◎調査・報告


年齢によって大きく異なる畜産物の摂取量 −国民栄養調査から−

企画情報部 安 井   護


 年齢によって、畜産物の摂取量(消費量)がどのように異なっているのか。よ
く言われる、「若年層は肉を好み、中高年層は魚を好む」というのは、本当だろ
うか。平成7年に実施された厚生省「国民栄養調査」(9年9月公表)では、初
めて年齢別の摂取状況等を調査している。この結果から、日本人の食生活の状況
と畜産物の摂取状況を見てみる。

 国民栄養調査は、栄養改善法に基づき、「国民の食品摂取量、栄養素等摂取量
の実態を把握すると同時に栄養と健康との関係を明らかにし、広く健康増進対策
等に必要な資料を得ること」を目的として、毎年、行われている。


国民栄養調査とは

 今回公表された国民栄養調査の実施方法は次のとおり。

実施時期:平成7年11月の特定の1日
対象:全国の約5,000世帯、約15,000人

1)身体状況調査−各世帯員の身長、体重、血圧等の測定

2)栄養摂取状況調査−世帯員別の食物摂取状況等の調査

    食事状況(家庭食・外食・欠食)、食物摂取状況、料理名、使用量、廃棄量、
    世帯員ごとの案分比率

3)食生活状況調査−15歳以上の世帯員の食品摂取量に対する自己評価等


摂取エネルギーは、減少傾向から同水準へ

 国民1人1日当たりのエネルギー摂取量は、減少傾向にあったが、ここ数年は
ほぼ同水準となっている(図1)。平均栄養所要量に対する充足率は102%と
適正摂取レベルにある。

◇図1:摂取エネルギーの推移◇

 摂取エネルギーの食品群別摂取構成を見ると、米類の減少は著しく、昭和50
年に39.2%であったが、平成7年には30%を割っている。一方、動物性食
品からの摂取は増加している(図2)。

◇図2:エネルギーの食品群別摂取構成◇


牛乳・乳製品からの摂取が多いカルシウム

 1人1日当たりの摂取量が平均栄養所要量を下回っている栄養素は、カルシウ
ムだけである(充足率97%)。

 カルシウムの食品群別摂取構成比を見ると、牛乳・乳製品からの摂取が、最も
多く、全体の3割弱にまで増加している(図3)。一方、穀類、豆類、海草類、
魚介類からのカルシウム摂取割合は減少してきている。

◇図3:カルシウムの食品群別摂取構成比◇


性別・年齢別の摂取量

米類:年齢での大きな差はない

 米類の摂取量は、全年齢層で男が女より多い(図4)。

◇図4:性別・年齢別 米類摂取量◇

 15歳以上では、男女とも年齢層によって大きな差はないが、女は年齢ととも
に、摂取量が少しずつ増加している。

魚介類:中・高年層が多い

 魚介類の摂取量は、各年齢層とも、男が女より多いが、20〜29歳まで、そ
の差は小さい(図5)。しかし、30〜39歳以降、男の摂取量が大きく伸びて
いくのに対し、女は増加はするものの、その伸び率は小さくなっている。

◇図5:性別・年齢別 魚介類摂取量◇

 ピークは、男女とも、50〜59歳となっている。

肉類:若年層が多い

 肉類の摂取量は、各年齢層とも、男が女より多い(図6)。

◇図6:性別・年齢別 肉類摂取量◇

 ピークは、男女とも、15〜19歳で、その後は年齢とともに減少している。
 年齢とともに増加している魚介類とは、対照的である。しかし、これが、「年
をとれば肉よりも、魚を好む」ことを示すと考えるのは短絡的であろう。現時点
での高齢者は、過去に、肉類の摂取量が少なく、その分魚介類を比較的多く摂取
する消費生活を送ってきたからである。

 今後、注目すべき点は、現在、肉類消費の多い15〜29歳の層が、加齢して
も、同じパターンにとどまるのか。それとも、魚介類が多くなる従来型の消費パ
ターンに変化するのかである。

参考:子供・青年期に形成された飲食の習性は、加齢にかかわらず維持されると
   いう「コーホート効果」について、食肉消費を対象とした調査研究(専修
   大学森教授他)が弊誌9年11月号に掲載されている。

肉の摂取量はちょうどよい

 この点について、2大動物性タンパク源である魚介類と肉類の摂取量に関する
自己評価を比較すると、日本人が今後、どのような消費パターンをとるのか、考
えさせられる。

 肉の実摂取量については、若年層と高年層とで約2倍の差があるが、摂取量に
ついての自己評価では「ちょうどよい」が、各年齢層で、6割以上を占めている
(図7)。一方、「多くした方がよい」は12〜16%、「減らした方がよい」
は9〜16%と、それぞれほぼ同じような割合となっている。

◇図7:肉の摂取量に対する自己評価◇

 魚については、摂取量の少ない若齢層が「多くした方がよい」と答えており、
その割合は、30〜39歳までが、約4割と高くなっている(図8)。逆に「減
らした方がよい」は、各年齢層とも2〜3%と少なく、肉とは対照的である。

◇図8:魚の摂取量に対する自己評価◇

 これらの自己評価が、すぐに消費行動に結びつくかどうかは分からないが、若
齢層は、相対的に多く摂取している肉については「ちょうどよい」と評価し、摂
取量が少ない魚を「多くした方がよい」としている点は、興味深い。

牛乳・乳製品:学童期が大きなピーク

 牛乳・乳製品の摂取量は、年齢層によって大きな特徴がある。

 学校給食等の飲・食用機会の多い7〜14歳がピークで、その後は、大きく減
少し、20〜29歳以降は大きな変化がない(図9)。15〜19歳までは、男
が女より多いが、それ以降は、わずかながら女が男よりも多いのが、前記の品目
と異なる牛乳・乳製品の特徴である。

◇図9:性別・年齢別 牛乳・乳製品摂取量◇

 摂取量に対する自己評価では、20〜29歳から50〜59歳までの実摂取量
の少ない年齢層で、5割前後の人が「多くした方がよい」と答え、「ちょうどよ
い」を上回っている(図10)。各年齢層とも「減らした方がよい」は1〜2%
とわずかである。

◇図10:牛乳・乳製品の摂取量に対する自己評価◇

資料:平成9年版国民栄養の現状、平成7年国民栄養調査成績
 注:摂取量に対する自己評価の調査は、15歳以上を対象に行われている。

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