★ 事業団から


牛海綿状脳症の呼称について

企画情報部 情報第一課


 このたび、社団法人日本獣医師会会長五十嵐幸男氏から農畜産業振興事業団理
事長あてに「牛海綿状脳症の呼称について」の通知がありましたのででここに掲
載します。

 関係各位におかれましても、趣旨をご理解いただき、ご協力の程お願いいたし
ます。

                            13日獣発第219号
                            平成13年12月14日
農畜産業振興事業団理事長 殿
                         社団法人 日本獣医師会
                            会長 五十嵐幸男

牛海綿状脳症の呼称について

 牛海綿状脳症(BSE)については、国民の一大関心事となり、マスコミにお
いても本件に関連するさまざまな報道が行われております。

 その際、ほとんどの報道機関においては、本病を「狂牛病」と呼称しておりま
すが、この名称は本病の実態を適切に表現しておらず、一般社会における本病の
イメージを歪める恐れがあります。

 このため、日本獣医師会では、平成13年12月14日付けで別紙のプレスリリース
を行い、各報道機関に本病の呼称を改めるよう要望いたしましたので(本プレス
リリースを取り上げた毎日新聞、日本農業新聞掲載記事を添付します。)、貴会
関係各位に周知のうえ、今後、牛海綿状脳症の呼称については、「BSE」に統
一して使用するよう各方面に普及・啓発していただきたく、何卒よろしくお願い
申しあげます。

毎日新聞 2001年(平成13年)12月14日(金曜日)

「狂牛病」の呼称やめ「BSE」に  日本獣医師会要望

 狂牛病(牛海綿状脳症)問題で、日本獣医師会は14日、報道機関や日本新聞協
会などに対し、狂牛病という呼称を正式病名の牛海綿状脳症(Bovine 
Spongiform Encephalopathy)の英語表記の頭文字を取った「BSE」
に改めるよう要望した。

 同会は「BSEは精神の異常ではなく、中枢神経疾患で、狂という用語は病態
を適切に表現していない。関連があると指摘されている変異型CJD(新型ヤコ
ブ病)の患者の人権にもかかわるデリケートな問題を含み、不適切だ」と説明し
ている。

日本農業新聞 2001年(平成13年)12月15日(木曜日)

俗称使わないで報道機関に要請  BSEで日本獣医師会

 日本獣医師会は十四日、牛海綿状脳症(BSE)について「狂牛病」の俗称を
使わないよう、報道関係機関に要請した。同会は「BSEは新しい病気であるか
らこそ、(家畜衛生、食肉衛生の)専門家集団の立場から、適正な名称を使用す
るよう積極的に啓発する必要がある」とし、マスコミの理解を求めている。

 正式名称と俗称の関係について同会は、かつて「仮性狂犬病」と呼ばれかけた
豚の伝染性疾病である「オーエスキー病」を例に、行政と獣医師が協力して正式
名称に統一した経緯を説明した。

 さらに「狂という用語はBSEの病態を適切に表現していない」「変異型CJD
(クロイツフェルトヤコブ)病の患者の人権にもかかわるデリケートな問題を含
む」と提起。報道の影響を考慮し「呼称をBSEに改めてほしい」と要望している。


日本獣医師会プレスリリース

                            平成13年12月14日
                              報道機関各位

牛海綿状脳症の呼称について(お願い)

                         社団法人  日本獣医師会

 今回の牛海綿状脳症(以下「BSE」という)の発生は、国民の一大関心事と
なりましたが、と畜場においてと畜される牛の全頭検査が去る10月18日から実施
に移され、BSE検査済みの牛肉のみが流通する体制が整ったにも拘わらず、牛
肉の消費は低落傾向を抜け出せず、畜産業のみならず食肉の流通・小売等関連業
界に至るまで深刻な影響を及ぼしております。このような状況下において、家畜
衛生及び食肉衛生についての専門技術者である私ども獣医師は、消費者がBSE
の現状及び衛生対策等を正しく理解していただくよう、常に適正な情報を発信し
続ける義務があると考えております。

 そのためにまず改めなければならないことは、本病の呼び名です。「狂牛病」
という名称は、BSEの英語の俗称である“Mad Cow Disease”の訳語として19
90年前後からマスコミによって使用されてきたものとされております。1996年3
月、英国政府が「BSEと変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)との関
連が否定できない」と発表したことから、本病がわが国においても一般の注目を
集めるようになったことを受け、同年5月29日、BSEに関する緊急シンポジウ
ムが開催されました(日本獣医学会、全国家畜畜産物衛生指導協会主催、日本獣
医師会協賛)。シンポジウムにおいて、オーガナイザーを務められた日本生物科
学研究所理事・山内一也先生はこの時すでに、「BSEに対する一般のイメージ
を歪めないためにも、「狂牛病」という名称は使用すべきでない」と強く指摘さ
れております。

 また、インターネットでBBC放送ホームページのニュース記事を検索してみ
ますと、“BSE”というキーワードでは76件がヒットしましたが、“Mad Cow”
では13件がヒットしたのみでした(2001年1月以降の件数、検索日は12月10日)。
また、“Mad Cow”でヒットしたほとんどのニュース記事においては、その冒頭
に“BSE or Mad Disease”という記事があり、BBC放送が本病の名称として
「BSE」を優先使用する姿勢が感じられます。

 BSEは新しい病気であるからこそ、私ども獣医師会が専門家集団の立場から
適正な名称を使用するよう積極的に啓蒙していく必要があると考えます。豚の伝
染性疾病である「オーエスキー病」は、かつてわが国で「仮性狂犬病」と呼ばれ
かけていた時期がありました。この病名は、英語名の“Pseudorabies”
に由来する訳語ですが、行政と獣医師が協力し、単に子豚が感染した場合の神経
症状の発現をもって「狂」の文字を使用することは適切でないとして、本病を最
初に報告した者の名前を冠した名称である「オーエスキー病」という呼び名に統
一すべきである旨を提唱した結果、現在では「オーエスキー病」の病名が正式名
称として定着しております。「狂」という用語は、BSEの病態を適切に表現し
ていないばかりか、本病と関連があるとされる変異型CJDの患者の人権にもか
かわるデリケートな問題を含むと考えられることから適切ではありません。
「BSE」、「牛海綿状脳症」のどちらを一般名称として使用するかにつきまし
ては、「牛海綿状脳症」という名称は長すぎて一般には馴染みにくいと思われま
す。人の後天性免疫不全症候群がエイズ(AIDS:Acquired 
Immunodeficiency Syndrome)という英語の頭文字の呼称で
一般に浸透したように、牛海綿状脳症につきましても、今後は、英名(Bovine 
Spongiform Encephalopathy)の略称である「BSE」と呼称するべきです。

 今更申すまでもなく、報道機関の社会使命は誠に重大でり、それだけにその影
響も計り知れない部分があるといっても過言ではありません。

 どうか、報道機関各位におかれましては、事情ご賢察のうえ、今後は、牛海綿
状脳症の呼称を「BSE」に改めていただきますよう強くお願い申しあげる次第
です。

<本件に関するお問合せ先>

 社団法人 日本獣医会 事務局 担当:朝日
 電話:03-3475-1601

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