◎地域便り


乳質改善の努力が生んだ「おいしい牛乳」

兵庫県/真野 文夫
 安全で衛生的な食品へのニーズが高まり、乳製品業界でも対応が本格化してい
るが、ここ、兵庫県明石市では酪農家自らが乳質改善に取り組み品質の良い牛乳
を生産している。ブランド名は低温殺菌牛乳「おいしい牛乳」で、平成9年暮れ
から近畿各地のスーパーで販売され好評を得ている。

 この明石市酪農組合は、子午線の通る街明石市にあり、組合員17戸、乳牛飼養
頭数450頭。都市化が進んだため農村部への移転や廃業を余儀なくされるなど、戸
数、頭数とも減少してきた。

 「乳質改善指導」といえば、行政や乳業メーカーからというのが相場。指導が
行われれば一時的に良くなるが、ゆるめられると元に戻ることもしばしばである。

 ところが、彼らの取り組みは違っていた。自分たちの搾る牛乳、出荷する牛乳
は美味しいもの、安全なものにしたい。この気持ちが改善活動を積極的にし、組
合員自らの手で乳質改善を行うこととなった。

 それは、メーカーから送られてくる乳質検査書を個人別に返さずに、全員の検
査結果を一覧表として渡すというもの。当然、乳質の悪い人は恥ずかしいし、改
善への努力をせざるを得なくなる。そして、これに対して他の組合員や役員がお
互いの改善方法を教え合ったり、叱咤激励する。いわゆる自主管理の体制が功を
奏し、全員の乳質が向上した。

 この組合の乳質の年間平均は、無脂固形分率8.6%、乳脂率3.8%、体細胞数13
万個、細菌数6.8万個で、兵庫県ではトップクラスである。「一度飲んでみたい」
と要望や問い合わせが殺到している。


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