◎地域便り


養豚と果樹、園芸の複合経営を目指す

企画情報部


 平成11年末、JR山形新幹線が延長されて東根市にも新しい駅ができた。駅名は
「さくらんぼ東根」。山形県は国産さくらんぼの90%を生産し、その60%が同市
で作られている。まさに面目躍如であるが、「さくらんぼ」とかぶらせるように
提案した1人が(有)光陽ピッグファーム代表取締役の石山巧悦さん(48)であ
る。

 石山さんも個人として小規模ながらさくらんぼを栽培しているが、本業は養豚
の法人経営である。すべてSPF豚で、母豚170頭から成る繁殖から肥育の一貫経営
を営んでいる。

 就農からおよそ30年。この間、規模拡大を繰り返し、最終的には母豚500頭に
とどまっている。原因はにおいであり、周囲との関係を考慮するとこれ以上の規
模拡大は難しい。

 したがって、今後は養豚専業から果樹や園芸との複合を考えている。豚肉の質
向上を第一としながらも、付加価値の高い果実、野菜を生産しようというのだ。
光陽ピッグファームにおける事業の1つが完熟たい肥の供給であり、「コウヨウ
有機」のブランドで農家に親しまれてきた。単に販売するだけでなく、自らもこ
れを使って果樹、園芸分野へ本格的に展開していきたい。地域との関わりという
点でも、事業化が可能と思われるのが、果樹のせん定された枝の処理である。り
んごなどの場合、春先に切り落とされた枝には病原菌が付着している場合があり、
そのまま放置しておく訳にはいかない。現時点では野焼きするなどしているが、
これをたい肥化するのである。

 枝をチップに砕き、豚ふんと混ぜて発酵させれば熱により、病原菌を死滅させ
ることができる。もちろん優れたたい肥も得られるので一石二鳥である。

 ちなみにこのアイデアは山形県農業試験場に通って得たもの。閉じこもってい
たのでは経営発展の道は開けない。そこで異業種との交流にも積極的に参加して
おり、中小企業家グループ「さくらんぼ同友会」に名を連ねている。農業者は石
山さん1人だが、貴重な啓発を受ける機会となっている。

 どんなに良質の農産物を生産しても販売ルートを持たないことには報われない。
消費者に直接供給、販売できるような体制を作ることが必要であり、販売まで含
めた総合的な農業経営が石山さんの目指すゴールだ。後継者と期待する21歳の長
男は東京農大生。「卒業後、真っ直ぐ跡継ぎになるよりも市場や消費者のニーズ
に触れる分野で経験を積んできて欲しい。」それまでは「まだまだ頑張れる」と
意気揚々の毎日だ。

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