★ 農林水産省から


口蹄疫清浄国への復帰について

畜産局衛生課  山本 健久




背景

 偶蹄類の動物の疾病である口蹄疫は非常に強い伝播力を示し、重大な社会経済
上の影響をもたらすことから、国際的に最も注意すべき疾病として認識され、家
畜衛生に関する国際機関である国際獣疫事務局(OIE)によって最も重要度の高
いリストA疾病の筆頭に規定されている。したがって、ひとたび本病が国内に発
生した場合、発生国からの偶蹄類の動物および偶蹄類の動物由来の畜産物等の輸
出は、輸入国により大きく制限される。平成12年3月のわが国における口蹄疫の
発生に伴い、韓国、台湾、中国等の国からわが国の偶蹄類の肉等の輸入を停止し
た旨の通告を受けており、国内でのすべてのまん延防止措置が終了した6月9日以
降、口蹄疫清浄国に復帰し畜産物の輸出再開を図ることが口蹄疫対策の最後の課
題となった。


口蹄疫清浄国の認定要件

 OIEは家畜の伝染性疾病の防疫のための家畜衛生基準等の策定、世界各国にお
ける家畜の伝染性疾病の発生状況等に関する情報の収集・提供等を目的として19
24年に設立された。近年、世界貿易機関(WTO)の設立とともに発効した「衛生
植物検疫措置の適用に関する協定(SPS協定)」において、家畜衛生に関する国
際基準を策定する機関として位置付けられている。家畜衛生の国際基準に相当す
るOIEの「国際家畜衛生規約」には口蹄疫清浄国の認定要件も規定されており、
わが国は今回の口蹄疫の発生によりこの要件を満たせなくなったことから、OIE
が定めている「口蹄疫清浄国リスト」から除外されることとなった。

 口蹄疫の清浄国であった国に口蹄疫が発生した場合、清浄国に復帰する際の要
件についても「国際家畜衛生規約」に規定されており、その概要は以下のとおり
である。

○口蹄疫の清浄国に口蹄疫が発生した場合、口蹄疫の清浄国に復帰するための要
 件

(OIE「国際家畜衛生規約」による。概要)

(1)撲滅措置としてワクチン接種を実施しない場合


 スタンピング・アウト(発生農場の家畜全頭の殺処分。以下同じ)および血清
学的サーベイランスが実施された場合には、最終発生から3カ月が経過すること

(2)撲滅措置としてワクチン接種を実施した場合

 スタンピング・アウトおよび血清学的サーベイランスが実施された場合には、
すべてのワクチン接種動物を殺処分してから3カ月が経過すること、またはワク
チン接種中止および最終発生から12カ月が経過すること

 わが国は、今回の発生でワクチンを使用せず撲滅を達成したことから、(1)
の条件を満たすことにより復帰することとなった。口蹄疫清浄国の認定を受ける
ためには、@口蹄疫の発生状況A一連のまん延防止措置の内容B血清サーベイラ
ンスの結果Cウイルスの性状D疫学調査の結果−等を内容とする資料をOIEに提
出し、OIEの専門家委員会の1つである「口蹄疫その他疾病委員会」の承認を得る
必要がある。このため、5月11日の最終発生から3カ月を経過した9月1日、口蹄疫
撲滅報告書としてこれらの情報を取りまとめOIEに提出した。


OIEによる認定

 日本の口蹄疫清浄国への復帰に関しては、9月25日から29日までフランスのOIE
本部で開催される「口蹄疫その他疾病委員会」で検討されることとなった。わが
国からは、同委員会において補足的な説明等を行うため、農林水産省畜産局衛生
課および農林水産省家畜衛生試験場海外病研究部より専門家3名が出席した。こ
の結果、9月26日(現地時間)同委員会で審議が行われ、同日、わが国の口蹄疫
清浄国への復帰が承認されるとともに、9月27日(現地時間)OIEのホームページ
上で公表されている「口蹄疫清浄国リスト」(http://www.oie.int/Status/
A_fa.htm)に日本が追加された。この決定により、わが国の口蹄疫の清浄性が国
際的に認められることとなった。


輸出再開に向けた今後の対応

 OIEの決定により、わが国は国際的に口蹄疫の清浄国に復帰し、輸出相手国に
対し輸入禁止措置の解除を要請することが可能となった。すでに、輸出相手国に
対し口蹄疫清浄国に復帰したことを通知するとともに、輸入禁止措置を解除する
よう申し入れをしており、現在、各国との間で輸出を再開するための協議を行っ
ている。

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