北海道/江幡 春雄
北海道の北部、幌延町に良質粗飼料の給与を主体にした「ゆとり酪農」を目指 す酪農家がいる。その人は、新野邦夫さん(49)。牧草地59.3haを所有し、乳牛 110頭(うち搾乳牛50頭)を飼育している。 新野さんは、昭和51年に幌延町農協を退職し、離農跡地を取得して乳牛20頭か ら酪農経営を始めた。最初の5、6年は失敗続き、冠水した牧草をサイロに詰め て、乳牛が下痢の連続だったこともあった。 様々な失敗から、酪農経営には良質粗飼料(サイレージ、乾草、放牧など)の 確保が最も大切だということを学んだ。 昭和62年には、生産コストの低減と労働の軽減を目指して、ペレニアルライグ ラス主体(放牧に適した草種)の放牧地をつくった。当時あまりみられなかった 集約放牧を始めたのも地域では一番早い。 現在は、 5 月〜10月の間、搾乳牛50頭を、 8 つに区分した11.7haの放牧地に 放し、1 日ごとに草地を変えている。草地のローテーションによって、常に栄養 価の高い草を与えることができる。また、放牧によって乳牛の健康が保たれ、乳 量は順調に伸び 1 頭当たり9,000kgを超えるまでになった。 平成8年には、北海道草づくりコンクールで最優秀賞を受賞するなど、高生産・ 低コスト経営は高く評価されている。 新野さんは、経営のモットーとして次の 4 点を強調する。 ・どんな時代も粗飼料を中心とした「牛飼い」。 ・無駄な投資は避け、本当に必要なものだけ整備する。 ・「健土、健民」(酪農学園創立者黒沢酉蔵の言葉)の教えを守る。 ・健康第一で、過重労働はさける。 そして、常に消費者を意識し「土・草・牛づくり」を基本に、生活環境の整備 も心がけ「ゆとり・豊かさ・夢」のある酪農経営を目指して頑張っている。
【集約放牧でゆとり酪農を目指す新野さん夫妻】 |
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