◎地域便り


牛も人も安全・楽々!牛誘導レール

宮崎県/図師 理


 宮崎県は、全国でも指折りの黒毛和種子牛の産地で、年間65,000頭の子牛が県
内の7つの家畜市場に出荷され、県内はもとより全国各地の肥育生産者へ供給さ
れている。

 本県の子牛生産農家は、およそ15,000戸で、子牛の平均年間生産頭数は5.8頭
となっている。生産農家の実態を調査してみると、平均年齢は57歳(平成7年調
べ)とかなり高齢で、担い手の確保も今後とも容易でない状況となっている。

 県内の各家畜市場では、このような生産農家の状況になんとか対応すべく、こ
れまで色々なアイデアを出し、生産者が子牛をより売りやすくできる家畜市場環
境づくりを行ってきた。今回の紹介例は、そのアイデアから生まれたものの1つ
で、生産者から「楽になった」「早くやってくれたら良かったのに」と大変喜ば
れている「牛誘導レール」である。

 子牛セリ開催当日の生産農家の朝はとても早く、午前6時、7時から子牛の家畜
市場への搬入が始まる。1日当たりの市場上場頭数はおよそ500頭だから、午前9
時をすぎた頃には、セリ場に隣接するつなぎ場は500頭ほどの子牛でごったがえ
すことになる。また、つなぎ場は、生産者、農協等の関係者、下見をする購買者
で大変な混雑となる。セリが開始されると、およそ30秒程度で落札となるので、
このスピードで生産者は、つなぎ場からセリ場に280kg前後の子牛を引き連れて
いくことになる。

anzen.gif (46854 バイト)

yudou.gif (49056 バイト)

【「安全、楽々」でセリ場内へ】
【誘導レールでセリ場内へ入場!】
 このため、かつては、子牛を引く際に、高齢者や女性生産者が引き倒されるこ
とや、引き綱で手をけがする等の事故が発生することがあった。そこで市場関係
者は、セリ開始前の子牛は、係留柵に繋がれている間はおとなしく問題がないた
め、繋いだままでセリ場まで移動することを考え、試行錯誤の末「牛誘導レール」
を完成させた。

 「牛誘導レール」は、H型の鋼材に2個のコロを掛け、このコロに鎖を繋いだシ
ンプルな構造で、子牛の引き綱は鎖の先の建材に掛けられる。実際に使ってみる
と、繋がれた子牛は、セリ場内のセリスピードに合わせて、少し押し出すだけで
全体がセリ場に向かって移動することになった。

 「牛誘導レール」は、高齢者、女性等の体力のない生産者の作業支援に役立つ
事はもとより、子牛の事故防止にもつながり、質の向上も図られ、「売りやすい」
「買いやすい」家畜市場にとって、なくてはならない設備となっている。

plan.gif (22254 バイト)

【牛誘導レール基本プラン図】

元のページに戻る