◎巻頭言


平成17年の外食市場の見通しと食材需要

財団法人 外食産業総合調査研究センター
専務理事  岩 渕 道 生









外食・中食はこれまでも有望な農畜産物の市場

 国民1人当たり実質外食市場規模 (平成2年価格) は、 昭和50〜57年には国民
1人当たり実質国内総生産の年間平均伸び率の1.11倍で拡大していたが、 昭和58
年〜平成2年には逆に下回り (0.71倍)、 平成3〜7年には国内総生産が若干な
りとも拡大しても外食市場規模はむしろ縮小していた。 一方、 同じ期間の持帰り
弁当、 総菜などのいわゆる中食市場の伸び率は1人当たり実質国内総生産の伸び
率のそれぞれ3.98倍、 1.83倍であり、 平成3年以降も国内総生産の増加率を上回
る伸び率 (1.15倍) で拡大していた。 同じ期間の内食市場の伸び率は国内総生産
のそれぞれの0.12倍、 0.12倍であったから、 農畜産物とその加工品の供給者から
みれば、 外食市場なかでも中食市場はより有望な市場と考えられてきた。 

10年後、 外食・中食は食料市場の2分の1を占める

 当センターが推計した平成17年の実質食料支出額 (平成2年価格) は、 国民1
人当たり実質国内総生産が年率2%で拡大する場合、 平成7年の70兆2,748億円
から11.7%増大し78兆4,866億円に達すると見通している。 しかし、 家庭で調理
するいわゆる内食はほとんど横這い1.9%増の41兆4,144億円に留まるが、 外食は
24.2%増の32兆1,421億円に、 また持帰り弁当や総菜類 (中食) は32.0%増加し
て4兆9,301億円 (スーパー・百貨店分を含まない。) にそれぞれに達するものと
みられる。 

 食料支出に占める中食と外食を加えた額の割合である 「食の外部化率」 (食事
が社会化された部分とその程度を示す。) は、 平成7年には42.2%であったが平
成17年には1人当たり実質国内総生産が2%で拡大する場合47.2%にまで上昇す
ると見込まれている。 

 これらの見通しは、 ここ10年の1人当たり実質国内総生産の伸び率に比べ、 食
料市場全体の伸び率は低いのに対して、 外食市場、 中食市場はそれと同程度ある
いはそれ以上の伸び率で拡大すること、 食事の外部依存、 食事の社会化が進展す
ること、 そして外食・中食市場が今後とも国内農産物とその加工品の有望な市場
であることを示している。 

飲食店は国内産品の供給者に何を望むか

 大手の外食企業の食材仕入れ戦略は定時・定量・定規格・低価格であることは
いうまでもないが、 国産食材、 輸入食材を問わずかなり長い期間を見据えた安定
的な供給確保の視点に重点をおいていることを忘れてはならない。 

 当センターの調査によると、 一般飲食店が輸入牛肉、 輸入豚肉を使用する理由
は 「価格が安い」、 「価格の安定」、 「大量発注ができる」 であり、 それを使用しな
い理由は 「品質がよくない」、 「輸入品を使う必要がない」、 「国産品を使うことが
習慣」 などが挙げられている。 ここで重要なことは、  「輸入品を使う必要がない」、 
「国産品を使うことが習慣」 と考えている飲食店でもたまたま何らかの理由で輸
入肉を使用しそれが顧客に好評であった場合、 その後は常時輸入品を使うように
なってしまうから、 国産肉の供給者は常に飲食店の経営志向を把握し、 それを先
取りしたメニュー開発とそれに適した商品を提供していかねばならないというこ
とである。 

 一般の飲食店では国産野菜への依存度が高いが、 国産野菜に対する評価につい
ては、 「飲食店が求める以上に規格や等級の選別をしすぎる」 ことであり、 つい
で 「年間を通して、 安定した品質の物が入手できない」、 「飲食店の食材として充
分に使用が可能な規格外の品物が入手できない」 となっている。 

 これらを一口にいえば、 国内産地や出荷団体、 さらには青果物の流通システム
そのものが、 スーパーへの出荷や一般消費者の利用を念頭において構築されてい
るため、 一般飲食店は希望しあるいは使用可能な品物を手に入れることができず、 
また、 希望しあるいは使用可能な品物を手に入れようとしても産地、 生産者、 出
荷団体や流通の仕組みに関する情報にアクセスできずに悩んでいるということで
ある。 

国内産品供給者は常に情報発信を

 米などの場合、 消費者と生産者が直接手を結んだ産地直送が既に広範に存在し
ているが、 飲食店と産地生産者との交流の事例はあまり多くないようである。 

 国産野菜の場合、 飲食店は、 欲しい品物を産地または、 生産者が供給してくれ
ることと、 供給側の関連情報の発信を強く待ち望んでいる。 同様に、 国産肉の場
合も、 供給者が外食での国産肉の利用拡大のために飲食店とともにメニューを開
発し、 それに適した国産肉を提供するなど供給側の積極的な情報発信と、 需要者
と一体となった日本の食肉文化の創造が必要であると考える。 

元のページに戻る