◎地域便り


銘柄和牛市場に新規参入

青森県/三村 葉子


 「豊かな森と湖の町から」十和田湖和牛ののぼりが京都市内のスーパーに並ん
でいる。
 平成 9 年 5 月、牛肉消費の本場である関西で、東北地方の産地としては初め
て青森県のJA十和田湖が銘柄牛の販売を開始した。現在では京都、大阪の21の販
売指定店(小売店・料理店)で、松阪牛や神戸牛、近江牛といった高級ブランド
に引けをとらない売れ行きを見せている。

【「豊かな森と湖の町から」十和田湖和牛ののぼりが京都市内のスーパーに並ぶ】
 JA十和田湖は、全国的に有名な観光地、十和田湖や奥入瀬渓流のある青森県上
北郡十和田湖町(和牛生産農家175戸)にある。八甲田山系の台地に広がる公共牧
場を活用した黒毛和種の子牛生産が盛んで、県内で最初に「和牛改良組合」を設
立するなど、和牛改良に熱心な地域としても知られている。肥育技術においても
県内トップクラスの実績を持ち、JA十和田湖を中心に関係者が一丸となって「和
牛の里」づくりに取り組んでいる。

 昭和61年当時、JAと肥育農家からなるJA十和田湖肥育牛部会を中心に、将来の
牛肉輸入自由化対策として、和牛の品質を高め、地域一貫体制を目指していくこ
とを確認した。平成2年には、高品質牛肉生産対策事業をスタートさせ、町やJA
からの助成で肥育試験や指導を行うなど、地域一体となった和牛生産に取り組ん
できた。平成4年には町独自の肥育マニュアルを作成し、徹底した飼養管理技術
の向上に努めてきた。

 その結果、各種枝肉共励会でA 4 等級以上が9割と好成績をあげるなど、十和
田湖和牛の県内外での評価が年々高まり、平成 9 年 4 月、十和田湖和牛販売促
進協議会を設立し、同年5月から関西向けの銘柄販売を開始した。現在、月平均
40頭前後を出荷しており、年間約500頭を販売している。

 舌の肥えた関西の消費者を相手に、有名ブランドに対抗するためには、十和田
湖和牛の肉質とともに、十和田湖の豊かな自然とその清新なイメージが大きなセ
ールスポイントになっている。

 今後は牛肉銘柄(ブランド)としての条件である、定時・定量・定品質を確保
するため、肥育マニュアルを実践できる農家を広げて、十和田湖和牛の生産拡大
を進めていきたい。

 さらなる産地間競争の激化が予想される中で、あおもり十和田湖和牛は全国の
和牛銘柄のトップブランドに挑戦し、生き残りをかけている。


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