◎地域便り


県内最大のふん尿処理施設が完成

静岡県/小柳 謙司


 伊豆半島の玄関口に当たる静岡県東部の函南町丹那地区に、乳用牛1,000頭規模
のふん尿を処理する県内最大の施設が完成した。

 本地域の酪農は、非常に歴史が古く、現在64戸で2,384頭の乳用牛が飼養され、
町の農業粗生産額の37.7%を占める基幹作目となっている。また、函南東部農協
が牛乳処理プラントをいち早く整備し、生産から販売まで一貫した体制で、「丹
那牛乳」のブランドとして県内外に販売している。

 そのため、酪農後継者も順調に育っており、規模拡大への意欲も旺盛で、将来
に渡って本県酪農の中心となりうる地域である。

 しかし、近隣で別荘地等の開発が進み、家畜ふん尿処理が大きな問題になると
懸念されたため、平成6年度から函南町が事業主体となって、団体営畜産経営環
境整備事業に取り組んできた。本事業の総事業費は、672,692千円、事業参加農家
は16戸である。草地整備3.6ha、施設用地1.5ha等の基盤整備のほか、発酵処理施
設 4 棟 3,379m2、 2 次発酵槽 1 棟800m2、堆積場 1 棟 468m2、製品倉庫 11棟 
278m2、水分調整場 1 棟 174m2、管理棟 1 棟 41m2、運搬機械等6台(袋詰機含)
の施設整備を行った。

 施設の管理には、町から委託を受けた函南東部農協が職員を派遣して行ってお
り、年間1,935tの製品を生産し、うち1,271tを地域の耕種農家へ販売すること
としている。残り664tは、参加農家の草地(66ha)に尿とともに還元する。処理
量約22,000tに対して製品生産量が少ないと感じる方が多いと思うが、一次発酵
終了後、水分調整用の戻し堆肥として利用することとしている。

 本施設の完成で、ふん尿処理に苦慮することなく、飼養改善に力を注ぎ、良質
生乳の生産に拍車がかかると期待されている。

 また、昨年 9 月、この地区に函南東部農協を中心とした第 3 セクターによる
酪農王国「オラッチェ」が開国、チーズ工房、ビール工房、ジャム工房等の施設
ができ、終日観光客でにぎわっている。今後も地域をあげて一層の環境整備と良
質生乳生産に努めることとしている。

 

【静岡県最大のふん尿処理施設】

 

 
【堆肥の袋詰め機】

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