長野県/神戸 吉市
平成10年の夏から、倭機械利用組合と松本農業改良普及センターでは、南安曇 郡梓川村の青木清さんのほ場40aで、長野県畜産試験場が開発した兼用型ソルガ ム「葉月」の栽培現地適応性と、これをロールラッピングで収穫調製したときの 機械作業の適応性について、現地普及展示圃の設置をした。 水田転作での自給飼料の生産性向上が昨今求められているなか、ソルガムは耐 湿性に優れ水田での自給飼料栽培に適してる。 一方で、自給飼料の調製方法は、コーンハーベスターやコンパクトベーラーな どの共同作業を要するものから、1人で作業が完結するロールベーラー等のワン マンオペレーティングシステムに移行しつつある。このようなことから、ロール ベーラーでソルガムを梱包して、ラッピングできないかという試験が、長野県畜 産試験場で行われた。 通常の栽培を行ったソルガムをロールラッピングすると、ラップが破れてしま う。長野県畜産試験場草地飼料部で育成した「葉月」は高消化性繊維を多く含み トウモロコシサイレージ並みの発酵品質が期待でき、密植することで、ラッピン グでの茎のはみだしによるピンホールがなくなるという性質があり、試験ではピ ンホールはほとんどなかった。 長大なソルガムをロールするのは、今までの栽培常識ではかなりかけ離れた技 術といえる。酪農家にとって1つの冒険であったように思う。こういった新技術 に熱意をもって取り組む農家を、幾人か改良普及員があたったところ、青木さん から快諾を得て、今般の現地普及展示が実施された。 今回の展示では、8月下旬に10a当たり10kg播種して11月上旬に収穫したとこ ろ2,684kgであった。収量としてはかなり低めであるが松本農業改良普及センター 岡部普及員によれば、「播種期が6月まで早まれば、2期作が十分可能であり、 更に収量の向上が期待できる。今回のように密植すると茎が細くなり、ラッピン グの際のピンホールも出来なかった。」青木さんら倭機械利用組合では、新しい タイプの飼料作物として、今後取り組んでいきたいと意気込んでいる。 11年度においては、青木さんのほ場に加え、全部で5カ所、1.4haの普及展示圃 の設置が予定されている。