◎地域便り


大学キャンパスで日本鶏を保存

福井県/井部 正興


 学校法人 金井学園 福井工業大学(福井市)では、平成5年から天然記念物
指定(昭和16年1月27日)の小国鶏が飼われている。日本鶏を大切に保存してい
きたいという総長の考え方から、現在、約50羽が、キャンパス内を散歩し、学生、
職員や訪問者の目を楽しませている。鶏舎は、4ヵ所に分散しており、すぐ隣に
は講義室や売店もある。しかし、散歩中の鶏をおどしたり、ふざけたりする人は
いない。鶏も心得たもので人を威嚇したり、飛びかかったりするようなことはな
く、悠々とかっ歩している。鶏の世話は大学の付属中学校、高等学校の養鶏クラ
ブが行っている。

 小国鶏は元来、中国の闘鶏であったが、容姿端麗典雅で、長尾性、長鳴性を有
するため、その子孫に多くの品種を産出した。世界の鶏種発達史上、稀にみる貴
重な品種である。日本へは、中国の寧波府昌国から渡来したと言われている。平
安時代には既に京都地方で飼養されており、平安4大絵巻の鳥羽僧正筆「鳥獣戯
画」や土佐光長が描いた「年中行事絵巻」に本鶏が描かれている。

 江戸時代に作出された尾長鶏、東天紅、声良等は本鶏を直接起源としたり、他
品種鶏との交雑により作られたものであると言われている。

 現在、日本古来の貴重な動物が減少していく中、当学園のように、公開しなが
ら、保存に努めている姿に、心強いものを感じる。
【キャンパス内を自由に散歩する小国鶏】
【養鶏クラブが世話をする鶏舎】

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