★ 事業団から


財布のひもが依然として固い消費者

企画情報部 安井 護




低迷状態の景気

 「景気は低迷状態が長引き、極めて厳しい状況にある」。

  9 月 8 日に経済企画庁が発表した月例経済報告は、景気が依然として厳しい
状況にあることを伝えている。特に、低調な個人消費については、「収入が減少
していることに加え、消費者の財布のひもが依然として固い」と、その要因を述
べている。

 ここでは、主要な統計から、最近の食料に関連する消費の状況を見てみる。な
お、増減は前年同月に対するものである。


減少する収入と支出

 総務庁「家計調査報告」によると、勤労者世帯の実収入(実質)は、10年5月
を除き、 9 年11月から10年 7 月まで連続して減少している。

 消費支出(全世帯、実質)も、 9 年11月から10年 7 月まで、9カ月連続で減
少している。特に10年3月は、前年が9年4月からの消費税率アップ前の駆け込
み需要で5.8%増加した反動から、5.7%の減少となった。

◇図 1  消費支出(実質、対前年同月増減率)◇


11カ月連続減少の食料支出

 消費支出の 2 割強を占める食料費は、9年 9 月から、11カ月連続で減少して
いる。

 内訳を見ると、肉類(生鮮肉、加工肉)と魚介類はいずれも、 9 年 9 月から、
11カ月連続で減少している。一方、乳卵類(牛乳乳製品、卵)は月によって増減
を繰り返してきたが、 6 月、 7 月と 2 カ月連続で減少している。

(注)品目区分は、家計調査報告による。

◇図 2  食料支出の内訳(実質、対前年同月増減率)◇


伸びる調理食品

 食料支出の中で、例外的に増えているのが、弁当、総菜等の調理食品で、この
ところ率は低くなったものの、一貫して増加している。食の外部化・サービス化
が進む中で、肉や卵等を料理の素材として購入するよりも、調理済みの食品を購
入する消費の傾向がよく表れている。

 一方、外食支出は、月によって増減はあるものの、減少傾向と言えよう。外食
総研調べの外食産業の 1 定点当たり売上高も、 9 年10月を除き、減少傾向にあ
る。

◇図 3  食料支出の内訳(実質、対前年同月増減率)◇


チェーンストアの販売額

 消費の動向をチェーンストア販売額(日本チェーンストア協会調べ)の動きか
ら見ると、 9 年 4 月から10年 3 月まで、12カ月連続で減少した後、10年 4 月、
5月と増加したが、 6 月、 7 月と再び減少している。

 販売額の半分を占める食品も同様の傾向を示している。食品のうち、生鮮品も
同様の傾向であるが、消費税率アップに伴う 9 年 3 月の駆け込み需要と10年3
月の反動の影響は、他の品目ほど大きくはなかった。

◇図 4  チェーンストアの販売額(対前年同月増減率)◇


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