★ 農林水産省から


食料・農業・農村基本法について

農林水産大臣官房企画室 企画官 青山 豊久




新たな基本法制定の背景

 農政分野についての基本法である農業基本法(昭和36年法律第127号)の成立
は昭和36年。当時の社会経済の動向や見通しを踏まえて、我が国の農業の向かう
べき道すじを明らかにするものとして制定された。

 しかし、その後の38年の経過の中で、急速な経済成長と国際化の著しい進展等
により我が国経済社会は大きな変化を遂げ、農政をめぐる状況は大きく変化して
きた。

 その第1が食料自給率の低下である。農業基本法制定当時、我が国の食料自給
率は約8割の水準にあった。食生活の高度化・多様化が進む中で、我が国の基幹
的な作物である米の消費が減退し、畜産物、油脂のように大量の輸入農産物を必
要とする食料の消費が増加したこと等により、食料自給率は一貫して低下してき
ていた。(平成9年度の数値で供給熱量自給率は41%(昭和35年度79%)、穀物
自給率は28%(同年度82%))

 第2に挙げられるのは、農業者の高齢化とそれに伴う農地面積の減少である。
食料自給率が低下する中で、それを担う農業についてみると、農業者の高齢化と
リタイアが進み、農地面積の減少、耕作放棄地の増加といった事態が進行してい
た。

 第3は、農村の活力の低下である。農業生産の場であり、生活の場でもある農
村の多くが、高齢化の進行と人口の減少により活力が低下し、地域社会の維持が
困難な集落も相当数みられるような状況となっている。

 このように農政をめぐる状況が変化する一方で、農業・農村に対する期待は高
まっており、健康な生活の基礎となる良質な食料を合理的な価格で安定的に供給
するという役割を果たすこと、国土や環境の保全、良好な景観の形成、文化の伝
承などの多面的機能を十分に発揮するなど、くらしといのちの安全と安心の礎と
して大きな役割を果たすものとして、農業・農村の役割を見直す動きが着実に増
大してきていた。

 こうした農業・農村に対する期待に応え、早急に食料・農業・農村政策に関す
る基本理念を明確にし、政策の再構築を図る必要があった。このため、新たな政
策体系を確立し、国民は安全と安心を、農業者は自信と誇りを得ることができ、
生産者と消費者、都市と農村の共生を可能とする新たな基本法の制定を目指すこ
ととしたものである。


検討経緯

 新たな基本法の検討は、農業基本法の見直しに始まる。

 平成3年2月、時の農林水産大臣、近藤元次大臣は、閣議後の記者会見において、
農業基本法の制定後30年が経過し、農業をめぐる情勢も大きく変化していること
から、その見直しを含め事務当局における検討を示唆した。

 その後、5年12月に、ガット・ウルグァイ・ラウンド農業合意がなされた際、
「ガット・ウルグァイ・ラウンド農業合意の実施に伴う農業施策に関する基本方
針」が12月17日に閣議了解され、新たな国境措置の下での中長期的な視点に立っ
た農業政策の展開方向について、農政審議会での検討が示唆された。

 これを受けて、農政審議会は、6年8月12日、「新たな国際環境に対応した農政
の展開方向」を報告。この報告は、農業基本法の制定時に比べ国際化の進展等の
社会情勢が変化していることから、その改正の要否も含め、検討すべきとの見解
を示した。あわせて、「食料」という視点の導入や、農業・農村の有する多面的
機能の位置付けといった点に留意すべきことを示唆している。

 また、ガット・ウルグァイ・ラウンド農業合意の際、内閣総理大臣を本部長と
する緊急農業農村対策本部が設置され、翌年の6年10月25日には、「ウルグァイ
・ラウンド農業合意関連対策大綱」が出されることとなった。この中で、農業基
本法に代わる新たな基本法の制定に向けて検討に着手することが表明されたので
ある。

 7年9月28日、農林水産大臣主催の懇談会として農業基本法に関する研究会(座
長:荏開津典生千葉経済大学経済学部教授)が設けられ、翌8年9月10日には「農
業基本法に関する研究会報告」が取りまとめられた。

 この報告は、農業基本法の総括的評価と新たな基本法の制定にむけた検討の必
要性を提示することとなった。この中で、農業基本法については、その目的の1
つである農業従事者と他産業従事者との所得水準の均衡が図られていることや、
国際化を含めた農政に対する新たな要請等、農業基本法の政策目標と現実との乖
離、新たな政策課題への対応の必要性の両面からその位置付けが問われており、
時代に対応した新たな基本法の制定に向けた検討が必要とされた。

 この研究会の報告を受け、いよいよ新たな基本法の制定に向け、今後の食料・
農業・農村に関する政策のあり方について、本格的な検討が開始されることとな
ったが、その場合、農村地域の発展等農林水産省の所管にとどまらず幅広い観点
から政府全体として検討する必要があり、また、食料・農業・農村をめぐる問題
については、生産者、実需者、消費者、都市住民、農村住民等立場によって利害
や考え方の違いが大きいことから、国民各界各層による十分な議論を積み重ねて
国民的なコンセンサスを形成していく必要があるとして、総理府に食料・農業・
農村基本問題調査会(会長:木村尚三郎東京大学名誉教授)が設置されることと
なった。

 9年4月4日に設置された同調査会は、4月18日に内閣総理大臣からの諮問を受け、
以降50回を超える調査会・部会等の検討の場を経て、10年9月17日に、内閣総理
大臣に対して答申を行った。

 同答申においては、「総合食料安全保障政策の確立」、「我が国農業の発展可
能性の追求」、「農業・農村の有する多面的機能の十分な発揮」といった今後の
政策の具体的な方向が示されるとともに、「政府においては、答申に示した考え
方を踏まえて、国民的な合意の形成を図りつつ、現行農業基本法に代わる新たな
基本法の制定に取り組むとともに、その具体化のために必要な政策について検討
し、早急にその実現を図るべき」と政府の取組についても言及されている。

 この答申を踏まえて、政府・与党・関係団体間で、農政改革に向けた精力的な
議論が行われ、関係者の政策合意として「農政改革大綱・農政改革プログラム」
が10年12月8日に農林水産省において省議決定されることとなった。

 この後、各政策についての条文化の作業が進められ、内閣法制局における審査、
各省協議を経て、11年3月9日に、食料・農業・農村基本法案が閣議決定されるこ
ととなったのである。


国会審議経過

 食料・農業・農村基本法案は、11年3月9日に閣議決定され、同日閣法第68号と
して国会に提出された。

 同法案については、5月7日衆議院本会議において趣旨説明及び質疑が行われた
後、農林水産委員会において延べ7日の質疑(うち総理出席1日)と、中央公聴会
及び地方公聴会(それぞれ1日ずつ)が行われた。質疑時間は、合計約36時間に
及び、昭和36年に制定された農業基本法の衆議院における審議時間を超えること
となった。

 衆議院農林水産委員会における審議においては、自由民主党、自由党、公明党
・改革クラブ、民主党及び社民党の共同提案による修正案と共産党単独の修正案
が提出された。共産党案は否決され、共同提案が可決されたことにより、食料・
農業・農村基本法案第二条第2項並びに第十五条第3項及び第6項は、それぞれ、
「国内の農業生産の増大を図ることを基本とすること」、「食料自給率の目標は、
その向上を図ることを旨とすること」及び「政府は、食料・農業・農村基本計画
を定めたときには、遅滞なく、国会に報告することとすること」という内容に修
文されることとなった。

 同法案は、6月3日に衆議院本会議で修正議決され、参議院に送付された。6月
4日に参議院本会議において趣旨説明及び質疑が行われ、同日、同院農林水産委
員会で提案理由説明が行われた。農林水産委員会においては、延べ5日の質疑
(うち総理出席1日)と、中央公聴会及び地方公聴会(それぞれ1日ずつ)が行わ
れ、質疑時間は合計で約33時間半に及んだ。

 参議院においては、食料・農業・農村基本法案の重要性にかんがみ、本会議に
おいて決議を行うべきという議論が主流を占め、7月12日の参議院本会議におけ
る本法案の議決とあわせて「食料・農業・農村基本政策に関する決議」がなされ
ることとなった。また、同法案の成立を受け、内閣総理大臣及び農林水産大臣か
ら談話が発表されている。

 同法案は、7月13日の公布閣議を経て、7月16日に食料・農業・農村基本法(平
成11年法律第106号)として公布され、同日から施行されることとなった。(参
考資料参照)


食料・農業・農村基本法の解説

題名

 本基本法において画期的なのは、第1に、題名である。基本法としては旧法に
当たる農業基本法との比較において、新法となる本基本法では、「農業」に「食
料」、「農村」という概念を加えている。

 「新たな基本法制定の背景」において既述したとおり、「食料自給率の低下」
が国民に不安を抱かせており、「食料の安定供給の確保」を第1の基本理念とし
て位置付けているように、食料政策を位置付けることが本基本法の特徴の1つと
なっている。もう1つは、農業が行われる基盤である農村の地域問題である。中
山間地域では、人口自然減の市町村が8割にのぼっており、こうした地域問題に
いかに対応するかが今日的な課題となっており、農村政策をあわせて政策対象と
していることが特徴的である。

 これらの本基本法の規定内容を法制的に表現したのが題名である。「食料」及
び「農村」とともに、中核となる「農業」を真ん中に位置させ、「食料・農業・
農村基本法」という題名を構成したのである。


基本理念

 本基本法では、政策の基本理念については、農業基本法のように前文を設けて
その中で規定するという形式とせず、条文の形で位置付けることとした。これは、
基本理念を条文化した方が、複数の基本理念相互間の関係が明確となり、分かり
やすいためである。

 その基本理念についてであるが、農業基本法の時代においては、労働者の3人
に1人が農業従事者であり、国民に対して農業がどういった役割を果たすべきか
は自明であったが、今日、農業従事者が少数となり、都市の発展に伴い相対的に
農村の地位が下がった状況では、あらためて国民が求めることは何かということ
を政策遂行において念頭に置かなければならなくなっている。

 農業・農村に対し国民が求めているのが、「食料の安定供給の確保」であり、
農業・農村の有する「多面的機能の発揮」である。これらを整理したのが、第二
条及び第三条となっている。これらが、農政として実現すべき農業・農村の2つ
の大きな価値であり、そのための基盤として農業・農村があるという位置付けが
なされ、「農業の持続的な発展」、「農村の振興」として第四条及び第五条が整
理されている。これら4つの基本理念が不可分の関係、相互に密接な関係にある
ことを示したことが、本基本法の画期的な点の2つ目である。


食料・農業・農村基本計画(第二章第一節)

 本基本法の特徴の第3点は、第十五条に規定した食料・農業・農村基本計画
(以下単に「基本計画」という。)である。農業基本法は、宣言法であり、単に
宣言したことにとどまり、実態面と法律の乖離が激しくなってきていたことから、
本基本法においては法と政策との密接な連動が求められたところである。

 本基本法も宣言法であることに変わりはないが、農業基本法の反省に基づいて、
法律と政策の橋渡しをするものとして基本計画を位置付けることとした。基本計
画は、およそ10年程度を見通した政策の方向、基本的な事柄を整理し、政府とし
て閣議決定し、実行していくこととしている。

 この基本計画は、およそ5年ごとに見直すこととしているが、これは5年ごとに
必ず行うということであり、必要であれば3年目でも見直しを行うというもので
ある。

 基本計画の記載事項(第十五条第2項)の中での最大の目玉は、同項第2号に規
定する「食料自給率の目標」を明記したことである。これは、食料自給率の低下
に対して生産者・消費者が不安を抱いていることから、その向上を図るための目
標として基本計画の中に当該目標を位置付けていくことを明らかにする意味を持
つ。ただし、この目標については、達成するために計画経済や統制経済的な手法
はとることはできず、市場経済の中で消費者や実需者に選択され、消費されて初
めて実現できる性格のものであることから、そうした目標を定めるに当たっての
留意事項を第十五条第3項が規定しているのである。また、同項については、衆
議院審議における修正で「その向上を図ることを旨として、」という文言が追加
されることとなったが、食料自給率目標の明示は、当然、その向上を図っていく
という目的の下に規定されたものであることをより明確に表すこととなっている。
さらに、基本計画については、国会に対して報告することとされたところである。
(同条第6項)


食料の安定供給の確保に関する施策(第二章第二節)

 「食料の安定供給の確保に関する施策」に関し特徴的なことは、消費者の視点
を示している点である。端的な例が、第十六条関係の食料の安全性の確保、品質
の改善といった事項である。

 また、食料の供給における食品産業の位置付けが近年格段に大きくなっており、
国民の食料消費支出の8割を占める食品産業を無視しての食料の安定供給の確保
はあり得ないことから、その位置付けを明確にしている。

 さらに、第十九条では、不測時における食料安全保障について規定しているが、
「食料安全保障」という語句が初めて法文化された点が画期的である。


農業の持続的な発展に関する施策(第二章第三節)

 本節における特徴的な点としては、女性の参画の促進、高齢農業者の活動の促
進ということを人材確保の対応の一環として明確化したことである。

 また、農業生産組織については、農業基本法においては、協業の助長という形
で規定されていたが、集落営農なり、委託を受けて農作業を行う組織を位置付け
たのが特徴的な点である。

 価格政策については、需給事情、品質評価を反映した市場評価に委ねる方向へ
の政策を示している。ただし、これにより経営が不安定とならないよう、第三十
条は経営安定対策を規定している。

 さらに、第三十二条は「自然循環機能の維持増進」ということで、農業の持つ
自然循環機能を位置付けている。農業基本法においては、生活環境の整備という
意味で「環境」という語句はあったが、自然環境という意味ではなかった。第四
条の基本理念の中でも、経済的な効率性だけでなく自然循環機能の発揮というこ
とが農業の持続的な発展にとって重要であることが明記されている。


農村の振興に関する施策(第二章第四節)

 本節自体が、農業基本法との比較において新たな事項となる。農村の振興に関
しては、農業の分野と重複する面もあり、例えば、高齢者や女性は農村の振興に
重要な役割を果たしているが、条文上の整理では農業に分類されている。そうい
った点で、農村の振興に関する施策として位置付けられている条数自体は三条と
少ない。

 その中で、中山間地域の振興について一条を設けており、その第三十五条では、
直接支払の意味合いを持たせた第2項の規定を置いている。

 その他、都市農業についても位置付けており、各方面にわたり規定がなされて
いるところである。


今後のスケジュール

食料・農業・農村基本計画の策定

 食料・農業・農村基本法は宣言法であり、これに基づく政策の実施は、食料・
農業・農村基本計画にしたがって行われることとなる。

 基本計画の策定に当たっては、食料・農業・農村政策審議会の意見を聴かなけ
ればならないこととなっており、早急に食料・農業・農村政策審議会の立ち上げ
が必要となる。

 また、基本計画の策定時期については、国会審議の場において、11年度中に行
う旨の総理答弁を行っているところであり、今後、それを目指して農林水産省を
中心として策定作業を行っていくこととなる。


個別政策の実施

 食料・農業・農村基本法に規定された政策方向に基づいて、今後、個別政策の
実施が図られていくこととなるが、農業生産法人制度検討会、中山間地域等直接
支払制度検討会など主要な事項についての検討会が設けられ、個別政策の方向性
を検討しているところである。基本計画の策定までに一定の結論を得るべく検討
が行われているところであるが、今後、検討事項に対する結論が得られ次第、予
算要求、法制度の手当が順次行われることとなる。


WTO次期交渉との関係

 また、WTOとの関係では、2000年から次期交渉が始まることとなるが、本基本
法により我が国のコンセンサスとして確立された「食料の安定供給の確保」「多
面的機能の発揮」といった概念が、十分反映された内容の合意が得られるよう、
我が国の考え方を積極的に主張していくこととなる。


【参考資料】

(1)食料・農業・農村基本法(平成十一年法律第百六号)

目次
 第一章 総則(第一条―第十四条)
 第二章 基本的施策

  第一節 食料・農業・農村基本計画(第十五条)
  第二節 食料の安定供給の確保に関する施策(第十六条―第二十条)
  第三節 農業の持続的な発展に関する施策(第二十一条―第三十三条)
  第四節 農村の振興に関する施策(第三十四条―第三十六条)

 第三章 行政機関及び団体(第三十七条・第三十八条)
 第四章 食料・農業・農村政策審議会(第三十九条―第四十三条)
 附則

   第一章 総則

(目的)

第一条

 この法律は、食料、農業及び農村に関する施策について、基本理念及びその実
現を図るのに基本となる事項を定め、並びに国及び地方公共団体の責務等を明ら
かにすることにより、食料、農業及び農村に関する施策を総合的かつ計画的に推
進し、もって国民生活の安定向上及び国民経済の健全な発展を図ることを目的と
する。

(食料の安定供給の確保)

第二条

 食料は、人間の生命の維持に欠くことができないものであり、かつ、健康で充
実した生活の基礎として重要なものであることにかんがみ、将来にわたって、良
質な食料が合理的な価格で安定的に供給されなければならない。

2 国民に対する食料の安定的な供給については、世界の食料の需給及び貿易が
 不安定な要素を有していることにかんがみ、国内の農業生産の増大を図ること
 を基本とし、これと輸入及び備蓄とを適切に組み合わせて行われなければなら
 ない。

3 食料の供給は、農業の生産性の向上を促進しつつ、農業と食品産業の健全な
 発展を総合的に図ることを通じ、高度化し、かつ、多様化する国民の需要に即
 して行われなければならない。

4 国民が最低限度必要とする食料は、凶作、輸入の途絶等の不測の要因により
 国内における需給が相当の期間著しくひっ迫し、又はひっ迫するおそれがある
 場合においても、国民生活の安定及び国民経済の円滑な運営に著しい支障を生
 じないよう、供給の確保が図られなければならない。

(多面的機能の発揮)

第三条
 国土の保全、水源のかん養、自然環境の保全、良好な景観の形成、文化の伝承
等農村で農業生産活動が行われることにより生ずる食料その他の農産物の供給の
機能以外の多面にわたる機能(以下「多面的機能」という。)については、国民
生活及び国民経済の安定に果たす役割にかんがみ、将来にわたって、適切かつ十
分に発揮されなければならない。

(農業の持続的な発展)

第四条

 農業については、その有する食料その他の農産物の供給の機能及び多面的機能
の重要性にかんがみ、必要な農地、農業用水その他の農業資源及び農業の担い手
が確保され、地域の特性に応じてこれらが効率的に組み合わされた望ましい農業
構造が確立されるとともに、農業の自然循環機能(農業生産活動が自然界におけ
る生物を介在する物質の循環に依存し、かつ、これを促進する機能をいう。以下
同じ。)が維持増進されることにより、その持続的な発展が図られなければなら
ない。

(農村の振興)

第五条

 農村については、農業者を含めた地域住民の生活の場で農業が営まれているこ
とにより、農業の持続的な発展の基盤たる役割を果たしていることにかんがみ、
農業の有する食料その他の農産物の供給の機能及び多面的機能が適切かつ十分に
発揮されるよう、農業の生産条件の整備及び生活環境の整備その他の福祉の向上
により、その振興が図られなければならない。

(水産業及び林業への配慮)

第六条

 食料、農業及び農村に関する施策を講ずるに当たっては、水産業及び林業との
密接な関連性を有することにかんがみ、その振興に必要な配慮がなされるものと
する。

(国の責務)

第七条
 国は、第二条から第五条までに定める食料、農業及び農村に関する施策につい
ての基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、食料、農業及び農村に
関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。

2 国は、食料、農業及び農村に関する情報の提供等を通じて、基本理念に関す
 る国民の理解を深めるよう努めなければならない。

(地方公共団体の責務)

第八条

 地方公共団体は、基本理念にのっとり、食料、農業及び農村に関し、国との適
切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体の区域の自然的経済的社会的諸条件
に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。

(農業者等の努力)

第九条

 農業者及び農業に関する団体は、農業及びこれに関連する活動を行うに当たっ
ては、基本理念の実現に主体的に取り組むよう努めるものとする。

(事業者の努力)

第十条

 食品産業の事業者は、その事業活動を行うに当たっては、基本理念にのっとり、
国民に対する食料の供給が図られるよう努めるものとする。

(農業者等の努力の支援)

第十一条

 国及び地方公共団体は、食料、農業及び農村に関する施策を講ずるに当たって
は、農業者及び農業に関する団体並びに食品産業の事業者がする自主的な努力を
支援することを旨とするものとする。

(消費者の役割)

第十二条

 消費者は、食料、農業及び農村に関する理解を深め、食料の消費生活の向上に
積極的な役割を果たすものとする。

(法制上の措置等)

第十三条

 政府は、食料、農業及び農村に関する施策を実施するため必要な法制上、財政
上及び金融上の措置を講じなければならない。

(年次報告等)

第十四条

 政府は、毎年、国会に、食料、農業及び農村の動向並びに政府が食料、農業及
び農村に関して講じた施策に関する報告を提出しなければならない。

2 政府は、毎年、前項の報告に係る食料、農業及び農村の動向を考慮して講じ
 ようとする施策を明らかにした文書を作成し、これを国会に提出しなければな
 らない。

3 政府は、前項の講じようとする施策を明らかにした文書を作成するには、食
 料・農業・農村政策審議会の意見を聴かなければならない。

第二章 基本的施策

 第一節 食料・農業・農村基本計画 

第十五条

 政府は、食料、農業及び農村に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るた
め、食料・農業・農村基本計画(以下「基本計画」という。)を定めなければな
らない。

2 基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。

 一 食料、農業及び農村に関する施策についての基本的な方針
 二 食料自給率の目標
 三 食料、農業及び農村に関し、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策
 四 前三号に掲げるもののほか、食料、農業及び農村に関する施策を総合的か
  つ計画的に推進するために必要な事項

3 前項第二号に掲げる食料自給率の目標は、その向上を図ることを旨とし、国
 内の農業生産及び食料消費に関する指針として、農業者その他の関係者が取り
 組むべき課題を明らかにして定めるものとする。

 基本計画のうち農村に関する施策に係る部分については、国土の総合的な利
 用、開発及び保全に関する国の計画との調和が保たれたものでなければならな
 い。

5 政府は、第一項の規定により基本計画を定めようとするときは、食料・農業・
 農村政策審議会の意見を聴かなければならない。

6 政府は、第一項の規定により基本計画を定めたときは、遅滞なく、これを国
 会に報告するとともに、公表しなければならない。

7 政府は、食料、農業及び農村をめぐる情勢の変化を勘案し、並びに食料、農
 業及び農村に関する施策の効果に関する評価を踏まえ、おおむね五年ごとに、
 基本計画を変更するものとする。

8 第五項及び第六項の規定は、基本計画の変更について準用する。

 第二節 食料の安定供給の確保に関する施策

(食料消費に関する施策の充実)

第十六条
 国は、食料の安全性の確保及び品質の改善を図るとともに、消費者の合理的な
選択に資するため、食品の衛生管理及び品質管理の高度化、食品の表示の適正化
その他必要な施策を講ずるものとする。

2 国は、食料消費の改善及び農業資源の有効利用に資するため、健全な食生活
 に関する指針の策定、食料の消費に関する知識の普及及び情報の提供その他必
 要な施策を講ずるものとする。

(食品産業の健全な発展)

第十七条

 国は、食品産業が食料の供給において果たす役割の重要性にかんがみ、その健
全な発展を図るため、事業活動に伴う環境への負荷の低減及び資源の有効利用の
確保に配慮しつつ、事業基盤の強化、農業との連携の推進、流通の合理化その他
必要な施策を講ずるものとする。

(農産物の輸出入に関する措置)

第十八条

 国は、農産物につき、国内生産では需要を満たすことができないものの安定的
な輸入を確保するため必要な施策を講ずるとともに、農産物の輸入によってこれ
と競争関係にある農産物の生産に重大な支障を与え、又は与えるおそれがある場
合において、緊急に必要があるときは、関税率の調整、輸入の制限その他必要な
施策を講ずるものとする。

2 国は、農産物の輸出を促進するため、農産物の競争力を強化するとともに、
 市場調査の充実、情報の提供、普及宣伝の強化その他必要な施策を講ずるもの
 とする。

(不測時における食料安全保障)

第十九条

 国は、第二条第四項に規定する場合において、国民が最低限度必要とする食料
の供給を確保するため必要があると認めるときは、食料の増産、流通の制限その
他必要な施策を講ずるものとする。

(国際協力の推進)

第二十条

 国は、世界の食料需給の将来にわたる安定に資するため、開発途上地域におけ
る農業及び農村の振興に関する技術協力及び資金協力、これらの地域に対する食
料援助その他の国際協力の推進に努めるものとする。

 第三節 農業の持続的な発展に関する施策

(望ましい農業構造の確立)

第二十一条

 国は、効率的かつ安定的な農業経営を育成し、これらの農業経営が農業生産の
相当部分を担う農業構造を確立するため、営農の類型及び地域の特性に応じ、農
業生産の基盤の整備の推進、農業経営の規模の拡大その他農業経営基盤の強化の
促進に必要な施策を講ずるものとする。

(専ら農業を営む者等による農業経営の展開)

第二十二条

 国は、専ら農業を営む者その他経営意欲のある農業者が創意工夫を生かした農
業経営を展開できるようにすることが重要であることにかんがみ、経営管理の合
理化その他の経営の発展及びその円滑な継承に資する条件を整備し、家族農業経
営の活性化を図るとともに、農業経営の法人化を推進するために必要な施策を講
ずるものとする。

(農地の確保及び有効利用)

第二十三条

 国は、国内の農業生産に必要な農地の確保及びその有効利用を図るため、農地
として利用すべき土地の農業上の利用の確保、効率的かつ安定的な農業経営を営
む者に対する農地の利用の集積、農地の効率的な利用の促進その他必要な施策を
講ずるものとする。

(農業生産の基盤の整備)

第二十四条

 国は、良好な営農条件を備えた農地及び農業用水を確保し、これらの有効利用
を図ることにより、農業の生産性の向上を促進するため、地域の特性に応じて、
環境との調和に配慮しつつ、事業の効率的な実施を旨として、農地の区画の拡大、
水田の汎用化、農業用用排水施設の機能の維持増進その他の農業生産の基盤の整
備に必要な施策を講ずるものとする。

(人材の育成及び確保)

第二十五条

 国は、効率的かつ安定的な農業経営を担うべき人材の育成及び確保を図るため、
農業者の農業の技術及び経営管理能力の向上、新たに就農しようとする者に対す
る農業の技術及び経営方法の習得の促進その他必要な施策を講ずるものとする。

2 国は、国民が農業に対する理解と関心を深めるよう、農業に関する教育の振
 興その他必要な施策を講ずるものとする。

(女性の参画の促進)

第二十六条

 国は、男女が社会の対等な構成員としてあらゆる活動に参画する機会を確保す
ることが重要であることにかんがみ、女性の農業経営における役割を適正に評価
するとともに、女性が自らの意思によって農業経営及びこれに関連する活動に参
画する機会を確保するための環境整備を推進するものとする。

(高齢農業者の活動の促進)

第二十七条

 国は、地域の農業における高齢農業者の役割分担並びにその有する技術及び能
力に応じて、生きがいを持って農業に関する活動を行うことができる環境整備を
推進し、高齢農業者の福祉の向上を図るものとする。

(農業生産組織の活動の促進)

第二十八条

 国は、地域の農業における効率的な農業生産の確保に資するため、集落を基礎
とした農業者の組織その他の農業生産活動を共同して行う農業者の組織、委託を
受けて農作業を行う組織等の活動の促進に必要な施策を講ずるものとする。

(技術の開発及び普及)

第二十九条

 国は、農業並びに食品の加工及び流通に関する技術の研究開発及び普及の効果
的な推進を図るため、これらの技術の研究開発の目標の明確化、国及び都道府県
の試験研究機関、大学、民間等の連携の強化、地域の特性に応じた農業に関する
技術の普及事業の推進その他必要な施策を講ずるものとする。

(農産物の価格の形成と経営の安定)

第三十条

 国は、消費者の需要に即した農業生産を推進するため、農産物の価格が需給事
情及び品質評価を適切に反映して形成されるよう、必要な施策を講ずるものとす
る。

2 国は、農産物の価格の著しい変動が育成すべき農業経営に及ぼす影響を緩和
 するために必要な施策を講ずるものとする。

(農業災害による損失の補てん)

第三十一条

 国は、災害によって農業の再生産が阻害されることを防止するとともに、農業
経営の安定を図るため、災害による損失の合理的な補てんその他必要な施策を講
ずるものとする。

(自然循環機能の維持増進)

第三十二条

 国は、農業の自然循環機能の維持増進を図るため、農薬及び肥料の適正な使用
の確保、家畜排せつ物等の有効利用による地力の増進その他必要な施策を講ずる
ものとする。

 (農業資材の生産及び流通の合理化)

第三十三条

 国は、農業経営における農業資材費の低減に資するため、農業資材の生産及び
流通の合理化の促進その他必要な施策を講ずるものとする。

 第四節 農村の振興に関する施策

(農村の総合的な振興)

第三十四条

 国は、農村における土地の農業上の利用と他の利用との調整に留意して、農業
の振興その他農村の総合的な振興に関する施策を計画的に推進するものとする。

2 国は、地域の農業の健全な発展を図るとともに、景観が優れ、豊かで住みよ
 い農村とするため、地域の特性に応じた農業生産の基盤の整備と交通、情報通
 信、衛生、教育、文化等の生活環境の整備その他の福祉の向上とを総合的に推
 進するよう、必要な施策を講ずるものとする。

(中山間地域等の振興)

第三十五条

 国は、山間地及びその周辺の地域その他の地勢等の地理的条件が悪く、農業の
生産条件が不利な地域(以下「中山間地域等」という。)において、その地域の
特性に応じて、新規の作物の導入、地域特産物の生産及び販売等を通じた農業そ
の他の産業の振興による就業機会の増大、生活環境の整備による定住の促進その
他必要な施策を講ずるものとする。

2 国は、中山間地域等においては、適切な農業生産活動が継続的に行われるよ
 う農業の生産条件に関する不利を補正するための支援を行うこと等により、多
 面的機能の確保を特に図るための施策を講ずるものとする。

(都市と農村の交流等)

第三十六条

 国は、国民の農業及び農村に対する理解と関心を深めるとともに、健康的でゆ
とりのある生活に資するため、都市と農村との間の交流の促進、市民農園の整備
の推進その他必要な施策を講ずるものとする。

2 国は、都市及びその周辺における農業について、消費地に近い特性を生かし、
 都市住民の需要に即した農業生産の振興を図るために必要な施策を講ずるもの
 とする。

第三章 行政機関及び団体

(行政組織の整備等)

第三十七条

 国及び地方公共団体は、食料、農業及び農村に関する施策を講ずるにつき、相
協力するとともに、行政組織の整備並びに行政運営の効率化及び透明性の向上に
努めるものとする。

(団体の再編整備)

第三十八条

 国は、基本理念の実現に資することができるよう、食料、農業及び農村に関す
る団体の効率的な再編整備につき必要な施策を講ずるものとする。


第四章 食料・農業・農村政策審議会

(設置)

第三十九条

 農林水産省に、食料・農業・農村政策審議会(以下「審議会」という。)を置
く。

(権限)

第四十条

 審議会は、この法律及び他の法令の規定によりその権限に属させられた事項を
処理するほか、内閣総理大臣、農林水産大臣又は関係各大臣の諮問に応じ、この
法律の施行に関する重要事項を調査審議する。

2 審議会は、前項に規定する事項に関し内閣総理大臣、農林水産大臣又は関係
 各大臣に意見を述べることができる。

(組織)

第四十一条

 審議会は、委員十五人以内で組織する。

2 委員は、前条第一項に規定する事項に関し学識経験のある者のうちから、農
 林水産大臣の申出により、内閣総理大臣が任命する。

3 委員は、非常勤とする。

4 第二項に定めるもののほか、審議会の職員で政令で定めるものは、農林水産
 大臣の申出により、内閣総理大臣が任命する。

(資料の提出等の要求)

第四十二条

 審議会は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政
機関の長に対し、資料の提出、意見の開陳、説明その他必要な協力を求めること
ができる。

(委任規定)

第四十三条

 この法律に定めるもののほか、審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、政
令で定める。

附 則

(施行期日)

第一条

 この法律は、公布の日から施行する。

(農業基本法の廃止)

第二条

 農業基本法(昭和三十六年法律第百二十七号)は、廃止する。

(経過措置)

第三条

 この法律の施行の際平成十一年における前条の規定による廃止前の農業基本法
(以下「旧基本法」という。)第六条第一項の報告が国会に提出されていない場
合には、同項の報告の国会への提出については、なお従前の例による。

2 この法律の施行前に旧基本法第六条第一項の規定により同項の報告が国会に
 提出された場合又は前項の規定によりなお従前の例によるものとされた旧基本
 法第六条第一項の規定により同項の報告が国会に提出された場合には、これら
 の報告は、第十四条第一項の規定により同項の報告として国会に提出されたも
 のとみなす。

3 この法律の施行の際平成十一年における旧基本法第七条の文書が国会に提出
 されていない場合には、同条の文書の国会への提出については、なお従前の例
 による。

4 この法律の施行前に旧基本法第七条の規定により同条の文書が国会に提出さ
 れた場合又は前項の規定によりなお従前の例によるものとされた旧基本法第七
 条の規定により同条の文書が国会に提出された場合には、これらの文書は、第
 十四条第二項の規定により同項の文書として国会に提出されたものとみなす。

(土地改良法の一部改正)

第四条

 土地改良法(昭和二十四年法律第百九十五号)の一部を次のように改正する。

 第四条の二第一項中「農政審議会」を「食料・農業・農村政策審議会」に、
「きいて」を「聴いて」に改める。

(甘味資源特別措置法の一部改正)

第五条

 甘味資源特別措置法(昭和三十九年法律第四十一号)の一部を次のように改正
する。

 第三条を次のように改める。

 第三条 削除

 第十三条第二項第一号中「第三条及び農業基本法第八条第一項の規定により公
表された甘味資源作物に係る長期見通し等から推定される」を削る。

(国有林野の活用に関する法律の一部改正)

第六条

 国有林野の活用に関する法律(昭和四十六年法律第百八号)の一部を次のよう
に改正する。

 第二条第二項中「「農業構造の改善」及び」を「「農業構造の改善」とは、農
業経営の規模の拡大、農地の集団化、家畜の導入、機械化その他農地保有の合理
化及び農業経営の近代化をいい、」に改め、「それぞれ、農業基本法(昭和三十
六年法律第百二十七号)第二条第一項第三号の農業構造の改善及び」を削る。


(2)食料・農業・農村政策審議会令(平成十一年政令第二百三十号)
 
(委員の任期)

第一条

 食料・農業・農村政策審議会(以下「審議会」という。)の委員の任期は、二
年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。

2 委員は、再任されることができる。

(会長)

第二条

 審議会に会長を置き、委員の互選によってこれを定める。

i2 i 会長は、会務を総理する。
i3 i 会長に事故があるときは、あらかじめその指名する委員が、その職務を代
  理する。

(専門委員)

第三条

  審議会に、専門の事項を調査させるため、専門委員を置くことができる。

2 専門委員は、学識経験のある者のうちから、農林水産大臣の申出により、内
 閣総理大臣が任命する。

3 専門委員は、当該専門の事項に関する調査が終了したときは、解任されるも
 のとする。

4 専門委員は、非常勤とする。

(幹事)

第四条

 審議会に、幹事を置く。

2 幹事は、関係行政機関の職員のうちから、農林水産大臣の申出により、内閣
 総理大臣が任命する。

3 幹事は、審議会の所掌事務について、委員を補佐する。

4 幹事は、非常勤とする。

(部会)

第五条

 審議会は、その定めるところにより、部会を置くことができる。

2 部会に属すべき委員及び専門委員は、会長が指名する。
3 部会に部会長を置き、部会に属する委員の互選によってこれを定める。
4 部会長は、部会の事務を掌理する。
5 部会長に事故があるときは、部会に属する委員のうちから部会長があらかじ
 め指名する者が、その職務を代理する。

(庶務)

第六条

 審議会の庶務は、農林水産大臣官房企画室において国土庁地方振興局農村整備
課及び建設大臣官房政策課の協力を得て処理する。

(雑則)

第七条

 この政令に定めるもののほか、議事の手続その他審議会の運営に関し必要な事
項は、会長が審議会に諮って定める。

附 則

(施行期日)

1 この政令は、公布の日から施行する。
 (農政審議会令の廃止)

2 農政審議会令(昭和三十六年政令第百九十五号)は、廃止する。
 (農林水産省組織令の一部改正)

3 農林水産省組織令(昭和二十七年政令第三百八十九号)の一部を次のように
 改正する。 第十一条第四号及び第八十六条第三項中「農政審議会」を「食料・
 農業・農村政策審議会」に改める。

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