畜産局食肉鶏卵課 加川 珠輝
黒豚の表示のあり方については、平成10年度に専門委員会を設置し、また、意 見の公募等を行い検討を進めてきた。 今般、平成11年5月14日に開催した黒豚の表示のあり方に関する説明会で、 「バークシャー純粋種の豚肉のみを「黒豚」と表示できるものとする。」と定義 を提示したところであり、今後は、この定義に基づき、適正な表示を行うよう推 進することになった。このため、食肉小売品質基準(農林水産省畜産局長通達) を一部改正し、黒豚の定義を明記することとした。なお、適用は平成11年9月1日 からである。 以下に、その経緯等について簡単に説明する。
黒豚の表示に関しては、近年、農林水産省や関係団体等に対して消費者の方々 から、「黒豚の表示を多く見かけるようになったが、黒豚の定義を教えて欲しい」、 「黒豚と表示されていた豚肉を食べてみたが、普通の豚肉と変わらなかった、黒 豚肉と普通の豚肉の違いは何か」などの問い合わせが増加する傾向にあった。 このため、平成9年度に財団法人日本食肉消費総合センターが実施した調査事 業において、黒豚の表示に関して食肉販売店および消費者に対してアンケート調 査を実施した。 黒豚を販売している販売店の割合が回答のあった販売店の3分の1を超え、黒豚 肉を購入したことがある消費者が50%を超えており、黒豚表示のあり方が全国的 な問題であると考えられた。また、黒豚を特定の品種と考えている者の割合が販 売店で80.9%、消費者で63.3%と高率であったものの、特定の品種と考えている 者のうち、バークシャー種やランドレース種等の豚の品種を特定した者の割合が 各々47.8%、4.0%と低く、豚の生産状況がよく知られていないことをうかがわせ る結果が得られた。 そこで、平成10年度から食肉販売店店頭における消費者への情報提供の実態を 調査する「食肉消費店頭情報収集調査事業」の専門委員会等において「黒豚の表 示のあり方について」検討を行ってきたところである。 専門委員会は10年7月24日に第1回が開催され、以降、3回の専門委員会を開催 するとともに、専門委員会での検討を踏まえ、平成11年1月28日に中央委員会が 開催された。 専門委員会での検討内容 (1)これまでの「食肉消費店頭情報収集調査事業」専門委員会での検討内容の 概要は、次のとおりである。 @ 第1回専門委員会 「わが国での豚の主要品種の生産状況及びその特徴等について」を議題として 検討された。 A 第2回専門委員会 黒豚の表示の方法について検討するため、食肉に関する表示に係る諸制度につ いて、その概要の説明、検討がなされた。 B 第3回専門委員会 第1回および第2回の専門委員会の議論を踏まえ、黒豚の定義・表示のあり方を 整理、意見公募の実施が提案された。 なお、第3回の専門委員会では、「黒豚」の定義については、バークシャー種 (純粋種)の交配から生産された豚が望ましいとして表示案が提示され、この表 示案について平成10年12月14日に、プレスリリースを行うとともに、インターネ ット等により意見公募を開始した。 意見公募 意見公募については、平成11年4月5日をもって締め切り、集計を行った。 意見公募は、専門委員会で「黒豚」の定義については、バークシャー種(純粋 種)の交配から生産された豚が望ましいとして提示された次の3つの案で実施し た。 案の1: 「黒豚」とは、純粋バークシャー種同士の交配から生産された豚をいい、この 豚肉のみについて「黒豚(肉)」と表示できるとする方法。 案の2: 「黒豚」とは、純粋バークシャー種同士の交配から生産された豚をいい、この 豚肉について「黒豚(肉)」と表示できることととする。 ただし、純粋バークシャー種と他品種との交配から生産されたもの(血統割合 100%未満〜50%以上に限る。)について、交雑種であることが消費者に対し分か るような表現として○○黒豚又は黒豚○○という限定したものに限り、例えば 「交雑黒豚」等の表記を認める方法。 例)「ハーフ黒豚」、「混血黒豚」、「雑種黒豚」、「三元黒豚」、「クロス 黒豚」、「エフワン(F1)黒豚」等 案の3: 「黒豚」とは、純粋バークシャー種同士の交配から生産された豚をいい、この 豚肉のみについて「黒豚(肉)」と表示できるとする。 ただし、純粋バークシャー種と他品種との交配から生産されたもの(血統割合 100%未満〜50%以上に限る。)について、黒豚が交配されていることが消費者に 対し分かるような表現として、銘柄名の参考になる( )内に限り、バークシャ ー種の血統割合を表示するために黒豚の表記を認める方法。銘柄名には黒豚とい う表記は認めないものとする。 例) 「農林豚(黒豚50%)」、「農林豚(黒豚血統割合50%)」、ただし、 「農林黒豚(黒豚血統割合50%)」というような表記は認めないものとする。 なお、当初は案の2と案の3を区別しないで意見を公募していたが、案の3には 賛成するが、案の2には賛成しがたいとの回答が複数みられたことおよび1月に開 催した中央検討委員会での消費者委員のコメントを踏まえ、2月以降は案の2をさ らに細分した上記3つの案でアンケートを再集計した。 黒豚の表示のあり方についての集計結果 今回の意見公募による総回答数は、530であり、その内訳は、 生産者が、 10 (1.9%) 販売者が、 119 (22.5%) 消費者が、 394 (74.3%) 不明が 7 (1.3%) となった。 アンケート調査の問1で、「あなたは、『黒豚の定義を作るべきだ』と思いま すか?」との問いに対して、 賛成 501 (94.5%) 反対 14 (2.6%) その他 13 (2.5%) 無回答 2 (0.4%) となり、大多数が「定義を作るべき」と考えていることがわかり、平成9年度に 行ったアンケート結果よりも高い数値で、定義付けの必要性を消費者が強く認識 していることの証左と考えられた。 問2で、問1の「黒豚の定義を作るべきだ」に賛成と答えた人で、「黒豚はバー クシャー種純粋種とする」との問いに対しては、 賛成 397 (79.2%) 反対 74 (14.8%) その他 27 (5.4%) 無回答 3 (0.6%) となり、問1で賛成と答えた人のうち、約80%が、「黒豚」は「バークシャー種 である」との回答が得られた。 また、専門委員会で示された黒豚表示の案の中で、「黒豚の表示のあり方」と して、どの案が好ましいのかについて問を設けたところ、次のような結果が得ら れた。 問2の賛成数397の有効回答に対し、 案の1 241 (62.0%) 案の2 103 (26.4%) 案の3 45 (11.6%) となり、案の1に対する意見が過半数を超える結果となった。 なお、寄せられたコメントは「消費者にとって理解しやすいか否か」が最も重 視されいた。
そこで、「黒豚」の定義の基準として、次の方向で検討を行った。 (1)黒豚の定義について、9年度に行ったアンケート調査の結果では、 @ 販売者においては、明確な定義の必要性を感じている人が多数を占めてい たこと。 A 黒豚は特定の品種と考えている販売店および消費者が多かったこと。 (2)平成10年12月から実施した意見公募の集計結果では、交雑種の取り扱いに つき、「黒豚」とは、バークシャー純粋種同士の交配から生産された豚をいい、 この豚肉のみについて「黒豚(肉)」と表示できる方法に対する意見が多数を占 めていたこと。 これらを踏まえて、平成11年5月14日の説明会において、黒豚の表示について は、「黒豚(肉)と表示できる豚の肉は、バークシャー純粋種の豚の肉に限るも のとする。」と提示したところ、特段の反対意見もなかったことから、了承が得 られたものとし、農林水産省畜産局長通達の食肉小売品質基準に明記することと した。
食肉小売品質基準(昭和52年1月26日付け52畜A第98号農林水産省畜産局長通 達)では、食肉の部位の表示及び原産国(地)の表示をするよう指導してきたと ころであり、今回の黒豚の定義を広く業界等に指導するために、平成11年6月14 日付けをもって食肉小売品質基準を一部改正したところである。 定義の表現は、説明会で提示した「黒豚とはバークシャー純粋種とする」に基 づき、「バークシャー純粋種の豚肉のみを「黒豚」と表示できるものとする。」 とした。 一部改正がなされたことについては、同日にプレスリリース並びに都道府県知 事及び関係団体へ文書にて通知したところである。
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