◎地域便り


脱サラし地域の和牛振興に一役

兵庫県/山口 和光


 兵庫県津名郡五色町の高橋啓さん(49)は、昭和62年 7 月に勤めていた繊
維衣料関係の会社を退職し、夫婦と子供 4 人で、大阪から故郷の淡路島に帰っ
てきた。

 当時、父親が25頭の繁殖雌和牛を飼育していたが、老齢により飼養を止める
かどうするかの決断でこの道に入った。

 その頃は、子牛の価格も高く、「もっと早く脱サラしていれば良かったのに
とか、将来の大きな夢物語を楽しく語る日々が多かった」とのことである。

 現在、奥さん(43)と 2 人で、規模を拡大し、繁殖雌牛55頭、育成牛 8 頭、
子牛31頭、肥育牛11頭と水田 3 ha(うち借地 2 ha)を経営している。

 高橋さんの経営の特徴は

・繁殖雌牛の能力の徹底把握に努める。
・初産子牛は牛舎に余裕がある限り、自家保留して、能力調査をする。
・子牛市場に出荷し、自分の評価より安い場合は自家保留して肥育する。
・繁殖雌牛を淘汰する場合は約 6 ヶ月間飼い直し、有利に販売する。
・市場性の高い子牛を市場に出荷するように努める。

 このような努力の結果、子牛の出生率は90%以上、子牛の生産費は 1 頭当
たり30万円以下と非常に優秀である。また、多くの買参人にも恵まれ、子牛市
場では、常に市場平均価格の 1 割高という高価格で販売されている。

 環境保全にも留意し、大きな堆肥舎(190m2)と広い耕地( 3 ha)を確保し、
ふん尿処理をより完全にして土地還元するとともに粗飼料生産にも励んでいる。
主として、エン麦、スーダングラスを作付し、生草で、またはサイレージにし
て給与している。

 最近は、子牛価格が下がり、産地間競争も厳しくなってきているが、幸い淡
路は畜産が盛んで、県下でも最大の家畜市場があり、買参人も多く、比較的有
利に販売ができる。

 淡路の繁殖雌牛の飼養頭数は、 1 万 40千頭で県下の約65%を占め、そのう
ち五色町では、 2 千 3 百頭が飼育されている。町も和牛振興に力を入れてお
り、淡路島で最も飼養頭数の多い町である。

 しかし、飼養者の高齢化と子牛価格の低迷で、飼養頭数及び飼養農家戸数は
毎年減少してきている。

 高橋さんは、生来の研究熱心さとファイトで兵庫県産和牛肥育研究会に入り
積極的に肥育農家と情報交換し、母牛の改良に生かしている。また、地元の同
僚に呼びかけ青壮年部会(18人)を結成し、年04 回の会(情報交換、研究発
表、講演会等)を開催したり、先進地視察及び子牛の販売先への訪問を実施し
ている。

 部会員が常に刺激を求め、問題意識を持って、経営改善と種牛改良に努力し
ている。この部会が核となって地域の和牛振興に大きく寄与しており、高橋さ
んはそのリーダーとして活躍している。

 青壮年部会は、「自家で飼育しても必ずもうかる子牛を出荷する」をモット
ーに部会員の飼育している繁殖雌牛の能力向上に日々努力している。

 今後の繁殖経営はなお一層厳しくなると推察されるが、ますますの活躍を期
待する。


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