◎地域便り


「山形牛」の一大産地誕生

山形県/枝松 良晃


 山形県尾花沢市は、民謡「はながさ音頭」の発祥地として、また、NHK 連続テ
レビ小説「おしん」の舞台となった「銀山温泉」として知られている。冬期には
積雪1.5m にもなる大変厳しい気象条件の地域である。ここで、肉用牛(黒毛
和種)を1千4百頭飼養して頑張っている「(有)スカイファームおざき」を紹
介する。

 当地域の農業は、米を主体に寒暖の差の大きい内陸的気候を利用したスイカの
栽培が盛んで、その産地ともなっている。しかし、数年毎に夏の偏東風(ヤマセ)
による被害が発生することなどから、尾花沢市では気候に左右されない安定した
作目として畜産部門を重視し、特に肉用牛の振興を図っている。

 市内の肉用牛は、現在、飼養戸数40戸飼養頭数4千頭(繁殖牛245頭、肥
育牛3,755頭)となっている。将来的にはこれを6千頭まで拡大することを
目標に、平成8年度から国の「畜産基盤再編総合対策事業」に取り組み、肉用牛
生産基盤の強化を図っている。この事業は、平成10年度までを事業期間とし、
草地造成や道路整備、畜舎、家畜ふん尿処理施設整備などで事業総額は16億6
千万円となっている。

 この事業の参加者の中心である(有)スカイファームおざきの社長、尾崎勝さ
ん(48歳)は、父親が家畜商に従事していたことなどから、家畜に触れる機会
も多く、自然に肉用牛経営に取り組むようになった。

 昭和56年度、国の肉用牛振興施設整備事業により、仲間5人とともに「長根
山肥育牛団地」を作り平成元年度に450頭まで規模拡大を図り、経営は極めて
順調に経過してきた。しかし、肉用牛経営を取り巻く環境が一段と厳しくなった
ことから、それらを乗り切るためにはどのようにしたらよいか、後継者がゆとり
をもって楽しく働くにはどのようにしたらよいのか、仲間とともに真剣に話し合
い、平成8年度には、尾崎氏自らも従来の個人経営から法人経営にするなど、大
規模肉用牛経営を目指した。

 平成8年度から参加した畜産基盤再編総合事業により新たに牛舎2棟(1棟5
00頭規模)やその周囲の草地造成、用水、道路、家畜ふん尿処理施設など主要
部分がようやく完成し、去る2月25日に落成式が挙行された。飼養規模1,4
00頭は、県内一の経営体となる予定である。この中で、尾崎さんも「地域の活
性化と山形牛の生産のために頑張りたい」と挨拶をし、会場から大喝采を受けた。

 現在、牛舎も満杯状態で事故もなく肥育も順調で、高品質「山形牛」(山形県
内で生産出荷され、格付等級A5、A4、A3、B5の肉用牛のブランド名「みちの
く特級品総称山形牛」として関東関西方面に出荷され好評を得ている。)の一大
生産基地として大きく期待されている。


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