◎地域便り


山間地で放牧に生きる畜産後継者

鳥取県/井田 穂積 (ほずみ)


 島根県境にほど近い鳥取県日南町上萩山の山形美智也さん (39才) は、 山間地
の環境条件を上手に生かし成牛18頭、 育成牛16頭の和牛繁殖経営を行う一方、 過
疎化が進む当地域の担い手として活躍している。 

 山形さんは昭和62年、 高校卒業以来勤めていた自動車学校を退職、 就農した。 
以後堅実な経営と着実な規模拡大を図ってきた。 

 経営の特徴は混牧林放牧を取り入れ、 労力と生産コストの低減を図っているこ
とで、 特に子牛1頭当たり飼料費は7万円と県平均より約1万円安くなっている。 

 放牧は父の猶方さんが始めたもので、 美智也さんの経営になって10haまでに拡
張した。 

 当初、 放牧地は牧草主体であったが、 現在では自然に野シバが繁茂、 施肥など
の牧野管理がいらないなど手間のかからない放牧場になっている。 

 放牧で浮いた労力は水稲の作業受託、 森林の枝打ち、 間伐等の作業受託へ振り
向け、 人手不足が深刻な農林業の 「助っ人」 となって活躍している。 

 また、 冬期には道路の除雪作業も行うなど地域の生活の支えともなっている。 

 若者の流出が続く当地域において、 山形さんは貴重な存在。 両親共に健在で、 
奥さんと3人の子供にも恵まれ地域に溶け込んで悠々とした生活を送っている。 

  「今後もこの地域は益々過疎化と若者の流出が続くものと思いますが、 微力な
がらこの地域が発展するよう役立ちたい」 と静かに語る山形さん。 ふるさとに対
する深い思いが感じられ、 地域の将来を担う頼もしい後継者として今後の活躍が
期待される。 

【会社勤めを辞め農林業の強力な助っ人へ】


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