佐賀県/伊藤 裕子
佐賀県の酪農は、高齢化や後継者不足、乳価の低下などにより、飼養戸数、頭 数が減少し、生乳生産量が減少傾向にある。また、個々の経営においては、飼養 規模、1頭当たり乳量が全国平均を下回る水準にある。本県酪農経営の体質強化 を図るためには、1頭当たり乳量の増加や飼養規模の拡大が重要な課題となって いる。 このため、県では、まず、乳量の増加対策として、平成9年度に細霧送風シス テムを、県内23カ所にモデル的に整備した。 このシステムは、水又は消毒薬を牛舎内に霧状に散水・送風するもので、給水 用タンク、圧力ポンプ、噴射ノズル等で構成され、40頭牛舎で約1,500千円の事業 費となっている。これにより、牛体表皮の放熱効果による夏場のストレスを低減 し、牛舎内温度を低下させるなど乳量増加に大きな効果を発揮している。 10年度からは新たに、経営規模拡大の促進対策として、規模拡大の過渡期にあ る担い手を労働力の面から支援する「酪農担い手育成事業」を実施している。こ の事業は、UR農業合意実施期間の平成12年度までに、飼養頭数をおおむね5頭以 上増頭しようとする担い手が、酪農ヘルパーを利用し、各種畜産経営・生産新技 術研修会などへ参加した場合、ヘルパー料金の 2 / 3 を県と経済連で助成する ものである。 今後の酪農経営は、国際化の進展や、畜産環境問題などから、ますます厳しさ を増すことが予想される。佐賀県では、これら事業の実施を通じ、生乳生産量の 増加や飼養規模の拡大と併せて、高度な生産・経営技術の修得を図り、21世紀に 生き残れる収益性の高い酪農経営の育成を目指している。