福島県/桝沼 浩
「まさかこんなに売れるとは…」と驚きと喜びを隠せないのは、福島県本宮町 の福島県食肉事業協同組合青年部「郡山食肉三水会」会長の菊地弥さん(46)。 その驚きの売れ行きを誇っているのが、県内産牛肉を原料として同会で開発した、 中華まんじゅう「福島牛入りべこまん」。菊地さんは、昭和45年に高校を卒業後、 養豚場や食肉店に勤務。その後、昭和56年に独立し、食肉店を開店した。現在は ミートブティックキクチの社長と郡山食肉三水会の会長として多忙な日々をおく っている。 郡山市を中心とする食肉店の若手経営者で組織されている郡山食肉三水会でオ リジナル商品開発の声があがったのは、平成7年頃のこと。「今までのように慣 例的な行事による、活動のパターン化を打ち破り、小売店が元気を取り戻すこと をやろう」という発想だった。 そのころブームだった「豚まん」をヒントに牛肉入り中華まんじゅうを作るこ とに決定した。しかし、まんじゅうに対する知識が乏しかったため、パン組合や 酒造組合の青年部と勉強会を開き、21人の会員が意見を出し合い製品化を模索し た。また、本場の中華まんじゅうを求め、横浜の中華街や神戸などへ研修に行っ たり、料理研究家やホテル料理長など専門家の指導も受け、本物を目指してきた。 「なぜ肉屋がまんじゅうを」、「本当に売れるのか」という声をよそに、会員 たちは日々の仕事の傍ら夜遅くまで開発に携わってきた。開発に当たっては、県 から地域資源等活用型起業化事業の補助金を受けることができた。20種類以上の 試作を繰り返した結果、具材の5mm角の牛肉、タマネギ、エノキダケには県産品 にこだわった。オリジナルブレンドの焼き肉のたれで味付けをし、福島県ハイテ クプラザが開発した「うつくしま夢酵母」入りの日本酒で風味付けをした。仕上 げに「福島牛」の焼き印を押し、福島県産である特色を出した。 平成10年 3 月 1 日、会員それぞれの苦労と思いが、ぎっしりと詰まった1個 110gの「べこまん」がついに完成をみた。 商品の発表は、福島県知事を交え、盛大に開催された。現在、会員の食肉店を 中心に販売されているが、各方面から問い合わせが殺到し、予想外の好調な売れ 行きにうれしい悲鳴を上げている。 郡山食肉三水会一同は、「どうしたらお客さまが喜ぶか。それだけを考えて夢 中でやってきた。食肉店の目玉商品として、お客さまが喜んでくれて、お客さま を呼び戻すことができれば。新商品の第 02 弾開発もやってみたい」と夢を膨ら ませている。元のページに戻る