◎地域便り


受精卵移植に弾みがつくか

宮崎県/奥平 与志子
 宮崎県では、 平成元年から受精卵供給センター整備事業に取り組み、 平成2年
に宮崎県優良家畜受精卵総合センターを設立し、 今日まで、 良質な受精卵を農家
に供給し、 受精卵移植技術の向上と速やかな普及定着に努めてきた。 同年11月か
ら農家へ受精卵の供給を始めたが、 これまで、 凍結受精卵を移植する場合、 受精
卵総合センターや家畜保健所でステップワイズ法により、 4種類の希釈液で段階
的にグリセリン (凍結保護剤) 除去を行う必要があり、 手間がかかりすぎていた。 
そこで、 供給方法、 移植方法を簡素化できないかと検討してきた結果、 簡易移植
法の 「宮崎シンプル法」 を開発し、 平成7年度から実用化している。 この方法は、 
しょ糖 (凍結保護剤の除去剤) 層とグリセリン層の間の空気層 (凍結の際の膨張
に対処するため) を凍結前に除去しているため、 融解操作の簡易化が図られ、 凍
結精液のストローと同じように、 農家の庭先での融解、 移植が可能になった。 ま
た、 この方法で平成7年度735頭に移植、 396頭が受胎し、 53.9%の受胎率になっ
た。 前年度の受胎率、 51.3%に比較しても良好な成績をあげている。 

 なお、 この畜産試験場で考案された宮崎シンプル法はほ乳動物胚の凍結保護物
質の簡易除去法として、 平成8年11月に特許庁から特許登録が承認されている。 

 以上が、 宮崎県における受精卵移植のあらましであるが、 このほど小林市の小
林地域家畜市場で開かれた1月期子牛競り市で、 市受精卵移植推進協議会 (会長
堀泰一郎市長) が出品した黒毛和種雄子牛 「ともな」 が3,477,280円の高価格で
競り落とされた。 

  「ともな」 は、 同協議会のドナー (供卵) 牛 「ともこ」 を一般の人工受精によ
り出産させ、 市営牧場で育てていたもの。 父は、 県の種雄牛 「安平」。 17日に開
かれた西諸県 (にしもろがた) 郡市品評会のチャンピオンでもあり、 競り前から
高値が予想されていた。 大久津強課長は 「和牛の品質向上のため市外に出したく
ないとの意識もあったと思う。 受精卵移植で生まれた牛ではないが、 ドナー牛の
優秀さを証明した形になった。 まだ普及率が一割程度の受精卵移植にも弾みがつ
くのでは」 と話している。

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