長野県/農政部 畜産課
長野冬季オリンピックで日本中を感動の渦に巻き込んだ、あの白馬ジャンプ 台のある長野県北安曇地域で、遊休荒廃地等を利用し、電気牧柵と簡易畜舎に より低コスト・省力化を両立させた放牧による肉豚生産が行われている。 当地は長野県の北西部に位置し、標高1,600〜2,800mの高山が連なり、峡谷 型の地形で、豪雪地帯である。養蚕の衰退による荒廃桑園を中心とした遊休農 地等の活用と、農業生産の拡大、特産物の創造を模索する中で、昭和62年、JA 大北の営農技術員が自ら放牧による肉豚生産を始めた。 中山間地域を中心に農家の高齢化、後継者不足が進むと同時に、遊休荒廃地 が拡大している現在、これを活用した豚の放牧は、農家への経済効果だけでな く、農家・農村・農地の保持を図ることに一役買っている。 平成元年には「信州野豚」で商標登録を行い、生産から販売まで手掛けてい る。契約販売の他、白馬村の第三セクターによる「白馬特産品販売施設(夢白 馬)」や小谷村の「おたり名産館」での販売が実現されている。 JA大北の管内では、冬場の放牧ができないため、冬季間は管外の農家に生産 委託しているが、 9 年度の実績では、管内外合わせて15戸が生産に参加し、 約2,000頭が出荷された。 飼養方法は、・遊休荒廃地、山林等を利用し、 1 群30〜40頭規模で15a 以上で放牧飼育する。・放牧地は 2 〜 3 年で替える。・簡易畜舎を設置し、 配合飼料を給与し、野菜くず等を補助的に与える。 飼養期間は舎飼いよりも 1 〜 2 ヶ月長くなり、飼料要求率も4.25と高くな ってしまうが、放牧のメリットととして、・施設が簡易畜舎、電牧柵だけでよ く、施設費が節減できる。・飼養管理が楽で、兼業、複合経営が可能である。 ・放牧地を 2 年程度で替えるため、病気の発生を抑えることができる。・豚肉 特有の臭みが少なく、肉質が良好で食味がよい。・野豚ブランドとして付加価 値販売ができる等があげられる。 放牧地の選定、放牧素豚の安定的確保等課題も多いが、新しい畜産の経営形 態として注目されており、減退傾向にある県内畜産業に夢を与え、起爆剤とな るように期待が寄せられている。 本県では、平成11年度事業として、豚の他に牛、鶏、特用家畜を対象に、遊 休荒廃地等を活用した放牧型畜産の推進を検討している。
【遊休桑園に放牧されている豚】 |
【水飲み場に集まる】 |