★ 農林水産省から


平成12年牛乳生産費統計について

生産局 畜産部 畜産技術課 乳牛班 岡田 佳子


 農林水産省ではわが国酪農の安定的な発展を図るため、今後の酪農経営等のマ
スタープランとなる「酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針」をは
じめ、「家畜改良増殖目標」等の畜産振興に係る各種方針を12年4月に公表した。
これらの基本方針等に即して、各般の施策を的確に推進していくこととしている。

 酪農の安定的な発展のためには、生産性の向上により生産コストの低減を図る
ことが重要であるが、その基本の1つは、乳用牛改良の推進と能力を最大限に発
揮させる飼養管理技術の推進を図ることである。能力の向上がいかに生産性の向
上にとって重要であるか、ここでは、牛群の平均乳量の差が生乳生産コストおよ
び収益性に及ぼす影響について、農林水産省統計情報部「平成12年牛乳生産費統
計」をもとに組み替え集計した結果から見ることにする。

 表1〜3は、乳量階層別に経産牛1頭当たりの平均乳量(乳脂率3.5%換算)
と経産牛1頭当たりの平均粗収益および支出との関係について示したものである。
これを見ると平均乳量の増加に伴って、粗収益、支出ともに増加しているが、粗
収益の増加額が支出の増加額を上回っており、平均乳量が多い酪農家ほど収益性
(所得)が高いことがわかる。

 具体的な数字を挙げてみると、平均乳量が6,000〜7,000キロの階層に比べ、9,
000〜10,000キロの階層では、支出が13万9,000円増加しているものの、粗収益
が23万7,000円増加していることから、結果として所得は13万6,000円から23万4,
000円へと約72%増加している。

 また、1,000万円の所得を得るために必要な乳用牛(経産牛)頭数を計算する
と、平均乳量が6,000〜7,000キログラムの階層では74頭必要となるが、9,000〜
10,000キログラムの階層では43頭となり約60%程度の頭数で間に合うことが分か
る。

 同様に出荷乳量を300トンと限定した場合に必要な経産牛頭数について計算す
ると、6,000〜7,000キログラムの階層では46頭必要であるのに対し、9,000〜10,
000キログラムの階層では32頭で間に合い、所得も増加する傾向が見られる。

 以上のように、1頭当たり乳量の増加により生産の向上を図ることは、酪農経
営において、所得の向上などに大きく寄与しており、乳量を伸ばすこと、すなわ
ち、牛群検定の活用による効果的な牛群の改良を進めるとことにより、乳用牛の
遺伝的能力を高めるとともに、その能力に見合った飼養管理を推進していくこと
が、いかに重要なことであるかが分かる。

◇表1:乳用牛の能力差と収益差(平成12年)全国◇

◇表2:乳用牛の能力差と収益差(平成12年)北海道◇

◇表3:乳用牛の能力差と収益差(平成12年)都府県◇

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