★ 事業団たより


全国ちくさんヒットパレード 「'97 特産畜産物フェア」 を終えて

企画情報部情報第一課


 平成9年2月20日 (木) から25日 (火) までの6日間、 当事業団は、 東武百貨
店池袋店本館10階催事場 (東京都豊島区) で、 「'97特産畜産物フェア」 を開催し
ました。 

 特産畜産物フェアは、 当事業団が、 農林水産省、 都道府県、 出展者等の協力を
得て、 国内各地で創意・工夫をこらして作られた牛乳・乳製品、 食肉・食肉加工
品等の畜産物を展示・即売するとともに、 畜産物に関する知識の普及・啓発を図
ることにより、 畜産物の需要増進に資するために、 毎年開催しているものです。 

● 過去最高の15万6千人来場

 今年の百貨店型フェアのサブタイトルは“全国ちくさんヒットパレード”でし
た。 全国24都道県、 51の出展者により、 新鮮で安心な畜産物を集め、 直売を行い
ました。 この他 「ちくさんと健康測定コーナー」 (骨密度、 体脂肪、 血圧測定や
体力テストなどを通じて畜産物を健康や栄養面から理解してもらう)、 「これが人
気!ちくさん料理ヒットパレード」 (ひと工夫でうまくなる、 家庭でもプロの味
をだせるようにプロによる料理のこつなどを紹介)、 「全国うわさのヒット畜産物・
お味見無料体験」 (全国各地から集まった自慢の味を試食してもらう) 等々、 イ
ベントや各種コーナーが設けられ、 楽しみながら畜産物に関する知識が得られる
ように工夫しました。 

【全国から新鮮でおいしい畜産物が集合】

 おかげでこれまでで最高の15万6千人の方々にご来場頂きました。 東京での百
貨店型のフェアの開催は、 今回で6回目。 来場者数は年毎に増し、 その推移は次
のようになっています。 

◇図:百貨店での特産畜産物フェアの来場者数◇

フェア来場者数日計表

 来場者が増えた理由として、 マスコミが取り上げてくれたことが挙げられます。 
食品の安全性、 食料自給の重要性等、 「食」 に対する関心の高まりを反映してか、 
全国紙、 専門紙、 畜産の業界紙、 また、 テレビ、 ラジオも取り上げてくれました。 
22日 (土) はこの冬一番の寒さのせいで来場者数は少なかったものの、 同日NHK
が午後6時45分からの 「首都圏ニュース」 で取り上げたことなどもあってか、 23
日 (日) からの来場者数が伸びました。 日曜日に4万人を突破したことと、 月曜
日には土曜日を上回る来場者があったことが特筆されると思います。 

【畜産料理教室も大好評】

● 消費者が求めるもの

 このフェアの開催を始めた平成3年は牛肉の輸入自由化が始まった年です。 そ
れから6年が過ぎ、 バブル経済の崩壊や円高等による 「価格破壊」 も経験し、 消
費者の購買行動は、 ただ安ければいいという選択から、 大量の情報と商品があふ
れるなかで、 自分自身の価値観、 生活スタイルにあったものを選択する方向へと
変化してきていると言われます。 最近、 国産の畜産物や特色を持った製品に人気
が出てきたのもこの表れではないかと考えています。 

 昨年3月の百貨店型フェア来場者1,800名のアンケート結果でも、 消費者が「新
鮮さ」、 「安全性」 を重視していることがわかります。 

 消費者にとってフェアでの畜産物販売の良い点は

・実物が見られること
・生産者から直接商品についての説明が聞けること
・わからないことがその場で質問できること
・試食ができること

などが挙げられます。 普通の小売店とは異なり、 出展者によっては、 生産者と直
接話ができる利点もあります。 今回のフェアでは、 食品のショウケースの前に生
産者や生産現場がわかるようなパネルを設置し、 お客さんと生産者の距離を近付
けるような工夫もしました。 

● 出展者が求めるもの

 出展者がこのフェアに参加する際の位置づけについては、 大きく次の三つのタ
イプに分類できるようです。 

1 PR、 アンテナショップタイプ (県、 農協連、 生産者による宣伝) 
2 情報交換、 研究タイプ (同業者等と交流を持ち、 何か新しいものをつかむ) 
3 拡販タイプ (新たな販路を追求) 

 これは、 出展理由が三つのうちどれか一つだけということではありません。 も
ちろん、 出展者は、 それぞれ様々な考えをもって出展されていますが、 フェア期
間中にお聞きしたことや、 店頭での動きから3タイプについて例を挙げてみます。 

1 PR、 アンテナショップタイプ

 これは、 ブランドや特徴ある商品の宣伝に力を入れているところです。 

 東北協同乳業 (株) (福島県) では、 脂肪率の高い牛乳・加工乳を販売してい
ました。 お客さんに全種類の牛乳等をフルコースで試飲してもらい感想を聞いて
いました。 また、 購入したお客にはパンフレットを付けるなどのほか、 2本買っ
たら特注の発泡スチロールケースも付けるというサービスです。 

 山形牛 (山形県)、 とちぎ和牛 (栃木県)、 上州牛 (群馬県)、 讃岐牛 (香川県)、 
肥後牛 (熊本県) といった牛肉は県や農協連が中心となり、 県の特産品とすべく
ブランド化 (銘柄化) を推進してきました。 県や農協連の方々が店頭に立ち、 販
売と看板・ポスター等でブランドのPRを行っていました。 

2 情報交換、 研究タイプ

 これは、 今後さらに成長していくために、 同業者等と知り合い情報交換を行っ
たり、 売るためにどんな工夫が必要か、 他の出展者がどのような製品を作ってい
るか等を積極的に勉強しようとするタイプです。 

  (有) すずきふぁーむ (北海道) の経営者は、 牛2頭から酪農を始めましたが、 
今は自分では牛を飼っていません。 地元の産品を使ったアイスクリームの製造を
行い、 会社をさらに発展させていこうと取り組んでいます。 6日間のフェア期間
中、 同業者の製品を試食しながら情報交換に余念がありませんでした。 

 小山ブロイラーセンター (岩手県) からは、 3代目修行中の若者が出展しまし
た。 地元での商売もうまくいっているようですが、 これだけではだめだという考
えと県の薦めもあっての初出展です。 会社の人は、 出展に当たりいくつもの品を
販売するように薦めましたが、 彼は、 みそ味の鶏肉加工品を中心に売りたいと考
え、 3品としました。 地元で評判のみそ味 「いわい三昧」 が、 大消費地のお客に
どのような評価を受けるか試してみたかったのです。 3個1,000円の 「いわい三
昧」 は好調な売れ行きとなりました。 

3 拡販タイプ

 これは、 フェアを地元以外の都市での絶好の拡販機会としてとらえ、 期間中の
販売こそ今後につながると、 販売を重視するタイプです。 鶏肉加工品・卵油の八
栄島ファーム (山形県)、 風見種鶏卵生産組合 (大分県)、 福生ハム (東京都)、ト
ゥリリアム・オカダ・ファーム (北海道) 等は、 それぞれ特徴ある販売方法で初
日から好調の売り上げでした。 

 わざわざ遠方から来て出展するには、 皆さんそれぞれに理由があります。 また、 
物を作る上で、 こだわりを持っている方々も多いようです。 

 現在、 市場や農協などへ出荷する場合、 大きさや形など規格にあったものでな
ければ価格が高くなりません。 また、 生産者は自分で値段を決めることもできま
せん。 一方、 例えば、 このフェアに参加した人の多くは、 個人経営です。 自分で
慈しみながら家畜を育てる。 あるいは加工し商品を作る。 出来上がった商品でお
客さんに満足してもらいたいと考えています。 今、 有機野菜がブームになり有機
野菜を作れば高く売れるという風潮にあります。 ブームにのれば儲かるでしょう。 
しかし、 「生産者は自分で考えていいものを作りたがっている」 とトゥリリアム・
オカダ・ファームの岡田さんは言います。 

 出展者が考えるいいものとは何でしょうか。 その1つとして、 今回のフェアで
感じたことは、 いわゆる添加物を使わないことにこだわっている方が多いという
ことです。 

  (有) 元気村農園 (北海道) の笠原さんは、 子牛の肉を使ってローストビーフ
やレトルト食品を作っています。 「これには、 いっさい添加物を使いません。 添
加物が子供達にどれだけの影響を与えるかを考えると、 使うことはできない」 と
言います。 また、 ここではF1の子牛肉しか使いません。 「元々、 F1の肥育と焼
き肉レストランの経営もしていて、 お客さんが脂身を残すので、 この脂を作るた
めのコストや手間暇を考えると、 脂肪が少なく飼育期間の短い子牛の肉を使った
方がいい」 と考えたからだそうです。 

【F1子牛で作ったカレーは美味「元気村農園」さん】
 また、 (有) 真木沢ミートピア (岩手県) の昆野さんは、 豚肉・牛肉のハム・
ソーセージなどを添加物を使わないことを原則に作っているそうです。 「ハムは
発色剤を使わないと切ってすぐ色が黒くなるので、 このフェアではスライスハム
は販売しません。 また、 量を多く作ると商品管理が行き届きません。 食べてくれ
るお客さんのことを考えて作り、 『あそこに行かなければない味』 をめざして
います」 と語っています。 

 この他、 東毛酪農農業協同組合 (群馬県) は乳化剤を使わないアイスクリーム
を作っているなど、 それぞれにこだわりを持っています。 

【コックの服装が印象的な】
● まだまだ工夫が必要

 今回の 「特産畜産物フェア」 の評価について考えるとしたら、 大は畜産物の需
要拡大に少しでも役だったと思えることです。 小は、 フェアの来場者の増、 出展
者の売り上げ増ではないでしょうか。 

 来場者数については、 先に述べたとおり、 年毎に増加しています。 

 東武百貨店の場合は、 首都圏最大のターミナル駅に立地した百貨店として、 夕
方に買い物客が多く、 平日で1日10万人以上の来客があるといいます。 新聞広告
の他、 電車内の中吊りポスターを設ける他、 今回は地下1階のコンコースで口上
などのPRを行った効果もあったと思います。 

【コンコースでの呼び込み口上もヒット】
 東武百貨店の田口さんによると 「2月と8月は、 百貨店の売り上げが1年で最
も落ちる時期です。 これまで3月に開催してきたフェアが2月に開催となり、 ま
た、 今回は初出展の方が多かったので、 売上げは昨年を下回るとみて目標を下げ
ていました。 しかし、 結果は前年を大幅に上回りました。 」 

 田口さんは、 売り上げに関わる要素として、 

 1 商品 2 場所 3 売り方 の3つを上げています。 

 どんな商品を扱っているか、 他とはどう違うかは大切な要素であり、 食肉加工
品、 乳製品であれば原料や添加物などがどうなっているかや、 何故価格が違うの
かという情報が、 お客さんにわかり易く伝えられることが重要でしょう。 

 売り方については、 いままで 「特産畜産物フェア」 や他の物産展等に出展され
た経験がある方々は、 慣れているようでよく売れていました。 初めての方で、 特
に普段、 農業や加工、 事務をやっている方が急に店頭に出てもなかなか同じよう
にはできないものです。 田口さんは 「販売員の姿勢が重要です。 ぼーっと立って
いてもだめ。 おしゃべりもだめ」 だといいます。 また、 パフォーマンスも重要で
す。 「とんたろう」 (宮城県) のようにご主人がコック服を着て店頭に立つ。 「福
生ハム」 (東京都) のように実演販売のプロもいます。 百貨店での販売は、 スー
パーのそれとも違うようです。 

【福生ハムの前にはいつも人だかりが絶えない】
 試食についても、 各出展者毎に店の前で行うのとは別に、 イベントコーナーで
も行いましたが、 出されたものがどこの店のものかわかりにくいこともありまし
た。 出展者のある方からは 「試食は各店の前で行ったらどうか、 時間を設けて、 
放送などで案内をしてその店の前に人を集める。 そうすれば、 売り上げにもつな
がるし、 人が集まったということで出展者の方も自信になるのではないか」 と助
言を頂きました。 田口さんは 「試食は各店で行っているが、 食べやすいようにし
ている店とそうでない店がある。 お客さんがとりやすいところにおくことが大切。 
ショーケースの内側から手を伸ばしてどうぞといってもお客さんは手を出さない。 
工夫が必要です」 と言います。 

 また、 リピーターを確実に自分のお客にしてしまう工夫も必要です。 リピータ
ーの方には、 短期と長期があると思います。 短期的リピーターとは、 フェア期間
中のはじめの頃購入したものを食べてみておいしかったから、 後半にまた買いに
来て下さるお客様です。 長期的とは、 昨年フェアに来ていただいた方で、 また今
年も来て下さるお客様です。 

 田口さんは、 売り上げを伸ばすためにはDM (ダイレクトメール) が重要だとい
います。 今回のフェアで確実に売り上げを伸ばしている出展者はDMを実施してい
ます。 伊豆沼農産 (宮城県) 伊藤さんは 「今回は前回のフェアで名前を書いてい
ただいたお客さんに、 自分で仙台の風景写真の絵はがきをお送りしました。 これ
を持ってらしたお客さんは確実に1人3,000円以上買ってくれたので、 この効果
は大きいです」 と語っています。 トゥリリアム・オカダ・ファーム (北海道) で
もDMを実施し、 期間中に用意した粗品300個をお渡ししたといいますから、 それ
だけDMを送ったお客さんが来てくれたことがわかります。 

 販売だけでなく、 畜産についての関心を持ってもらうためにも、 リピーターを
大切にしたいと思います。 

 このようなことは、 田口さんをはじめとする東武百貨店の方々から、 出展者に
助言いただいたことです。 

● ご協力ありがとうございました

 今回のフェアで販売したものは、 毎日、 食べるもの飲むものとしては、 決して
安価な物ではありません。 一般に出回っている大量生産の製品とは異なり、 生産
者が各々の考え方に基づき、 違った価値の付加を試みているのです。 毎日、 高級
和牛を食べる人もいないし、 牛乳はスーパーで1リットル200円で売っているの
に、 2倍3倍の価格で買ってくれることを期待して続けるには相当の覚悟も必要
です。 その意味でこのフェアは、 直接的に畜産物の需要量拡大に結びつくだけで
なく、 畜産物のファンを増やす、 消費の幅を広げるといった面から、 需要の増進
に役立つと考えうるものです。 

 関係者の懸命な努力にもかかわらず、 食料自給率が年々低下しています。 しか
し、 食品については 「安全」 「安心」 がキーワードになっている昨今、 私たちは、 
作る側 (生産者) と買う側 (消費者) をつなぐ機会を今後とも提供していけるよ
う努力したいと思います。 その結果、 全国各地で 「こだわり」 の畜産物を生産し
ておられる方々への支援になり、 微力ながら畜産業の発展に寄与できれば幸いで
す。 

 ともあれ、 今回のフェアが無事終了できましたことは、 ご来場いただいたお客
様のほか、 都道府県、 出展者、 東武百貨店等関係者のご理解とご協力があったか
らです。 本当にありがとうございました。

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