鳥取県/荒金 敏文
日野郡は鳥取県の西南部に位置しており、4町で構成されている。中国山地の 中にあり標高80〜900mの間で農業が行われている。 この地域は昔から米と和牛を主体とした農業を展開してきた。特に畜産農家は 多くの実績を重ね、和牛繁殖地帯を作り上げてきた。 厳しい状況となった現在であるが、和牛振興はこの地域には欠かせない重要課 題として取り組んでいる。そして、数年前から以前は当たり前に利用されていた 「放牧場」に、再び関心が集まってきた。 日野郡4町の中で日野町、江府町は平成元年にそれぞれ約20haの放牧場が整備 された。2つの放牧場とも、30頭から40頭が放牧され地元の畜産農家の経営安定 に役立ってきた。そして、平成10年度には日南町20ha、溝口町14haが整備され、 今年5月から利用されている。これで日野郡全町に放牧場が完成したことになっ た。 日南町、溝口町は、多くの農家が初めて経験することなので、事故等を心配す る農家もあった。しかし町・農協から、農家への説明が熱心に行われたことや、 放牧の講演会も数回にわたり開催されたことなどから、農家の心配は解消されて いった。このような事前の努力の結果、農家の理解を得ることとなり、目標とし た頭数での放牧開始となった。 4放牧場とも放牧期間は、5月から11月頃までである。各放牧場は立地条件、土 質、草生など特徴があり、それぞれ持ち味を活かした利用方法をとっている。 牛の健康チェックは、月1回検査が実施されるので、農家の方も安心して放牧 できる。放牧場の効果はすぐ現れた。「舎飼いに比べ牛が良くなった」と利用農 家の声である。 放牧場整備により新しい畜産振興がスタートした。日野郡の畜産は一歩一歩確 実に進歩している。
【放牧の活用で、牛も人ものびのびと!】 |