青森県/三村 葉子
「豊かな森と湖の町から」十和田湖和牛ののぼりが京都市内のスーパーに並ん でいる。 平成 9 年 5 月、牛肉消費の本場である関西で、東北地方の産地としては初め て青森県のJA十和田湖が銘柄牛の販売を開始した。現在では京都、大阪の21の販 売指定店(小売店・料理店)で、松阪牛や神戸牛、近江牛といった高級ブランド に引けをとらない売れ行きを見せている。
【「豊かな森と湖の町から」十和田湖和牛ののぼりが京都市内のスーパーに並ぶ】 |
JA十和田湖は、全国的に有名な観光地、十和田湖や奥入瀬渓流のある青森県上 北郡十和田湖町(和牛生産農家175戸)にある。八甲田山系の台地に広がる公共牧 場を活用した黒毛和種の子牛生産が盛んで、県内で最初に「和牛改良組合」を設 立するなど、和牛改良に熱心な地域としても知られている。肥育技術においても 県内トップクラスの実績を持ち、JA十和田湖を中心に関係者が一丸となって「和 牛の里」づくりに取り組んでいる。 昭和61年当時、JAと肥育農家からなるJA十和田湖肥育牛部会を中心に、将来の 牛肉輸入自由化対策として、和牛の品質を高め、地域一貫体制を目指していくこ とを確認した。平成2年には、高品質牛肉生産対策事業をスタートさせ、町やJA からの助成で肥育試験や指導を行うなど、地域一体となった和牛生産に取り組ん できた。平成4年には町独自の肥育マニュアルを作成し、徹底した飼養管理技術 の向上に努めてきた。 その結果、各種枝肉共励会でA 4 等級以上が9割と好成績をあげるなど、十和 田湖和牛の県内外での評価が年々高まり、平成 9 年 4 月、十和田湖和牛販売促 進協議会を設立し、同年5月から関西向けの銘柄販売を開始した。現在、月平均 40頭前後を出荷しており、年間約500頭を販売している。 舌の肥えた関西の消費者を相手に、有名ブランドに対抗するためには、十和田 湖和牛の肉質とともに、十和田湖の豊かな自然とその清新なイメージが大きなセ ールスポイントになっている。 今後は牛肉銘柄(ブランド)としての条件である、定時・定量・定品質を確保 するため、肥育マニュアルを実践できる農家を広げて、十和田湖和牛の生産拡大 を進めていきたい。 さらなる産地間競争の激化が予想される中で、あおもり十和田湖和牛は全国の 和牛銘柄のトップブランドに挑戦し、生き残りをかけている。