徳島県/今川 智久
徳島県内で、平成11年 1 月26日乳牛の体細胞クローン牛が誕生した。 乳用牛の体細胞クローン牛の生産に成功した例は、国内では、北海道の民間研 究所に次いで 2 例目である。 県畜産試験場は、アメリカから導入されたスーパーカウ娘牛の耳から採取した 体細胞を5日間培養し、この細胞の核を、あらかじめ核を取り除いた牛の未受精 卵の中に入れ、電気刺激により未受精卵と耳の細胞の核とを融合させ、受精卵と 同じ状態にした。さらに、これを7日間培養して移植可能な胚に成長させ、平成 10年4月27日、試験協力農家の飼育している借り腹牛に移植し、妊娠に成功。こ の度、自然分娩により無事誕生した。 お産は、試験場等関係者が見守る中、12時8分、ホルスタイン種の雌牛(体重 44kg)が誕生した。出産後すぐに乳を飲み始めるなど元気なこの子牛は、畜産試 験場が本県の桜の名所で「松島千本桜」と呼ばれていることから「サクラ」と命 名された。 これまでの本県のクローン技術は、平成3年度から高能力牛の効率的増産を目 的に牛受精卵の雌雄産み分け技術及び核移植基本技術の開発に着手し、この技術 をもとに平成10年度から地域先端技術共同研究開発推進事業に取り組み、今回の 乳牛の体細胞クローン生産に成功した。 体細胞からのクローン牛は、親の形質をそのまま受け継ぐため、乳量などの面 で優秀な牛の大量生産につながるとして期待されていることから、今後、この技 術の例数を重ね、クローン牛の発育の追跡及び能力の相似性等について実証をす るための調査・研究に取り組む計画である。
【遺伝子組成が親牛と同一の子牛】 |