◎地域便り


酪農経営で和牛の生産を

広島県/鬼塚 逸夫


 広島市の北部山間地帯で酪農を営む辰川祐司氏(41)は、昭和54年に県立農業
短大を卒業後、就農した。牛舎を新築し、草地造成等を行って希望に燃えてスタ
ートしたが、厳しい生乳生産調整のため、和牛2頭を導入し、以来、和牛繁殖用
牛を増頭して酪農との複合経営を行っている。

 酪農部門の規模拡大は地形的に限界があるため、酪農と肉用牛の長所短所を効
率的に組み合わせて、酪農専業経営以上の収入を上げるように努めてきた。酪農
については県下でも高い技術レベルの辰川氏も、肉用牛に関しては全くの素人で
あったが、人一倍研究熱心な氏は、積極的に新技術の導入を図り、肉用牛技術の
修得にそれほど多くの時間を要しなかった。今では、広島市畜産のリーダーとし
て、広島市畜産新技術推進協議会長を務め、活躍している。

 牧場の規模は乳用牛(経産牛)30頭、和牛繁殖牛10頭、育成牛(乳・和)10〜
15頭、飼料畑10haで本人と両親による経営である。

 昨今の畜産経営からみると決して大きいとはいえないが、乳肉両部門を上手く
組み合わせており、収益は県内の専業酪農家の平均を上回っている。

 ちなみに産乳成績(経産牛 1 頭当たり)は、年平均9,000kg以上、和牛子牛の
販売は、1頭当たり400千円前後で市場平均を上回る成績を維持している。

 平成9年度には、広島市の助成により、子牛育成牛舎を新設して、他の酪農家
が受精卵移植によって生産した和牛子牛の育成を始めた。和牛生産の意欲はます
ます高まっていくものと思われる。

 今後、受精卵を供給できるような優秀な繁殖和牛の増頭、乳用牛への和牛受精
卵移植により、収益を最大限に上げるシステム作りを目指したいと、さらなる意
欲を燃やしている。

【 牛舎全景
  (左端の白い屋根が広島市助成による育成牛舎)】

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