◎地域便り


未利用資源を活用した肉用牛の低コスト経営

大分県/島川 健次


 大分県玖珠町大字日出生の吉村忠也さん(57)は、標高約600mの高原で水
田44a、畑30aと決して恵まれていない経営基盤で肉用牛繁殖牛40頭、所
得約4,520千円の経営をしている。

 このような条件を克服する第一の解決策は県道を挟んで隣接する広大な国有
地(自衛隊日出生台演習場)での放牧である。この放牧により、規模拡大と農
業所得の向上に取り組んできた。

 14戸の肉用牛農家が放牧を行っているが、中でも、吉村氏は 4 〜11月末日
までの期間、成牛を放牧し、秋には野草の乾草約 2 千梱包( 1 梱包約15kg)
を収穫し、冬場の粗飼料の大半を補っている。

 放牧で最も重要なことは事故を少なくすることである。

 演習場内は広大で牧柵もないため、牛群が広く散らばらないようにしなけれ
ばならないが、毎朝 6 時に給塩することにより牛群の確認、健康状態を把握し
ている。

 また、放牧特有の疾病ピロプラズマ対策(ダニが保有するピロプラズマ原虫
により発熱、流産時には死亡することもある。)は長い経験と新薬の開発によ
りほとんど発症することはない。

 第二の解決策は、後継者である進さん(27、平成 3 年就農)らと草地管理組
合を結成し、牧乾草を確保する道筋をつけたことである。

 隣接するY町のO牧野組合の改良草地約20haを 5 人で組織した草地管理組
合で、また別の 3 名で組織した草地管理組合でA牧野組合の改良草地約18ha
の管理を受託し、それぞれの地元牧野組合に収穫した牧乾草の20%を無料で還
元し、残りの80%を自分達で分配し飼料確保をはかるというユニークな契約を
昨年 4 月にスタートさせた。

 このことは県内でも初めてと思われる管理方式で草地管理の先駆的なものと
して注目されている。

 このようにして、冬場の良質粗飼料が確保されることから、本年度の県単補
助事業により低コスト牛舎( 5 千円/m2、360m2、スタンチョン方式50頭
収容)を増設して後継者の将来目標成牛70頭に向けて第一歩を踏み出した。関
係者は大変期待しているところである。


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