◎地域便り


ビール粕利用で肉用牛を低コスト生産

愛媛県/戸田 広城


 愛媛県新居浜市で和牛肥育経営を営む清野清二さんは、 未利用資源であるビー
ル粕を利用して 「発酵飼料」 を考案し、 低コスト肉用牛経営を実践している。 

 新居浜市は肉用牛肥育の歴史が古く、 かつて、 雌牛の理想肥育の特産地として
東京、 京阪神市場で名声を博していた。 近年、 都市化による環境問題や後継者不
足等で肉用牛農家は減少の一途をたどっている。 

 清野さんは、 昭和40年にかねてからの念願であったフランス原産の肉用牛シャ
ロレー種の肥育に取り組み、 その後、 黒毛和種を主体とした肥育経営に転換、 段
階的に規模拡大を図り、 現在約300頭を飼養している。 

 十数年前、 購入配合飼料依存では、 自立できないという考えから自家配合飼料
に取り組んだ。 牛肉輸入自由化後は、 牛の生理にあった飼養管理をモットーに研
究を重ねてきた結果、 ビール粕を利用した 「発酵飼料」 を開発した。 この飼料は、 
風味がよくし好性も抜群で、 真夏時の肥育末期でもこれまでの配合飼料に比べて
食い込みが良いなど、 効率的な肥育ができている。 しかも、 牛自体も穏やかにな
り事故率も減少している。 

 製造方法は、 単味飼料 (おから、 醤油粕、 酒粕、 ビール粕の未利用資源とフス
マ、 大豆等) をかく拌機で10〜15分間位十分にかく拌配合し、 12〜24時間置いて、 
適度な乳酸及び酢酸発酵を促し、 給与時点で40〜45℃の発酵温度となり良質な飼
料が出来上がる。 配合割合は、 肥育ステージに応じて変えるのに加え、 季節によ
っても変更するほどの徹底ぶり。 給与作業も比較的短時間で済み、 大規模経営の
難点も克服している。 この飼料は、 水分含量約20%で1日の給与量は約10kg、 生
産コストは、 一般市販飼料の半分である。 

 来年には、 隣接する西条市で大手ビール会社が操業を開始する予定であり、 清
野さんのビール粕を利用した低コスト経営が弾みとなって地域畜産農家に活気を
与え、 畜産農家の減少傾向を食い止めることができればと期待が寄せられている。 


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