◎地域便り


地域農業の再生を託されて新たに挑戦へ

北海道/企画情報部


 夕張郡長沼町で農業生産法人駒谷農場を率いる駒谷信幸さん(59歳)は平成
13年4月からまた仕事が増えてしまった。それは地元JAながぬまの組合長に
就任したことである。

 駒谷農場は36年間の歴史を持ち、その生産で柱となるのは肉用牛の一貫経営と
水稲、小麦、豆類、野菜等の耕種作物。だが生産とはいっても単に原料供給する
だけの経営体ではない。一例が東京の老舗チェーン・スーパーへの契約栽培・出
荷。「駒谷農場」名入りの小袋等に仕分けして、消費者がそのまま直ぐにカゴに
入れられる形で供給している。これによって駒谷農場の産品は通常以上の「付加
価値」が付いてきた。

 こうした経営者としての戦略・戦術をJAと地域農業の再生にも発揮してもら
いたいと担ぎ出されたのが駒谷さんの組合長就任である。

 市町村別の大豆の生産量で長沼町は日本一。早速、地元産大豆での豆腐を製造
・販売してみたところ町内だけで1日50丁さばける。しかもこれまでの豆腐にプ
ラスして売れるのだから、豆腐屋さんからも文句は出ない。

 駒谷農場の肉牛はアンガス種のF2である。牛肉輸入自由化後、初めはF1だっ
たが、外国がそれにならったためF2に切り替えた。「味にコクが乏しい輸入牛
肉に較べてサシ嗜好を意識した、個性ある肉づくりを心掛けている」。

 町内の100ヘクタールの他に日高地方の様似町にも200ヘクタールの草地を確保
しており、飼養規模は全体で500頭。年間150頭を出荷する。ほ育段階で子牛は長
沼の笹類等を飼料とし、肥育過程では石灰土質に生えるカルシウム豊富な牧草で
育つという訳だ。

 駒谷農場の一角には養豚農家が1戸ある。全く独立した経営だが、これは駒谷
農場が招致したもの。肉牛飼養だけからのふん尿、そしてたい肥では不足したた
め、耕種栽培へのたい肥供給を委託されて移転してきたのである。これを資産価
額的に見れば3,000万円と帯広畜産大学関係者は評価するが、「肉1トン取れれ
ばたい肥1トンを畑に…!」とするアイデアマン、駒谷さんならではの話である。

 96年の農林水産祭で天皇杯に輝いた駒谷農場の販売総額は年間2億円。日本農
林漁業振興協議会副会長も務めるなど多忙だが、「永遠にチャレンジャーに徹し
たい」 「農産物こそが地域の特産物であり、気候、風土を活かし、日本一にな
れる農産物は何かをもう一度探してみよう」とファイト満々だ。
【駒谷農場の入口前で】

    
【長沼町の肉牛放牧地】

元のページに戻る