農林水産大臣官房調査課 杉山 喜実
農業観測は、農産物および農業生産資材の需給、価格の見通し等に関する情報 を提供し、生産者および関係者による農産物の生産、出荷、資材購入等に関する 合理的な計画の樹立、ひいては農業経営の安定に資することを目的として、毎年、 作成、公表している。 平成12年度農業観測については、5月29日開催予定の農林水産統計観測審議会 農業観測部会の審議を経て、その後公表される予定となっているが、ここでは、 去る4月19日に公表した「平成12年度 畜産物等の需給等の見通し」のうち畜産 物(飼料を除く)について、その概要を紹介する。なお、最近の需給動向や見通 し等の全文については、農林水産省ホームページでご覧いただきたい。 農業観測ホームページ (http://www.kanbou.maff.go.jp/www/chousa/kansoku/kansokuhp.html) また、見通しの増減、騰落幅については、前年度に対するものであり、下記の 用語で記述している。 わずか・・・・・・・・・・・・・・・・・・±2%台以内 やや・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・±3〜5%台 かなり・・・・・・・・・・・・・・・・・・±6〜15%台 かなりの程度・・・・・・・・・・・・±6〜10%台 かなり大きく・・・・・・・・・・・・±11〜15%台 大幅・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・±16%台以上
・12年度の食肉の消費量は、わずかに増加すると見込まれる。 ・食肉の生産量は、わずかに減少すると見込まれる。 ・食肉の輸入量は、わずかに増加すると見込まれる。 消 費 食肉全体の1人1年当たり消費量は、8、9年度とわずかに減少したが、10年度以 降は前年度をわずかに上回り、11年度は1.3%増の28.0kgとなった。 12年度の食肉の消費量は、わずかに増加すると見込まれる。このうち、家計消 費は前年度並みないしわずかに減少すると見込まれ、加工・外食等消費は調理食 品等に対する需要が堅調であること、安価な輸入食肉調製品の供給増等によりわ ずかに増加すると見込まれる。 供 給 食肉全体の国内生産量は、9年度は豚肉の増加により0.2%の増加となったが、 10年度以降は前年度をわずかに下回り、11年度は1.0%減の300万4,000トンとなっ た。 12年度の食肉の国内生産量は、わずかに減少すると見込まれる。 また、食肉全体の輸入量は、9年度は豚肉が大幅な減少となったこと等から7.6 %の減少となったが、10年度以降は、消費量が増加に転じるなか国内生産量が減 少していることから増加し、11年度は9.2%増の257万7,000トンとなった。 12年度の食肉の輸入量は、消費量の増加や国内生産量の減少から、わずかに増 加すると見込まれる。
・12年度の牛肉の消費量は、わずかに増加すると見込まれる。 ・成牛枝肉生産量は、わずかに増加すると見込まれる。 ・牛肉の輸入量は、わずかに増加すると見込まれる。 ・牛枝肉卸売価格(省令規格)は、ほぼ前年度並みになると見込まれる。 消 費 牛肉の1人1年当たり消費量は、9、10年度と加工・外食等消費の伸びに支えら れ増加したが、11年度は加工・外食等消費の伸び率が鈍化したこと等から0.2% 増の7.3kgとなった。 12年度の牛肉の消費量は、わずかに増加すると見込まれる。このうち、家計消 費は減少幅縮小等回復のきざしがみられること等からほぼ前年度並みになると見 込まれ、加工・外食等消費は、最近の調理食品等の需要の増加傾向からわずかに 増加すると見込まれる。 供 給 成牛枝肉生産量は、7年度から9年度まで減少したが、10年度以降は乳用種の増 加等から前年度をわずかに上回り、11年度は2.7%増の54万3,700トン(部分肉ベ ース:38万600トン)となった。 12年度の成牛枝肉生産量は、子牛の生産動向等からみてわずかに増加すると見 込まれる。このうち、肉用種はほぼ前年度並みになると見込まれ、乳用種はわず かに増加すると見込まれる。 また、牛肉の輸入量は、9、10年度と増加したが、11年度は加工・外食等消費 の伸び率が鈍化したことに加え、国内生産量の増加幅の拡大等から、0.1%増の 68万2,600トン(部分肉ベース)となった。 12年度の牛肉の輸入量は、消費量、生産量ともにわずかに増加すると見込まれ ることから、わずかに増加すると見込まれる。このうち、冷蔵品はわずかに減少 すると見込まれ、冷凍品はやや増加すると見込まれる。 なお、牛肉の在庫量は、12年3月末で10.2%増の9万3,300トンとなった。 価 格 牛枝肉卸売価格(省令規格)は、8、9年度と前年度を上回ったが、10年度以降 は前年度を下回り、11年度は2.9%安の1,058円/kgとなった。 12年度の牛枝肉卸売価格(省令規格)は、消費量、国内生産量ともにわずかに 増加すると見込まれること等から、ほぼ前年度並みになると見込まれる。
・12年度の豚肉の消費量は、ほぼ前年度並みになると見込まれる。 ・豚枝肉生産量は、わずかに減少すると見込まれる。 ・豚肉の輸入量は、ほぼ前年度並みになると見込まれる。 ・豚枝肉卸売価格(省令規格)は、わずかに下回ると見込まれる。 消 費 豚肉の1人1年当たり消費量は、10.3〜10.4kgの範囲で増減を繰り返していたが、 10年度以降は家計消費、加工・外食等消費ともに前年度をわずかに上回り、11年 度は2.0%増の10.6kgとなった。 12年度の豚肉の消費量は、家計消費、加工・外食等消費ともにほぼ前年度並み になると見込まれる。全体でもほぼ前年度並みになると見込まれる。 供 給 豚枝肉生産量は、9、10年度とわずかに増加したが、11年度は1.3%減の127万 5,000トン(部分肉ベース:89万2,300トン)となった。 12年度の豚枝肉生産量は、最近の子取り用めす豚の飼養動向等からみて、わず かに減少すると見込まれる。 また、豚肉の輸入量は、9年度は、台湾産の輸入禁止等から大幅に減少した が、10年度以降は消費量が増加する一方、国内生産量が伸び悩んでいること等か ら前年度を上回り、11年度は19.6%増の65万2,900トン(部分肉ベース)となった。 12年度の豚肉の輸入量は、ほぼ前年度並みになると見込まれる。このうち、冷 蔵品は国内生産量の減少等からかなり増加すると見込まれ、冷凍品は期首在庫の 増加によりわずかに減少すると見込まれる。 なお、豚肉の在庫量は、12年3月末で44.6%増の11万200トンとなった。 価 格 豚枝肉卸売価格(省令規格)は、冷蔵品輸入の増加や、輸入先における原産地 価格が低水準であること等から、10年度以降は前年度を下回り、11年度は調整保 管の実施もあって1.5%安の448円/kgにとどまった。 12年度の豚枝肉卸売価格(省令規格)は、消費量がほぼ前年度並みになると見 込まれ、国内生産量がわずかに減少すると見込まれるものの、安価な輸入品の出 回りや冷蔵品輸入の増加等から、わずかに下回ると見込まれる。
・12年度の鶏肉の消費量は、わずかに増加すると見込まれる。 ・鶏肉の生産量は、わずかに減少すると見込まれる。 ・鶏肉の輸入量は、やや増加すると見込まれる。 ・ブロイラーの正肉卸売価格は、「もも肉」はやや下回り、「むね肉」はかなり 下回ると見込まれる。 消 費 鶏肉の1人1年当たり消費量は、9年度から10年度にかけては景気動向等の影響 により、家計消費、加工・外食等消費ともに前年度をわずかに下回ったが、11年 度は1.3%増の10.0kgとなった。 12年度の鶏肉の消費量は、わずかに増加すると見込まれる。このうち、家計消 費はほぼ前年度並みになると見込まれ、加工・外食等消費は安価な輸入鶏肉調製 品の供給増等からわずかに増加すると見込まれる。 供 給 鶏肉の生産量は、飼養戸数の減少を背景に減少傾向となっており、11年度は東 日本における猛暑の影響等もあって、2.2%減の118万5,000トンとなった。 12年度の鶏肉の生産量は、主要生産地域における飼養羽数の減少や国産鶏肉の 需要減退等を背景にひな導入が減少傾向にあること等から、わずかに減少すると 見込まれる。 また、鶏肉の輸入量(調製品等を含む)は、9年度はかなりの程度の減少とな ったが、10年度以降は前年度を上回っており、11年度は10.0%増の65万トンとな った。 12年度の鶏肉の輸入量は、消費量がわずかに増加すると見込まれるなか、約7 割を占める国内生産量がわずかに減少すると見込まれることから、やや増加する と見込まれる。 なお、鶏肉の在庫量は、12年3月末で6.8%増の9万6,500トンとなった。 価 格 11年度のブロイラーの正肉卸売価格(東京)は、国内生産の減少幅が拡大する なかで、「もも肉」は8月以降の家計消費の低迷や中国産冷蔵品の輸入動向等か ら低下し3.8%安の591円/kgとなり、「むね肉」は安価な輸入品との競合等から 15.9%安の221円/kgとなった。 12年度のブロイラーの正肉卸売価格は、「もも肉」は家計消費がほぼ前年度並 みになると見込まれるなか、国内生産量がわずかに減少すると見込まれるものの、 安価な輸入品の出回りによる下落要因も潜在すると見込まれることから、やや下 回ると見込まれる。一方、「むね肉」は安価な輸入鶏肉や輸入調製品との競合等 から、かなり下回ると見込まれる。
・12年度の牛乳・乳製品の消費量は、わずかに増加すると見込まれる。このうち、 飲用牛乳等はわずかに減少し、乳製品はわずかに増加すると見込まれる。 ・生乳生産量は、ほぼ前年度並みになると見込まれる。 ・乳製品の輸入量(生乳換算)は、わずかに増加すると見込まれる。 ・生乳の農家手取価格(総合乳価、全国)は、わずかに下回ると見込まれる。 消 費 牛乳・乳製品の1人1年当たり消費量は、9年度から10年度にかけて乳製品の伸 び率が鈍化したこと等から減少したが、11年度は0.6%増の93.0kgとなった。この うち、飲用牛乳等は1.9%減の38.6kgとなり、乳製品は2.8%増の54.3kgとなった。 12年度の牛乳・乳製品の消費量は、わずかに増加すると見込まれる。このうち、 飲用牛乳等は最近の動向等からわずかに減少し、乳製品はチーズ等の需要増加に よりわずかに増加すると見込まれる。 供 給 生乳生産量は、都府県が減少傾向にあること等から9年度以降前年度を下回っ ており、11年度は、北海道が0.8%の増加となり、都府県が1.3%の減少となった ことから、全国では0.4%減の851万4,000トンとなった。11年度の用途別処理量は、 飲用牛乳等向けは1.7%の減少となり、乳製品向けは1.6%の増加となった。 12年度の生乳生産量は、前年度並みの計画生産が設定されていること等から、 ほぼ前年度並みになると見込まれる。用途別処理量は、飲用牛乳等向けはわずか に減少、乳製品向けはわずかに増加すると見込まれる。 また、11年度の乳製品の輸入量は、ナチュラルチーズ等が増加していること等 から、5.0%の増加となった。 12年度の乳製品の輸入量は、乳製品の消費量、国内生産の乳製品向け処理量と もにわずかに増加すると見込まれることから、わずかに増加すると見込まれる。 なお、乳製品の在庫量は、12年3月末で、脱脂粉乳が5.2%減の4万4,600トン、 バターが19.5%増の3万8,200トンとなった。 価 格 11年度の生乳の農家手取価格(総合乳価、全国)は、加工原料乳処理比率が低 下したものの、加工原料乳に対する奨励金が見直されたこと等から、0.6%安の 82.2円/kgとなった。 12年度の生乳の農家手取価格(総合乳価、全国)は、飲用牛乳等向け乳価の動 向いかんによるが、加工原料乳保証価格が引き下げられたこと、飲用牛乳等向け 処理量の割合が低下すると見込まれること等から、わずかに下回ると見込まれる。
・12年度の鶏卵の消費量は、ほぼ前年度並みになると見込まれる。 ・鶏卵の生産量は、前年度並みないしわずかに増加すると見込まれる。 ・鶏卵の輸入量は、増加すると見込まれる。 ・鶏卵の卸売価格(東京、M規格)は、わずかないしやや下回ると見込まれる。 消 費 鶏卵の1人1年当たりの消費量は、家計消費の減少等から9年度から10年度にか けて減少し、11年度は0.1%減の17.3kgとなった。このうち、家計消費は0.9%減 の9.1kgとなり、加工・外食等消費は0.8%増の8.2kgとなった。 12年度の鶏卵の消費量は、ほぼ前年度並みになると見込まれる。このうち、家 計消費はわずかに減少すると見込まれ、加工・外食等消費はわずかに増加すると 見込まれる。 供 給 鶏卵の生産量は、9年12月以降の卵価低迷等により10年度は1.6%減の253万 3,000トンとなり、11年度は最近の卵価上昇による生産意欲の回復等から減少幅は 縮小し0.5%減の252万200トンとなった。 12年度の鶏卵の生産量は、最近のひなえ付け羽数の動向や成鶏の採卵供用期間 の短縮が見込まれること等からみて、前年度並みないしわずかに増加すると見込 まれる。 また、鶏卵(卵黄液、卵白粉等)の輸入量は、11年度は、円高傾向にあったこ と、低迷していた国産鶏卵の卸売価格の回復等から14.9%増の11万9,100トンとな った。 12年度の鶏卵の輸入量は、国産鶏卵の卸売価格は前年度を下回ると見込まれる ものの、加工向けを中心に輸入品の需要が増加すると見込まれること等から増加 すると見込まれる。 価 格 鶏卵の卸売価格(東京、M規格)は、9年12月以降下落したが、11年度は国内 生産量が引き続き減少傾向にあること、需要に回復のきざしもみられること等か ら上昇に転じ、17.4%高の200円/kgとなった。 12年度の鶏卵の卸売価格(東京、M規格)は、消費量はほぼ前年度並みになる と見込まれるものの、需要の回復は主として加工向けとなる輸入品需要の増加に よるものと見込まれ、国産鶏卵の需要は、家計消費、加工・外食等消費ともに低 迷すると見込まれること、国内生産量が前年度を上回る水準まで回復すると見込 まれること等から、わずかないしやや下回ると見込まれる。
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