産から消費
にわたる総合的な対策を実施

2 低コスト生産推進対策

 (1) 肉用牛効率生産体系普及定着化事業 (新規) 508百万円

 肉用牛の一層のコスト引き下げを推進するため、 新たな繁殖技術の導入と効率
的な肥育技術の定着化を促進

 (2) 乳用種牛肉生産流通改善対策事業 (拡充) 2,001百万円

 乳用種の素牛育成及び肥育部門における生産性の向上と飼養管理技術の改善を
推進

 (3) 受精卵利用肉用牛繁殖基盤強化事業 (継続) 640百万円

 優良和牛受精卵の供給体制の整備とその活用を集団的に実施できる体制を整備

 (4) 飼料生産受託組織育成特別対策事業 (拡充) 418百万円

 畜産農家の労働負担の軽減、 機械投資の節減等を通じた畜産経営の実現を図る
ため、 飼料生産請負組織 (コントラクタ−) を育成していくための支援措置を実
施

 (5) 畜舎建築コストガイドライン設定事業 (新規) 23百万円

 畜舎の建設コスト低減のためのガイドラインの策定、 調査等を実施

 (6) 飼料作物単収向上対策事業 (継続) 354百万円

 飼料作物の単収向上を図るため、 栽培管理技術の普及、 実証展示、 機械の整備
等を実施

 (7) 中山間地域低投入型畜産振興事業 (継続) 230百万円

 中山間地域における低投入型畜産の振興を図るため、 展示実習牧場の整備等に
よる技術普及、 技術指針の作成、 研修会の開催等を実施

3 養豚振興対策

 (1) 地域養豚振興特別対策事業 (継続) 1,000百万円

 生産が停滞傾向にある我が国養豚の振興を図るため、 各地域において展開され
る生産拡大、 生産性向上等のための活動に対する支援措置を実施

 (2) 養豚生産基盤強化対策事業 (継続) 1,022百万円

 生産基盤の強化を図るため、 優良種豚の導入促進、 衛生管理の向上、 優良な種
豚の改良と普及、 人工授精の普及による労働の平準化の推進等に対する助成を実
施

 (3) オ−エスキ−病清浄化推進総合対策事業 (継続) 511百万円

 オーエスキー病抗体陽性同居豚の淘汰・更新、 ワクチン接種対策、 清浄種豚の
流通促進の強化等による清浄化の促進

 (4) 優良種豚広域利用促進事業 (新規) 408百万円

 豚肉の肉質の改善を図るため、 自家検定用機材の整備、 新育種評価体制整備、 
PSS遺伝子 (ストレス感受性因子) の検査体制の整備及び育種群におけるスクリ
−ニングを実施

4 家畜防疫緊急対策

 (1) 海外特定疾病緊急防疫対策事業 (新規) 157百万円

 台湾における口蹄疫の発生を踏まえ、 海外悪性伝染病についての理解の促進及
び防疫技術の普及等を実施

2 経営対策

1 畜産経営安定対策

 (1) 酪肉基本方針啓発普及事業 (拡充) 509百万円

 酪肉基本方針等について生産者等への普及・啓発を行うとともに、 先進的な畜
産経営技術等の普及等を実施

 (2) 肉用牛肥育経営安定緊急対策事業 (継続) 7,408百万円

 肉用牛肥育経営の収益性が悪化した場合にその経営の安定を図るため、 収益性
悪化の程度に応じて、 経営の継続に必要な経費の負担を軽減するための助成金を
交付

 (3) 大家畜経営活性化資金特別融通助成事業 (継続) 324百万円

 大家畜経営の体質強化並びに後継者の経営継承の円滑化を図るため、 既往借入
金の借り換えに必要な長期低利資金の融通を実施

・融資枠:1,500億円
・貸付期間:平成5年度から12年度

*後継者経営継承円滑化資金

 償還期間:25年以内 (据置5年以内) 
 貸付利率:2.9%以内

*経営活性化資金

 償還期間:15年以内 (特認20年) (据置3年以内) 
 貸付利率:2.9%以内
 (融資機関の基準金利が4.55%の場合) 

 (4) 養豚経営活性化資金特別融通助成事業 (継続) 1,430百万円

 養豚経営の体質強化並びに後継者の経営継承の円滑化を図るため、 既往借入金
の借り換えに必要な長期低利資金の融通を実施

・融資枠:300億円
・貸付期間:平成5年度から12年度

*後継者経営継承円滑化資金

 償還期間:15年以内 (据置5年以内) 
 貸付利率:2.9%以内

*経営活性化資金
 償還期間:7年以内 (特認10年) (据置3年以内) 
 貸付利率:2.9%以内
 (融資機関の基準金利が4.55%の場合) 

 (5) 地域肉豚生産安定基金造成事業 (UR関連対策) 継続

 (6) 畜産経営安定化指導事業 (継続) 352百万円

 先進的な畜産経営技術等の普及、 経営・財務管理面の実態に応じた相談活動、 
畜舎等の建築に係る関連基準に関する検討、 試験等を実施

2 畜産環境保全対策 (酪農関係と共通、 〔酪農関係〕 1の3を参照) 

3 加工・流通・消費対策

1 食肉処理施設等再編整備事業 (拡充) 6,200百万円

 国産食肉の市場競争力の確保を図るため、 小規模な食肉処理施設の整理統合の
促進、 食肉流通施設の衛生水準の向上促進のための施設整備等を実施

2 食肉等需要回復緊急対策事業 (新規) 509百万円

 食肉需要が停滞する中、 食肉需要の早急な回復を図るため、 各種マスメディア
を利用した広報活動、 新商品開発、 イベントの開催、 副生物・副生物加工品の衛
生管理の普及、 特別販売活動等の実施

3 食肉需要促進総合対策事業 (継続) 1,342百万円

 食肉消費動向の把握、 Jビーフシンボルマーク等の普及・定着、 食肉の適正表
示販売等を実施

4 国産食肉等新規需要開発事業 (継続) 426百万円

 低需要部位を中心とした国産食肉の新製品の開発と高付加価値化を推進

● 酪農関係

1 生産・経営対策

1 生乳需給安定対策

 (1) 生クリ−ム等生産拡大促進事業 (拡充) 3,730百万円

 生クリーム等の生産振興を図り、 酪農経営の安定に資するため、 国産生クリー
ム等向け生乳の需要拡大を図ることとし、 生クリ−ム等向け生乳の取引実績に対
する拡大分について価格を引き下げて取り引きする場合、 指定生乳生産者団体に
生産奨励金の交付

 (2) 酪農安定特別対策事業 (拡充) 3,613百万円

 国産ナチュラルチーズの生産振興を図るため、 チーズ原料乳が長期安定的に供
給されるよう生産拡大奨励等を実施するとともに、 国産ナチュラルチーズの新製
品開発及び知識の普及のための助成を実施

 (3) 広域生乳需給支援対策事業 (新規) 4,000百万円

 需要に見合った広域的な生乳供給を実施する中で発生する余乳について、 生産
者団体が行う効率的な処理等に対し助成を行うため基金を造成

 (4) 飲用牛乳市場安定化対策事業 (継続) 82百万円

 飲用向け生乳の流通の適正化、 飲用牛乳市場の安定化を推進

2 酪農経営安定対策

 (1) 良質生乳安定供給特別対策事業 (新規) 4,800百万円

 良質で信頼して消費できる牛乳乳製品の供給を緊急に図るため、 品質の優れた
良質な生乳の生産を推進するための特別対策を実施。 

 (2) 酪農ヘルパー傷病時利用円滑化特別対策事業 (新規) 326百万円

 酪農家の病気、 事故に際して酪農ヘルパーの利用を円滑に行うための自主的な
取り組みに対して助成を実施

 (3) 乳用牛生産等動向緊急調査事業 (継続) 147百万円

 酪農経営と生乳需給の安定を図るため、 後継牛と交雑種の生産状況、 生産者の
生産意向等を把握するための調査等を実施

 (4) 精子分別雌雄産み分け実用化促進事業 (継続) 123百万円

 雌雄の産み分け技術の開発を推進するため、 精子の分別効率の改善、 膜蛋白、 
糖鎖の分析等精子の生化学・分子生物学的大量分別技術等の開発

 (5) 大家畜経営活性化資金特別融通助成事業 (継続) 1,086百万円

 大家畜経営の体質強化並びに後継者の経営継承の円滑化を図るため、 既往借入
金の借り換えに必要な長期低利資金の融通を実施

・融資枠:1,500億円
・貸付期間:平成5年度から12年度

*後継者経営継承円滑化資金

 償還期間:25年以内 (据置5年以内) 
 貸付利率:2.9%以内

*経営活性化資金

 償還期間:15年以内 (特認20年) (据置3年以内) 
 貸付利率:2.9%以内
 (融資機関の基準金利が4.55%の場合) 

 (6) 酪農ヘルパ−組織運営体制強化特別事業 (継続) 632百万円

 (7) 酪肉基本方針啓発普及事業、 畜舎建築コストガイドライン設定事業、 飼料
 作物単収向上対策事業、 飼料生産受託組織育成特別対策事業、 乳肉複合経営体
 質強化事業、 中山間地域低投入型畜産振興事業、 畜産経営安定化指導事業は、 
 食肉関係と共通……食肉関係の1の2及び2の1を参照

3 畜産環境保全対策

 (1) 畜産環境保全施設整備事業 (新規) 1,503百万円

 環境規制の厳しい地域の畜産経営に対し、 (財) 畜産環境整備機構がふん尿処
理装置等をリ−スするのに必要な当該装置等の購入費の一部 (1/3) について
助成

 (2) 畜産環境保全特別推進事業 (継続) 189百万円

 畜産経営に対する環境問題についての特別指導等の実施

 (3) 家畜ふん尿バイオリアクタ−等処理技術開発事業 (継続) 97百万円

 バイオリアクタ−等を利用した新しい家畜ふん尿処理技術について、 民間技術
を結集した技術研究組合を組織し、 これらの技術の実用化に向けた技術開発の支
援の実施

 (4) 新時代酪農ファ−ム確立調査事業 (継続) 80百万円

 酪農経営の環境改善を図るため、 住宅、 畜舎、 草地の適正配置に関する調査・
検討等を実施

 (5) 畜産衛生環境保全事業 (継続) 202百万円

 畜産廃棄物の円滑な処理を推進するための家畜死体冷却保管施設の整備、 化製
製品保管施設の整備、 不可食物等のたい肥化施設の整備等に対する助成を実施

4 酪農経営体育成強化緊急対策事業 (継続、 UR関連対策) 

5 家畜防疫緊急対策
 海外特定疾病緊急防疫対策事業 (食肉関係と共通、 [食肉関係] 1の4を参照。) 

2 加工・流通・消費対策

1 牛乳乳製品消費拡大対策

 (1) 牛乳乳製品消費拡大対策事業 (継続) 1,914百万円

 牛乳乳製品の一層の消費拡大を図るため、 牛乳乳製品の消費動向調査、 牛乳乳
製品と健康に関する正しい知識の普及、 需要増進を目指した牛乳乳製品フェア・
料理講習会の開催等を実施

 (2) はっ酵乳等牛乳乳製品利用拡大緊急対策事業 (新規) 200百万円

 高齢者や低利用地域を中心として、 はっ酵乳等の利用拡大を図るためのキャン
ペーン、 牛乳乳製品の知識の普及、 新製品の開発等を緊急に実施

 (3) 学校給食用良質牛乳供給推進事業 (継続) 2,157百万円

 牛乳飲用習慣の定着等を図るため、 学校給食への良質な牛乳の計画的な供給に
対して奨励金を交付。 

 (4) 乳業再編整備等対策事業 (継続、 UR対策) 

 酪肉基本方針に即し、 乳業の集約化による効率的な乳業施設の整備等を実施


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