◎地域便り


カーフキャンパーで元気な子牛を生産   

鹿児島県/宮里 俊光


 伊佐地域は、鹿児島県の最北部に位置し北は熊本県、東は宮崎県に接し、大口
市、菱刈町の1市1町から構成されている。「山紫水明、黄金きらめく田園伊佐農
業の確立」をキャッチフレーズとする当地域は、耕地の7割を水田が占める米ど
ころであり、畜産の盛んな地域でもある。

 中でも豚は企業的大規模経営が多く、県内飼養頭数の11%が飼養されている。

 一方、肉用牛は豊富な稲わら資源を活用した黒毛和種の子牛生産が盛んで、優
良子牛を生産している。地元家畜市場の平均価格も県内の上位にランクされ、県
内外の購買者から高い評価を得ている。

 しかし、近年、繁殖めす牛の飼養頭数は、担い手農家の高齢化、後継者不足、
小規模階層の経営中止などから、平成5年の5,020頭をピークに減少し、8年は4,2
20頭となり、3年間で800頭減少した。

 このような情勢の中、飼養頭数の維持・拡大対策として、高齢者の子牛生産意
欲の向上や中規模農家の規模拡大を図るため、平成8年7月から、カーフキャンパ
ーと銘打って「子牛育成事業」を開始した。事業の内容は、伊佐農協が生産者の
子牛を生後3カ月齢から市場出荷までの6カ月間預かる事業で、生産者は委託料金
として1日395円を支払う。また、子牛価格の安定と事故発生補償に備え農協、関
係市町、契約農家の4者が基金造成を行い農家の経営安定を図っている。このシ
ステムにより、生産者の労働が軽減され、空舎を利用した繁殖めす牛の維持・拡
大が図られるものと思われる。子牛育成事業の子牛は、発育もよく市場平均価格
より高値で取り引きされることが多いことから、関係者から高い評価を得ている。
平成8年度の実績は15頭であったが、9年度139頭、10年度221頭と年々頭数が増え
てきており、生産者にも広く浸透しつつあり、11年度は300頭を目標としている。

 この事業により、ここ2、3年の子牛の年間市場出場頭数は3,000頭を維持して
おり、頭数減少に歯どめがかかっていると思われる。今後、ますます生産者が事
業を有効に活用し、当地域の飼養頭数の維持・拡大が図れることを期待したい。

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