◎地域便り


「飛べない鳥」に夢を託して

宮崎県/内村 博


 9年10月、宮崎県日南市に16羽の「トリ」がやって来た。体高 2 m、体重100
kgの巨体にもかかわらず、柵の中を軽やかに走り回っている。

 市と農協(JAはまゆう)で運営している「日南市ダチョウ協議会」で、「21
世紀の家畜」と注目し、中山間地域活性化推進事業によりダチョウを飼育し始め
て 7 カ月が過ぎた(途中、病気とケガにより 2 羽が死亡。)。現在では、体高
2.5m、体重120kg程に成長し、市農政課の職員で「ダチョウ倶楽部」を結成し、
毎日交代で世話を続けている。

 日南市がダチョウ飼育に力を入れる背景には、牛肉の輸入自由化や飼料の高騰
などにより、当市の農業粗生産額の実に46.2%(96年度)を占める畜産業界の不
振がある。このような状況の中、牛や豚に代わるものはないかと模索していた時
に目に留まったのが、ダチョウ導入のきっかけである。

 今後の生産体制は、 5 カ年計画で50ペアを目標としており、 2 千個の卵が生
産される予定。仮に、孵化率 8 割、育成率8割とした場合、1,280羽の出荷が見
込まれ、57,600kgの肉が生産されるとすると、生産額は1億円を超える。肉はヘ
ルシーで、脂肪は牛肉の1/16、鶏肉の1/30と少なく、コレステロールも牛肉、
鶏肉よりも少ない。また、肉以外の利用価値もある。羽は静電気を持たず、自動
車やコンピューター等精密機械の清掃用製品となり、皮はワニ皮と同等の品質と
して評価され、柔らかい製品ができるという。

 飼育方法や活用法など未知数の部分が多く、課題も多いものの、ダチョウ協議
会を通じて販売ルートや病気の予防等、調査・研究を進めていき、低迷する畜産
業の「救世主」として脚光を浴びる日も近いと確信している。

【「ダチョウ倶楽部」の世話ですくすくと成長】

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