◎地域便り


乳用雄子牛肥育の“草分け”

広島県/仙波 豊三


 ふるさとひろしま21世紀村づくり塾(塾長竹下彪:JA広島県経済連副会長)
が農業農村活性化シリーズとして「むらの指導者」という小冊子を印刷配布して
いるが、その2冊目に中山伯男氏が登場した。

 中山氏は、広島県の東部、福山市で株式会社なかやま牧場及び農事組合法人中
山畜産農場などの代表として、全体で常時4,700頭の肉用牛を飼養し、食肉
の加工販売をする経営主である。

 「むらの指導者、中山伯男−その人生と実践−」は、その中山氏と竹下氏との
対談の中で、中山氏の生い立ちから現在に至る経緯をつぶさに紹介したものであ
る。

 彼の並はずれた経営手腕で、いかなる困難な時代にも積極戦略をもって克服し、
経営の拡大・発展を続けてきたことは誰もが注目しているところであり、その間
の彼の考え方、行動、経営方針には興味を引かれるものがある。

 彼の経営戦略で忘れてはならない点がいくつかある。

 その1は昭和40年2月に乳用雄子牛の肥育経営を始めたことである。当時は、
資源としては注目されながら、いまだこれを本格的に経営に取り入れ軌道に乗せ
た者は他になく、その成果は全国的に関心を集めたことである。

 その2は、昭和44年6月に、直営の食肉販売店を開いたことである。

 この生産から加工・流通販売までの一貫経営は、その途中で発生するリスクを
経営全体で吸収するという発想で、思いつく者はあっても実行するには困難な時
代背景があった。これを行動に移した点で、それまでの畜産農家とは全く異なる
資質には今更ながら敬服させられる。

 この経営戦略は、今も継続しており、消費者ニーズに合った牛肉生産というこ
とで、販売店の発展も目を見張るものがある。

 また、牧場の周辺には、農事組合法人の構成員であった5人の仲間がそれぞれ
200〜300頭の乳用種肥育経営で自立し、地区全体として一つの肉牛団地を
形成し、彼はそのリーダーでもある。まさに村の指導者なのである。

 このような中山氏のバイタリティあふれる経営者としての魅力もあり、2月2
5日に開かれた「むらの指導者」出版記念パーティには、畜産関係者は勿論、行
政・団体の指導者126名が相集い、彼の未だ衰えぬ姿に賞賛を惜しまなかった。
【加茂農場の全景】
   
【斜面を活用した牛舎】

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