◎地域便り


酪農家の手作りアイス工房

神奈川県/川西 隆智


 神奈川県西部の小田原市は、古くから酪農業の盛んな地域であるが、昨今の市
街化、混住化の進展に伴い、その数は年々減少している。10年2月現在、酪農家
29戸で約760頭の乳用牛が飼養されている。

 その中心集落である山西、上町の酪農家3戸が、農事組合法人「小田原牧場ア
イス工房」を組織化し、梅の主産地である小田原市曽我に、今年2月、手作りア
イス工房を開店した。

 これは、農林水産省の平成9年度畜産物加工施設整備事業を活用し、県、市の
補助も受けて、総事業費55,000千円、補助率 2 / 3 で加工販売施設、製造機器
及び運搬用冷凍車を整備したものである。

 建物は小田原梅まつり会場に近い梅林の中、曽我の青梅をイメージしたグリー
ンの屋根、ログハウス調の 2 階建て(116m2)で、1階を加工場兼販売施設、2
階を事務室兼倉庫としている。2階天井まで吹き抜けた販売エリアは開放的で広
々とした印象を与えている。窓からは梅林越しに箱根連山と富士山の迫力ある姿
が望むこともできる。

 加工販売されるのは低カロリーのイタリアンジェラートで、酪農家3戸から毎
日搾られる新鮮生乳を原料に、地元産の梅、柑橘類、いちご、ブルーベリー等を
加えたフルーティーな香りのする製品を毎日15種類以上製造している。地域の消
費者はもちろん、曽我梅林を訪れる観光客、県道を走るドライバー等を対象に年
間18万人の利用者を見込んでいる。

 ここの特徴は、その味に惹かれたリピーターの多いことで、知人を連れての再
訪が目立っている。イベントへの参加、メディアを利用した広報活動等積極的な
集客を図っており、特に休日には 11日1,500人前後が訪れている。

 後継者不足、環境問題など厳しい畜産環境の中で、販売という新しい分野を切
り開くこの事業が、今後の酪農経営の活性化を図る足掛かりとなれば、地域の畜
産に与える影響は大きいものと期待される。

【来店者の絶えない、小田原牧場アイス工房】
   

【地元の梅、柑橘類、いちごなどを加えた製品が並ぶ】

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