◎地域便り


大型酪農がチャレンジした創意工夫

鳥取県/山崎 和夫
 鳥取県の中央部、倉吉市の玄関口から南へ6kmの黒ボク畑(火山灰土壌の畑)か
らなる久米ヶ原台地。
 その一角に県下屈指の酪農を営む武本牧場がある。経産牛115頭、育成牛70頭、
飼料畑 8 haを本人(37)、妻、父(64)、母、雇用 1 人(県立酪農大学校卒業
の女性)の計 5 人で管理、日量3.3トンの牛乳を出荷している。
 武本さんがフリーストール・ミルキングパーラーの建設を思い立ったのは、平
成7年2月、脊髄を患い入院中のこと。以前の作業方法では腰を痛めた体に、重
いミルカーを抱え移動することは至難の業である。
 労働加重負担の問題が脳裏からはなれず、退院後、畜舎建設に着手。平成8年、
128頭収容可能なフリーストール、80頭ダブルのヘリンボーン型ミルキングパーラ
ーを完成した。
 当牧場には数々の創意工夫が見られ、地元工業高校出身らしい武本さんのアイ
デアが輝いている。

1 牛床には1,000本を超す古タイヤと粘土を敷き詰めてあること。ソフトなクッ
 ションとなり、牛に与えるストレスが少ない。特に足の膝が腫れ膿を持つよう
 な牛は無くなったという。

2 戻し堆肥の方式を採用していること。畜舎から堆肥舎に運んだ牛ふんに、オ
 ガクズ、モミガラを混合、強制的に空気を送り(エアレーション)、2〜3カ
 月間発酵熟成させる。その間10日おきにフロントローダーで切り返しをする。

  エアーレーションのため発酵温度も80℃前後まで上昇、大腸菌、ウイルス、原
 虫が死滅、堆肥中の有用菌だけが繁殖するためか、この堆肥をリサイクルして
 から、乳房炎の発生が少なくなったという。

3 繁殖管理ボードをフルに活用していること。飼育中の牛1頭ずつ種付け、分
 娩、乾乳など子細に分析、把握し、適切な繁殖管理をやっている。

  このボードで400頭まで管理可能とのことで、武本牧場は平均分娩間隔は約38
 0日で良好な成績を上げている。

4 バンカーサイロを使った良質で低コストのサイレージを給与していること。
 バンカーサイロは 6 基あり、1基で 2 カ月間、 1 日600kg給与しており、サ
 イレージの製造には大満足の様子であった。

  武本さんは、今後とも次から次に創意工夫をこらし、安定的な酪農経営を確
 立し、地域の先導的役割を果たすよう期待されている。


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