群馬県/宮崎 美伯
群馬県の南西部に上野村という人口約1,600人の村がある。今から13年前に日航 機が墜落した御巣鷹山を有する村である。 この村で高品質たい肥を製造するため、国の山村振興等特別対策事業を活用し、 堆肥処理施設が建設された。この事業の目的は、未利用資源を活用して堆肥を製 造し、総合的な土づくりを展開しながら、消費者ニーズにあった安全でおいしい 農産物生産をすることにより、地域の農業振興を図ることである。本事業の事業 費は4億9千万円であり、その管理運営は村が行う。昨年12月に試運転を行い、 今春からの本格稼働を目指している。 堆肥の原料となるのは生ゴミをはじめ、イノブタのふん、浄化槽からのし尿汚 泥、製材工場からのおがくずなどで、1日当たり最大14トンの処理能力である (表)。 イノブタは、地域の特産物で、7戸の飼養農家から年間約500頭が出荷されてい る。 製品は 1 次発酵と2次発酵を合わせ50日間で生産され、1日当たり4.72トン、 年間1,416トンが生産できる。周辺の環境に配慮して微生物による脱臭方式を採用 し、臭気が漏れないようになっている。 同センターが本格稼働すれば、村から排出される生ゴミやおがくずの大半が処 理でき、リサイクルが可能となる。 管理運営方法については検討中であるが、同村では「本施設の利用により、資 源のリサイクルや環境保護にもつながる。生産が軌道にのれば村内や近隣の野菜、 果樹、花き農家へ良質な堆肥が供給でき、地域農業の活性化に役立てたい」と話 している。 今後は家庭から出る生ゴミの分別が適正に行われるよう、ソフト面の充実と製 品の成分分析等の実施が検討されている。 表 処理原料の種類と性状