鹿児島県/田中 和宏
日置郡伊集院町は、鹿児島市と高速道路でわずか11分でつながり、近年市街化 が進んでいる。 伊集院町の農業の粗生産額は、20億円弱。その48%が畜産で残りが水稲、野菜、 工芸作物となっている。いちご等の施設園芸も盛んである。伊集院町酪農環境改 善研究会は、大消費地に近い都市近郊型農業の利点を生かし、環境保全型の農業 を推進するため、畜産農家や関係機関が一体となり、平成10年5月に発足した。 主に土着菌を使用しての環境改善に取り組んでおり、土着菌の培養・活性化方 法、土着菌を利用してのスラリー(液状ふん尿)のたい肥化技術の検討やスラリ ーの循環処理技術の実証、環境改善処方箋の作成、たい肥舎整備計画の作成等を 行っている。土着菌とは、土壌中のさまざまな微生物の中で、その地域に昔から 根ざし、自然と人間を含む動植物の環境に育まれてきた微生物のことである。 この土着菌の利用は、研究会の中心人物内俊隆さん(49)が注目したことから 始まった。内さんは平成9年にスーパーL資金で牛舎を改築、経産牛60頭から80 頭までに増頭した。数年後には、100頭目指している。最初は内さんも他の酪農 家と同様にふん尿処理や牛舎の臭いで悩んでいた。しかし、10年に農業改良普及 所の職員と訪れた鹿児島大学入来牧場の見学をきっかけに、酪農環境を変えてい こうと伊集院町の全酪農家7戸とともに研究会を発足させた。 内さんはまず、畜舎の近くの竹林から取ってきた土着菌を米ぬかで培養した。 この土着菌をたい肥に混ぜたところ、生ふん尿の臭いが絶えなかったたい肥置き 場の臭いが少なくなった。また、フリーストールや育成牛舎の敷料に混ぜると、 敷料が長持ちすることが分かった。さらに、これまで使っていたルーメン資材の 代わりに、土着菌を飼料に混ぜて利用している。内さんや研究会のメンバーが作 る土着菌を利用したたい肥は非常に良質で評判が高い。伊集院町の耕種農家は、 これを利用して減化学肥料栽培によるブロッコリーの展示ほも設置するようにな り、循環的な環境保全型農業が推進されるようになった。 内さんの牧場には、近くの幼稚園や小学校から子供たちが遠足やスケッチにや って来る。畜舎周辺には花を植え、搾乳室は常に清潔に保っている。土や牛にや さしくすることは、人にもやさしくすることだと内さんは心がけているという。
【土着菌のかたまり】 |
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【ふん尿への土着菌利用調査】 |