山形県/枝松 良晃
年間350万人の観光客が訪れる山形県蔵王。その山麓で「楽農」を実践している のが(有)蔵王マウンテンファームの代表、山川喜市さんである。 山川さんは高校在学中から農業の大規模化や利益第一主義に疑問をもち、自給 自足や豊かな自然の恵みを受けた食生活というものにあこがれていた。それを満 たしてくれるのが酪農と考え、学習や研修を重ねて、昭和44年に父親から酪農経 営を引き継いだ。 その後、62年度に農業公社牧場設置事業によりフリーストール・ミルキングパ ーラー方式を導入し、成牛20頭までに経営を拡大した。採草・放牧地を8ha所有 しており、粗飼料は100%自給している。牛には無理をさせず、真冬でも放牧し、 健康な牛づくりを心掛けている。質のよい乾草を与え、ストレスのかからない飼 い方により、風味のある牛乳を消費者に提供できると考えている。 平成9年に息子さんが研修から帰って就農したのを契機に、チーズを豊富に使 ったピザやチーズケーキ、牛乳等を提供する軽飲食店をオープンし、長年の夢を 実現させた。同時に法人化し、経営の安定も図った。軽飲食店は山小屋風のカナ ディアンログハウスで、蔵王エコーライン(山形県上山市〜宮城県蔵王町)沿い にあるため、春の観光から冬のスキーシーズンまで1年を通じて来客が絶えない。 何回となく訪れる“お得意さん”も増えている。乳牛の飼養管理は息子さんに任 せ、本人は開店準備以来、店にかかりっきりとなっている。 また、山川さんはボランティア活動にも積極的に取り組んでいる。酪農体験の ため、地元はもちろんのこと都会からも園児や小・中学生、さらには福祉施設な どから年間1,000人ほどを受け入れ、好評を得ている。不登校生徒を酪農体験を通 して立ち直らせたこともある。 今後は乳製品加工施設を建設し、アイスクリームやヨーグルトなど自家ブラン ドの乳製品も製造・販売していく計画である。 酪農を通して自然や農業のすばらしさを消費者に伝えるため、山川さんの限り ない夢はまだまだ続く。
【手搾り実演、説明に熱が入る。】 |