◎地域便り


省力的で乳量もアップ、飼料共同生産の試み

岐阜県/平田 真人


 平成 8 年、岐阜県北部の高山市で、近在の酪農家 5 戸の出資により、飼料を
安価に省力的に供給することを目的に(有)マルチサービスが設立された。

 同社は、コンプリートミキサー、トラクター、ベールローダーを所有し、200頭
分のTMR(牛が必要とする飼料成分を適正に含んだ混合飼料)の調整・運搬を行っ
ている。また、廃業した酪農家の牛舎を利用して、出資者を含む周辺酪農家から
20、30頭の乾乳牛を集め、乾乳牛用の飼料の調整・給じも行っている。

 現在の運営は、雇用オペレーター1名が中心になっており、経営状況も良好で
あるが、利用農家に低コストの飼料を供給するため、売価は極力抑えていく方針
である。

 TMRは、濃厚飼料、コーン・グラスサイレージ、乾草類が主体。サイレージにつ
いても自給飼料生産組織である二つの牧野組合で共同生産することにより、省力
的で効率的な供給に努めている。

 設立から 1 年経過した段階での経営効果としては、

@ 個体乳量の増加(特に分離給与からTMR給与に変えた農家)
A 給じ作業の省力化(オペレーターがTMR調整、各農家まで運搬)
B 疾病率の低下(栄養バランスが良くなり、健康状態が改善)

などがあげられる。それ以上に、会社組織という性格を利用して、いろいろな「し
がらみ」にとらわれることなく、安くて、品質の良いところから飼料を購入でき
ること、また出資者同士の連携が深まったこと、さらに視察研修に訪れる人や関
連会社の人たちの数も増え、以前より広い範囲で情報が入手できるようになった
ことが、より大きな経営効果として表われてきている。

 今後、購入乾草価格の上昇など懸案事項もあるが、利用農家の経営改善のため
に、経営分析や飼料設計などをコンサルタントに委託して生産環境を整えるとと
もに、プロファイルテスト(血液性状分析)の継続実施により乳牛、特に乾乳牛
の栄養、健康及び繁殖管理の充実を図っていきたいと考えている。


元のページに戻る